生活習慣病を招く「内臓脂肪」増える原因と摂取カロリーを抑える6つのポイント|薬剤師が解説

 生活習慣病を招く「内臓脂肪」増える原因と摂取カロリーを抑える6つのポイント|薬剤師が解説
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内臓脂肪がたまると生活習慣病につながるさまざまな生理活性物質(ホルモンに似た物質)が増加し、高血圧や糖尿病など生活習慣病につながるリスクが高まります。この記事では内臓脂肪がたまる原因や発症しやすい病気、摂取カロリーを抑えるポイントなどについて解説します。

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内臓脂肪とは?

腹腔(お腹)の内面や内臓は、腹膜という薄い半透明な膜に覆われており、その膜の表面につく脂肪が内臓脂肪です。内臓脂肪は「余剰エネルギーの倉庫」のようなもので、脂肪細胞の1つひとつにエネルギー源となる中性脂肪(トリグリセリド)が蓄積されます。脂肪細胞の一つひとつは小さなイクラのような形をしていますが、中性脂肪が過剰に増えれば3倍もの体積に膨らみます。この脂肪細胞が腹部で肥大した状態が「内臓脂肪型肥満」(腹部肥満)です。

また、脂肪細胞からはさまざまな生理活性物質(ホルモンに類似した物質)が分泌されています。脂肪細胞が肥大すると分泌物質のバランスが乱れ、血圧や血糖値、血液中の脂質に悪影響を及ぼし、生活習慣病を引き起こすリスクが高まるのです。

内臓脂肪と皮下脂肪の違い

体の脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪があり、それぞれの違いは次の通りです。

「内臓脂肪」……腹腔(お腹)の内面や内臓の周囲につく

・男性や閉経後の女性に多くつく傾向がある

・つきやすいが、燃焼しやすい(落としやすい)

・過剰な蓄積は「生活習慣病」の原因となる

「皮下脂肪」……皮下につく(お尻や太ももなどにつきやすい)

・女性や子どもに多くつく傾向がある

・燃焼しにくい(脂肪としてたまりやすい)

・過剰な蓄積は睡眠時無呼吸症候群、関節痛、月経異常などの原因となる

皮下脂肪 内臓脂肪
参考:内臓脂肪と皮下脂肪の違い(イメージ)

内臓脂肪がたまるとなぜいけないのか?

かつては内臓脂肪はエネルギーの貯蔵機能しかないと考えられていましたが、近年になり内臓脂肪がさまざまな生理活性物質を分泌することが分かってきています。生理活性物質には、生活習慣病を“招くもの”と“防ぐもの”があり、生活習慣病を“招く”ものとしては、次のようなものがあります。

・ TNF-α……インスリンの働きを妨げ、血糖値を上げる。

・ アンジオテンシノーゲン……血圧を上げる。

・ PAI-1……血栓(血の塊)をつくり、動脈硬化を促進する。

一方、生活習慣病を“防ぐ”働きをするものとしては、次のようなものがあります。

・ レプチン……満腹中枢を刺激して、食欲を抑える。

・ アディポネクチン……血圧や中性脂肪を下げる。傷んだ血管を修復して、動脈硬化を防ぐ。

内臓脂肪が過剰にたまると、高血圧や脂質異常症、糖尿病など生活習慣病を招く生理活性物質が増加し、生活習慣病を防ぐ生理活性物質が減少します。逆に、内臓脂肪が減少すると、生活習慣病を招く生理活性物質が減少し、生活習慣病を減少させる生理活性物質が増加します。

同じ脂肪細胞でも、細胞の肥満の度合によって、良い働きをする脂肪細胞にもなれば、悪い働きをする脂肪細胞にもなる、ということです。

内臓脂肪がたまる原因

内臓脂肪がたまる原因は、おもに食べ過ぎと運動不足です。摂取したエネルギーが運動や基礎代謝で消費されずに体の中で余ってしまうと、中性脂肪に変わり脂肪細胞に蓄えられます。お腹の中にある脂肪細胞の一つひとつが膨らむことで、内臓脂肪の増加による腹部肥満の状態になるのです。

