低カロリー飲料に使われる人工甘味料アスパルテームとは?メリットや安全性について薬剤師が解説

 低カロリー飲料に使われる人工甘味料アスパルテームとは?メリットや安全性について薬剤師が解説
Adobe Stock

「カロリーゼロ」、「糖質オフ」などの飲料や食品、菓子などには人工甘味料のアスパルテームがよく使われています。栄養成分表示にも記載されているので名前を知っている方も多いでしょう。 しかし、アスパルテームがどのような成分で、どのような機能を持っているか、正しく理解している方は、意外と少ないようです。 この記事では、人工甘味料の代表格ともいえる“アスパルテーム”について解説します。

広告

アスパルテームとは? 

アスパルテームは、人工甘味料の一つで、アスパラギン酸とフェニルアラニンの2つのアミノ酸を結合させて作られています。もともとアスパラギン酸にもフェニルアラニンにも甘みはありませんが、この2つを結合させると強い甘みを持つアスパルテームになります。

アスパルテームのカロリーは砂糖と同じで1gあたり4kcalですが、砂糖の200倍以上もの甘さがあります。

アスパルテーム
アスパルテームのカロリーは砂糖と同じで1gあたり4kcalですが、砂糖の200倍以上もの甘さがある。
photo by Adobe Stock

砂糖に近くすっきりとした甘みが特徴で、「ゼロカロリー」「カロリーオフ」などの清涼飲料水、サワーや酎ハイ、ガム、アイスクリーム、ゼリー、ヨーグルト、甘味菓子、朝食用シリアルなどに使われています。

また、飲料や食品以外にも、歯磨き粉、医薬品のチュアブル錠(水なしで飲める薬)、ビタミン剤、咳止めの薬など、成分の苦みをマスキングするために使用されていることは、あまり知られていないかもしれません。

なお、現在、アスパルテームは、アメリカ、カナダ、イギリスをはじめ世界125カ国以上で、低カロリー甘味料として6,000種類以上の製品に使用されています。 

アスパルテームを利用するメリット

アスパルテームは、ごく少量で強い甘みが出せるため、砂糖に替えて使うことで、同じ甘さでも摂取するカロリーを少なく抑えることができます。食後の血糖値が上昇しにくい性質もあるため、肥満や糖尿病など生活習慣病の予防や改善に役立つと期待されています。

また、アスパルテームは非糖質系の人工甘味料で微生物により発酵されず、酸が作られないため、虫歯の予防にも適しています。ガムや飴の甘味料としても使用されており、厚生労働省では、虫歯予防を目的としてアスパルテームを砂糖の代替甘味料として使用することを推奨しています。

アスパルテームの安全性は?

アスパルテームは、人工甘味料の“人工”という言葉から、体に悪いのでは? と心配する声も聞かれます。また、国際がん研究機関(IARC)は、アスパルテームに「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」との見解を示し、安全性についての議論は絶ちません。

しかし、食品原料の使用を許可するには、厳しい安全性の審査が行われます。実験は動物実験によって、健康に害がなく安全である1日の摂取量を求め、さらにその1/100の量を「一日摂取許容量(ADI)」(※)として定めています。

また、実験では、発がん性や次世代への影響などさまざまな観点から安全性をチェックしています。アスパルテームも、実験と検証を重ね1983年8月に厚生労働省から食品添加物に指定され、使用が認可されています。

(※)人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康への影響がないと推定される1日あたりの摂取量

アスパルテームの摂取許容量

アスパルテームの一日摂取許容量は、体重1kg当たり40mg未満と定められています。例えば、某有名炭酸飲料には100mlあたり39.2mg、500mlで196.0mgのアスパルテームが含まれています。

仮に、体重50kgの人であれば、一日摂取許容量は2,000mg未満となり、某有名炭酸飲料(500ml)を毎日10本飲んでも摂取許容量未満ということになります。実際には、それだけの量を飲むことは不可能ですし、ほかの食品などを含めても、一日の摂取許容量を超えることは、まずありません。

アスパルテームの実際の摂取量

令和4年度の厚生労働科学研究「生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究」によると、アスパルテームの一人あたりの一日摂取量は6.58 mg、一日許容摂取量に対して0.3%と推計されています。

私たちが日常で摂取しているアスパルテームの量は、基準値よりもはるかに低い値となっているため、安全性に問題はないと考えて良いでしょう。

アスパルテームの摂取を注意すべき人

フェニルケトン尿症という病気の方は、アスパルテームの摂取を制限する必要があります。フェニルケトン尿症は、アスパルテームに含まれているフェニルアラニンを分解できません。フェニルアラニンの摂取を続けると体内に蓄積し、知的障害を引き起こす恐れがありますので摂取は控えてください。

まとめ

アスパルテームは、肥満や糖尿病など生活習慣病に役立つ可能性があることから、低カロリー製品の需要の高まりとともに、今後も消費は拡大していくと考えられます。人工的に作られたものであることは確かですが、使い方しだいでは体にとって良い作用をもたらしてくれます。

アスパルテームについて、正しい知識を持ったうえで、食生活の改善や健康づくりに役立ててほしいと思います。

広告

AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

アスパルテーム