ヤングケアラーかもしれない子どもを見つけた時に私たちができること|臨床心理士が解説

 ヤングケアラーかもしれない子どもを見つけた時に私たちができること|臨床心理士が解説
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石上友梨
石上友梨
2023-09-09

ヤングケアラーという言葉を聞いたことがありますか?ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行なっている子どものことです。そんなヤングケアラーの現状と、悩む子供を見つけた場合にどのような対応をすべきなのかをご紹介します。

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ヤングケアラーとは?

ヤングケアラーとは、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行なっている子どものこと」です。例えば、身体的・精神的な病気や障害を持つ家族の面倒をみたり、代わりに家事全般を担ったり、大人がやるはずの役割を果たしている状態です。家事の手伝いをするのは「普通のこと」かもしれませんが、それにより学校生活や心身に影響が出ている場合は注意が必要です。ヤングケアラーは家族のケアをする一方で、通常の子どもらしい生活を送ることが難しい状況に直面しています。本来の子どもは、勉強に励む時間、部活に打ち込む時間、友人と楽しく遊び対人関係を育む時間などがありますが、ヤングケアラーは子どもとしての時間を犠牲にして家事や世話に励み、子ども自身のニーズや権利が見落とされがちです。彼らの精神的・身体的な負担は大きく、将来の健康や幸福に影響を及ぼす可能性があります。

ヤングケアラーの現状

令和2年度〜3年度に厚生労働省がおこなった調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生で4.1%、大学3年生で6.2%でした。このように決してメディアの中だけの存在ではなく、みなさんの周囲にも支援を受けられずに悩んでいる子どもがいる可能性があります。ちなみに、世話をしている家族が「いる」と回答した人に頻度について質問したところ、半数近くが「ほぼ毎日」世話をしているという結果になりました。ヤングケアラーは、家族の食事の準備や掃除、洗濯といった家事や、見守り、兄弟の世話、感情面のサポートなどをしています。学校の前後で家事や世話をすることで、自分の時間や勉強の時間が作れず、睡眠時間が短くなったり、学校の宿題が提出できなくなったり、日常生活や心身にも影響が出てしまいます。そして、将来的に家事や育児から解放されたとしても、頑張りすぎたことで燃え尽きてしまったり、自分の感情や想いよりも他者を優先することが「当たり前」になっているため、「自分の気持ちが分からない」「自分がしたいことが分からない」など、自分なりの興味・関心や価値観などが育っておらず、主体的な行動が取りづらくなります。

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ヤングケアラーかもしれない子どもを見つけたら

周囲にヤングケアラーが疑われる子供がいた場合は以下のような対応をしましょう。

サポートになる

状況に応じて彼らのサポートになれるように見守ったり、声かけをしたり、話や気持ちを聞いたり、大変さや苦労を労いましょう。もしかしたら、「困っている?」と声をかけても、本人にとっては「当たり前」だから困り感がない場合があります。どのような状況なのか事実確認をする質問をし、まずは現状を知るところから始めましょう。そして、信頼関係を築きながら対話を重ねて、少しずつ気持ちを引き出していきましょう。特に家族の前で我慢している場合は、愚痴を言ったり、相談したりできる場所があることが大きなサポートになります。

学校と連携をとる

学校と連携をとり、教師やスクールカウンセラーに情報提供するなど学校でも見守ってもらう体制を作りましょう。他にも自治体に所属する心理カウンセラーやソーシャルワーカーなどの専門家がいる場合があります。自分だけでは抱え込まずに、地域と連携しながら対応していきましょう。

ヤングケアラーの相談窓口を利用する

全国の児童相談所にヤングケアラーに関する相談窓口があります。また、全国にはヤングケアラーに関する民間の相談窓口も存在します。対応方法などをアドバイスしてくれますので、積極的に活用しましょう。詳しくはこども家庭庁のホームページをご参照ください。

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ヤングケアラーは見過ごされがちながらも、子どもだけで大きな責任を背負って生活しています。社会全体で彼らの存在に気づき、適切なサポートを提供することが必要です。学校や地域と連携しながら、ヤングケアラーたちが健やかに成長できるような環境作りをしていきましょう。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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