ただし、注意しなくてはいけないのは、標準体重以下であっても内臓脂肪型肥満になる可能性があることです。体重は、筋肉、骨、血液を含む水分、脂肪などの合計値であり体重だけでは脂肪の割合は判断できません。一般的には脂肪は体重の20%程度ですが、この割合が30%以上に増えると、生活習慣病の危険度が高まるといわれています。

太っているように見えなくてもCTスキャン画像でみると内臓脂肪が過剰に蓄積されているケースは少なくありません。これは「かくれ肥満」とも呼ばれます。見た目だけで分かる肥満ではないからこそ、知らぬ間に病気が進んでしまう危険性があるのです。

内臓脂肪が原因で発症しやすい病気

内臓脂肪から分泌される生理活性物質が増えることによって、発症しやすい病気には次のようなものがあげられます。とくに「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」を発症するリスクが高まり、これらは単独でも動脈硬化の原因となりますが、複数重なると、さらに動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳梗塞の危険性が約3倍に高まるという報告もあります。

・ 高血圧症

・ 脂質異常症

・ 糖尿病

・ 痛風

・ 脂肪肝

・ 動脈硬化

・ 心筋梗塞

・ 脳梗塞 など

内臓脂肪型肥満(腹部肥満)の判断基準

内臓脂肪の量は男女とも100平方センチメートル以上蓄積すると生活習慣病の引き金になりますが、それに相当するウエストの周囲径は男性で85センチ以上、女性で90センチ以上です。ただし、基準をオーバーしていなくても、ウエスト周囲径が身長の半分を上回っている人は内臓脂肪型肥満の疑いがあります。

あなたは大丈夫? 生活習慣をチェック!

内臓脂肪型肥満を予防・改善するには、まずは現在の生活習慣を確認してみましょう。問題点を認識することが、生活習慣改善の第一歩です。次の項目で「はい」が3つ以上ある人は内臓脂肪増加の危険性が高まっています。

☑ 朝食は食べないいことが多い

☑ 夕食時間は遅いことが多い

☑ 週3回以上、お酒を飲む

☑ 出されたものは必ず残さず食べる

☑ 満腹になるまで食べないと気がすまない

☑ 早食いなほうだと思う

☑ 1日に1回以上外食をする

☑ 揚げ物などの脂っこい料理をよく食べる

☑ 丼物、めん類など、炭水化物中心の単品メニューを週3~4回は食べる

☑ 味付けの濃い料理が好き

☑ 野菜はほとんど食べない

☑ 1日に1回は間食をする

☑ スナック菓子が好き

☑ 甘い菓子が好き

☑ すぐ目につくところにお菓子がある

☑ テレビやスマホ、新聞などをみながら食事をする

☑ 出かけるときはほとんど車を使う

内臓脂肪を減少させるには?

内臓脂肪を減少させるには、摂取カロリーを減らすことが基本です。一日三食きちんと摂ることが大事で、とくに朝食を抜いてはいけません。朝食抜きでお腹が空き、お菓子などを食べたとしても糖分は早く吸収されるので、昼食は空腹状態で摂ることになります。すると昼食を食べ過ぎ、夕食の時間が遅くなりがちに。そして夕食から就寝までの間隔が短くなり、摂取したエネルギーが消費されず脂肪細胞にため込まれます。

さらに、就寝中は消化活動が活発に行われないため、翌朝、空腹感をあまり感じず、朝食を抜くという悪循環が繰り返されます。朝食1食分のエネルギーを摂取しなかったとしても、まとめ食いや間食によるカロリーオーバーや就寝前のエネルギーの消費不足により、内臓脂肪は増加の一途をたどります。

