【寄りかかる誰か必要としていない?】補助という贈り物と、壁を使った「12のポーズ」
このシークエンスは、練習に安心感とサポートが必要な際、正に後ろ盾となる。
内向的な私にとって、一人暮らしは良いことしかない。室温は私の好みに設定できるし、音楽は自分の好きな音量でかけられる。そしてピザの最後の一切れは、いつでも確実に私のものだ。しかし、自立心を大切にする一方で、他者からのサポートも歓迎だと感じる時もある。ブレスレットを自分で留めようとするときほど、一人であることを思い知らされることはないだろう。
自立していることが高く評価され、ロマンチックでさえあるアメリカ文化では、自分のことは自分のやり方ですることを好む。そしてそれが助けを求めたり、受け入れたりすることを難しくする場合がある。しかし、歌にもあるように、"私たちは皆、寄りかかる誰かを必要としている "のだ。
「サポート」の必要性
社会的サポートは私たちの幸福に欠かせないものだ。頼る相手がいる人は、心身の健康状態が良好な傾向にある。調査によると、社会的孤立や孤独は、高血圧、心臓病、肥満などの疾患や、不安、うつ、認知機能の低下のリスクと関連があることが分かっている。社会的サポートと心の健康の相関は、特に女性、高齢者、学生で顕著であることが、いくつかの研究で示唆されている。
私たちの多くは、サポートのシステムがないのではなく、サポートがどこから来ているのかに注意を払っていないのだ。ネガティビティ・バイアス(人はポジティブな情報よりもネガティブな情報に注意を向けやすく、記憶にも残りやすい性質を持つことを表す心理学用語)は、あなたの後ろ盾となってくれるポジティブなサポートグループよりも、そうでない人たちに目を向けてしまう原因になっているかもしれない。
激しい独立心が、実はトラウマの反応であるケースもある。人生において信頼できない人や傷つけられた人がいた場合、再び傷つけられることへの恐怖から、無意識のうちに助けを求めることに抵抗を感じたり、差し伸べられた手をを拒んだりすることがある。
ヨガ哲学に学ぶ「サポート」とは
もし、助けを求めることをプライドが邪魔しているなら、それは、ヨガの哲学である「アスミタ」と向き合うよう導かれているかもしれない。エゴへの執着と訳されるアスミタは、「私がやるんだ!」という想いに強くしがみつかせてしまうことがある。自信と自立は確かに望ましい特性だ。しかしヨガの教えでは、補助や支援という贈り物を受け入れ、感謝することができる謙虚さを養うよう促している。
「この傾向に対する最良の解毒剤の一つは、他人を自分の領域に含めることによって、自己の感覚を広げる練習をすることだ」と、サリー・ケンプトンはヨガジャーナルのエッセイに書いている。それは、誰かに親切にしたり、セヴァ(サンスクリット語で「奉仕」)をしたりすることかもしれない。しかし、それはまた、他の人から差し伸べられる手を受け入れるために、オープンであることも意味する。
自分自身と他者の幸福について瞑想することで、この受け入れの姿勢を養うことができる。「与え、受け入れる」あるいは「送り、受け取る」と訳されるトングレン瞑想を試してみよう。ヨガと瞑想の指導者であるジェイコビー・バラードは、「これは、愛する優しさ、思いやり、許し、感謝、寛容を包み込む練習だ。」と話す。
アーサナの練習は、その過程においてあなたをサポートすることができる。以下のシークエンスは、壁に向かっておなじみのポーズをとることで、 "サポートを受け取って良い" ということをそっと思い出させてくれる。人生においてそうであるように、ヨガの練習においてサポートを利用することは、チャレンジを必要としない、という訳ではない。これらのポーズは、部屋の真ん中で練習するのと同じように、筋力、可動性、そしてバランスを必要とする。しかし、壁という安定したタッチポイントがあることで、力強く、やりがいのある練習ができるのだ。
