不登校の人数は過去最多?心の専門家が考える、不登校が増えている状況と本当の原因
不登校の子供たちが増えています。文部科学省によると、令和3年度の小・中学校における不登校の児童生徒は244,940名です。(※文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より)この不登校の人数は過去最多で、9年連続で増加しています。また、令和2年度は196,127名であったため、1年で大幅に増加していることが分かります。
不登校の原因
不登校の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。文部科学省は、不登校の原因を以下の3つに分けています。
・学校に係る状況(いじめ、友人関係、教師との関係、学業不振など)
・家庭に係る状況(親子の関わり方、家庭内の不和など)
・本人に係る状況(生活リズムの乱れ、無気力や不安など)
文部科学省のデータによると、それぞれの状況で一番多いものは、いじめを除く友人関係の問題が9.7%、家庭に係る状況は、親子の関わり方が8.0%です。本人に係る状況については、無気力、不安が49.7%と半数近くを占めています。学校に係る状況について、いじめ問題を想像しやすいかと思いますが、いじめが原因のケースは0.2%でした。
このような結果が出ていますが、原因は一つだけとは言えず、複合的になっているケースが多いと考えられます。原因がはっきりしている場合は、原因を解決することも大切です。一方で、原因がはっきりとしない場合は、原因探しに囚われることよりも、現状で出来る対策に目を向けていくことが大事です。
不登校は子供と学校の相性の問題
不登校は、子供が学校に適応できていない状態であると同時に、学校がその子供に適応できていないということです。つまり、相性の問題です。これだけ不登校が増え続けているということは、学校と子供の相性が合わないケースが増えていると考えられます。価値観が多様化したこと、様々な生き方の選択肢があること、YouTube等で身近に不登校を経験して成功したモデルがいること等も関連しているかもしれません。
文科省は『不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること』としています。そして、『児童生徒の才能や能力に応じて,それぞれの可能性を伸ばせるよう,本人の希望を尊重した上で,場合によっては,教育支援センターや不登校特例校,ICTを活用した学習支援,フリースクール,中学校夜間学級(以下,「夜間中学」という。)での受入れなど,様々な関係機関等を活用し社会的自立への支援を行うこと。』と様々な選択肢を提示しています。自分に合った環境や学び方を見つけることが大切になります。
不登校に悩んだら早めの対応が有効
一方で、不登校には、学業の遅れや進路を選択する上での不利益、社会的自立へのリスクが存在することが指摘されています。不登校に悩む場合、「学校に行きたい思い」と「それでも行けない思い」が葛藤しているケースがあります。不登校は長期化すればするほど、新たな問題が生じやすくなります。また、不登校への対応は状況や年齢だけではなく、不登校の期間の長さによっても変わって来ます。例えば、長期化することで、生活リズム、そして自律神経が乱れたり、「久しぶりに行ったら周囲からどう思われるのかな」「どんな反応をするのかな」等、様々な不安が生じます。不登校が長引けば長引くほど、問題も複雑化しやすいため、登校しぶりの段階で対処することや、不登校が始まった初期段階で対応することも大事です。
不登校に対するカウンセリング
不登校の悩みを家族で抱え込まず、専門家など第三者と一緒に状況を整理しながら対策を検討することができます。もちろん年齢や状況によりますが、例えば、子供の不安が高い場合は、リラクゼーション法など自分を落ち着かせるスキルを身につけることが役に立ちます。また、ネガティブ思考などの『考えの癖』がある場合は、現実的な考え方を身につけ、考えの幅を広げることで、現在の悪循環を変えていくことができます。そして、無理のない復学プランを作って、少しずつ取り組む中で自信をつけていくこと等、専門家に相談する方法があります。また、養育者だけがカウンセリングを受ける場合は、自宅での声かけのアドバイスなど、受けられる支援があります。
医療が必要なケース
不登校に悩む子供の中には、心の病気を抱えている場合があります。例えば、小学高学年や中学生だと、小児うつ病の場合があり、落ち込みだけではなく、 イライラ、ソワソワが顕著にみられる場合があります。大人のうつとは少し様子が違う点が注意が必要です。その場合は、登校させようとすることでうつが悪化してしまいます。うつの場合は、早めに児童精神科等を受診し、休養することが大事です。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く