また、カロリー計算の習慣をつけることも重要です。1日に必要なカロリーは、成人男性で2,000~2,200キロカロリー。成人女性で1,800~2,000キロカロリーです。まずは、そのカロリーの範囲内に抑えた上で、ダイエットプランを立てましょう。1キロの脂肪細胞は7,000キロカロリーですから、1カ月で1キロ減らすには、1日240キロカロリーずつ減らしていくことが目安になります。カロリーを抑えるポイントは次の通りです。

カロリーを抑える6つのポイント

糖分を摂り過ぎない……甘みが欲しいときは低カロリー甘味料(パルスイートやラカントSなど)を使う。

揚げ物を控える……揚げ物はできるだけ食べない。食べる場合は衣を取ると、カロリーが大幅にカットできる。

お酒は適量で……ビール中ジョッキ(500ml)や日本酒1合は、ごはん1杯分のカロリーがあるので適量を。

カロリー計算をする……カロリーを過剰摂取していないか、常に意識する。食品を買うときは必ずカロリー表示を見る。

朝食を抜かない……朝食を抜くと、間食、昼食の食べ過ぎ、夕食時間の遅れなど、一日の食事のリズムが乱れ、肥満の原因に。

夕食は控えめに……夕食を控えめにすると、空腹感から翌朝の朝食をしっかり摂るようになり、1日の食事のリズムが整いやすくなる。

内臓脂肪を減らす運動のしかた

内臓脂肪を減らすには、運動も大事です。まずは手軽なウォーキングから始めてみましょう。週3回、1時間程度がおすすめです。注意点としては、運動前にしっかりストレッチをすること。車や電車の移動で現代人は歩く機会が減っていることが多いので、いきなり運動すると関節や筋肉を傷めることもあるからです。膝関節痛や腰痛がある人は、プールでの水中ウォーキングがよいでしょう。

ウォーキングに慣れた後は、早足(速歩)やジョギングへのペースアップ、また水泳やサイクリング、筋トレなどを組み合わせれば、より短時間で効率的に内臓脂肪を消費できます。パーソナルトレーニングジムなどでは、その人に合ったプログラムを作成してくれ、効果的にダイエットできるので試してみるのも良いでしょう。

また、本格的な運動ができなくても、普段の生活の中でエネルギーの消費量を増やすこともできます。日常生活で体を動かすコツは次の通りです。

・ そうじ、洗車など、家事でできるだけ体を動かす。

・ エレベーターやエスカレーターを使わず、階段を利用する。

・ 電車やバスでは座らないようにする。

・ 炊事をしながら、かかとの上げ下げ。

・ ふとんの上げ下ろしのときは、動作を大きく。

・ TVを見ているときも、横になって上の足を上下させる。

・ 通勤でバスや電車を利用している人は、一つ前の停留所や駅で降りて歩く習慣をつける。

・ 食事の材料、買い物は1週間分を買いだめするのではなく、毎日歩いて買い出しに行き、歩く習慣をつける。

まとめ

内臓脂肪の蓄積は、おもに食べ過ぎと運動不足という生活習慣の乱れが原因です。大切なことは、食事療法と運動をバランスよく取り入れること。無理な食事制限のみを行うと、ストレスがたまるだけでなく、大切な筋肉や骨まで弱くなってしまいます。運動を習慣にすることで筋力がつけば、基礎代謝が上がり日常生活で自然にカロリーが消費されます。

内臓脂肪の蓄積に心あたりがある人は、まずは、現在の体重の5%減少という比較的軽度のダイエットを3~6カ月のゆるやかなペースで達成することを目標にしましょう。

わずか1kgの減量であっても、ウエストの周囲径は1センチ短縮、内臓脂肪面積は7.5平方センチメートルの減少に相当します。体重60kgの人なら3kg減らすことでウエストの周囲径を3センチ、内臓脂肪を22.5平方センチメートルも減らせる計算になります。

内臓脂肪は、肥大化すれば悪い作用をもたらし、小さくすれば良い働きをする性質があります。また、内臓脂肪は付きやすいけれども、落としやすいという性質もあります。食事と運動により内臓脂肪を減らす好循環が生まれれば、さまざまな生活習慣病の予防につながるでしょう。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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