「いきなり眠くなる…」睡眠不足とは違う【居眠り病】とは?原因から治療法まで、臨床心理士が解説
みなさんはナルコレプシーという名前を聞いたことがありますか?日本語では「居眠り病」といわれる睡眠障害の一つです。ナルコレプシーは、決して怠惰な気持ちから居眠りしてしまうのではなく、寝たくなくても寝てしまう病気です。今回はそんなナルコレプシーについて解説します。
ナルコレプシーとは
ナルコレプシーは、時と場所に関係なく居眠りを一日に何回も繰り返してしまう病気です。異常な強さで耐え難い睡眠欲求と、通常眠ることがない状況での居眠りを特徴とします。また、喜怒哀楽が激しくなった時に突然力がカクンと抜けるような症状等があります。ナルコレプシーは、一般的に10代から20代前半にかけて発症することが多いとされています。ただし、誰にでも発症する可能性があるため、年齢による制限はありません。診断は、医師による脳波検査や睡眠検査等で行われます。ナルコレプシーは、日中の仕事や学校、社交活動などに支障をきたすことがあります。例えば、仕事中や授業中、人との会話中や運転中に、突然眠りに落ちることがあります。このようにナルコレプシーは、日常生活に大きな影響を与えることがあるため、早期発見・治療が重要です。
ナルコレプシーの原因は?
ナルコレプシーの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。
1 遺伝的要因
遺伝的な要因も関与していると考えられており、家族歴がある場合には、発症リスクが高くなることがあります。
2 脳の神経伝達物質の異常
オレキシンという神経伝達物質の不足が原因ではないかと考えられています。神経伝達物質とは、脳の中で情報がやり取りされるときに重要な役割を果たすものです。例えば、神経伝達物質の例として、ドーパミンやセロトニン等があります。
ナルコレプシーの治療法は?
ナルコレプシーは完治することはできませんが、適切な治療やライフスタイルの見直しによって症状の改善が期待できます。現在、ナルコレプシーの治療には、以下のような方法があります。
1 薬による治療
主に中枢神経刺激薬によって脳を刺激して眠気を抑制します。また、抗うつ薬によって意欲の低下等の気分を緩和したり、突然の脱力の対策をすることがあります。
2 行動療法
睡眠の質を向上させるための行動療法が行われます。行動療法とは、分かりやすく言うと行動を変えることで症状をコントロールする方法です。例えば、定期的な睡眠スケジュールの作成や、昼寝の時間や場所の設定などが含まれます。後ほど、詳しく説明します。
3 サポートを探す
家族や友人、職場の人など、周囲の人の理解とサポートが大切です。自分自身の病気を受け入れ、ストレスを軽減することも重要です。
ナルコレプシーの行動療法とは?
ナルコレプシーのための行動療法には、以下のようなものがあります。
1 睡眠の質を高める
夜間に十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけましょう。同じ時間に寝る、同じ時間に起きる等、生活リズムを整えることは、睡眠の質の向上にもつながります。また、食生活にも注意を払うことが大切です。健康的な食事を心掛け、夕食を軽くすることで、夜間の睡眠の質を向上させることができます。そして、睡眠の質が高まる工夫として、例えば、寝る前のリラックスする時間を作ること、寝室の環境を整備することがオススメです。
2 昼寝のスケジュールを立てる
昼寝をすることで症状を緩和することができます。しかし、いつ昼寝をしても良い訳ではなく、適切な時間帯に昼寝をすることが大切です。専門家と相談しながら、何時頃にどこで眠るのか等、昼寝のスケジュールを作成し、日中の眠気をコントロールしましょう。
3 ストレス解消をする
ストレスは、ナルコレプシーの症状を悪化させることがあります。自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。例えば、呼吸法、マインドフルネス瞑想、ヨガ、趣味を楽しむ等、一つのストレス解消法だけに頼らずにバリエーションを増やしましょう。
参考文献:
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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