壁を使った12のヨガポーズ
チャトランガダンダーサナ(四肢で支える杖のポーズ)
壁からつま先を数センチ離し、壁に向かって立つ。肘を曲げ、指先を腰の高さの壁につける。肘を後ろにポイントし、上腕を脇腹に近づける。肩甲骨を引き下げ、引き寄せる。足を根付かせ、腹筋に力を入れ、背筋を伸ばしたチャトランガに入る。あごを床と平行にし、視線は少し下に下げる。3~5回呼吸ホールドする。
ブジャンガーサナ(コブラのポーズ)
壁を使ったチャトランガから、つま先が壁に触れるように足を前に移動する。両手は胸の高さに保つ。胸骨を持ち上げながら胸を押し、背中を少し反らしコブラになる。天井を見上げつつ、首の後ろにスペースを保つ。3~5回呼吸ホールドする。
スフィンクスのポーズ
壁を使ったコブラから両手を上に歩かせ、肘が肩より少し高い位置で前腕を壁につける。胸骨を持ち上げ背中のアーチをさらに深くしながら、股関節を壁に向かって押し、スフィンクスのポーズに入る。首の後ろの長さと背骨のカーブを保ちつつ、顔を上げる。3~5回呼吸ホールドする。
前腕をついたプランク
壁を使ったスフィンクスのポーズから、前腕を壁につけたまま一足分後ろに下がる。腹筋に力を入れ、かかとを持ち上げつま先立ちになる。肩甲骨の間に空間を作りながら、両腕で壁を押す。前腕をついたプランクでまっすぐ壁を見つめる。3~5回呼吸をした後、かかとを下ろす。
アドームカシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)
壁から70~90センチ後ろに下がる。両足を腰幅にし、床に押し付ける。股関節から体を折り曲げ半分の前屈をし、両腕を長く伸ばし指先を上に向けて両手を壁につける。腕が完全に伸び、背中は長く、腰、膝、を1つのライン状に積み上げられるよう、必要があればスタンスを調整する。ダウンドッグと同じように、胴体と脚が直角になるようにする。視線をまっすぐ下に向け、3~5回呼吸する。準備ができたら足を前に移動させ、両手を離し、立位に戻る。
タダーサナ(山のポーズ)
壁を使ったダウンドッグから、ターンして背中を壁に向けて立つ。足を壁から3~5センチ離し腰幅に開く。臀筋、肩甲骨、および後頭部が軽く壁に触れていても良い。頭頂を天井に引き上げ、肩は力を抜いて耳から離し、両手を床に向けて伸ばし下ろし、手の平を前に(壁と逆方向に)向け山のポーズに入る。壁によって支えられているが、体重を壁にかけないよう注意し、呼吸を整える。
ヴィーラバドラーサナ III(戦士のポーズ III)
壁から約70~90センチ離れる。両足を腰幅に開き、それぞれの足の外側にブロックをセットする。背中を長く保ち、前傾姿勢になり、左脚をまっすぐ後ろに持ち上げ、体が一本の長い線になるようにする。足裏が壁に完全に接触するように、必要に応じてスタンスを整える。戦士のポーズIIIで、つま先を下に向け足で壁を押す。両手をブロックに伸ばして下ろす。
さらにチャレンジする場合は、手を片方ずつブロックから離し、胸の位置でアンジャリムドラを作るか、床と平行に横に伸ばすか、壁の方に向かって後方に伸ばす。
パールシュヴォッターナーサナ(ピラミッドポーズ、側面を強く伸ばすポーズ)
戦士のポーズIIIから右足を床へ下ろし、かかとを壁につける。左右の足が70~90センチ離れるよう左足の位置を調整する。前屈し、指先を床につくかブロックに置き、ピラミッドポーズで3~5回呼吸する。
アドームカシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)
ピラミッドから、体重を両手に移し、左足を後ろに引いて壁につける。ダウンドッグの形を作るため、必要があれば両手を前に移動させる。準備ができたら、膝を曲げて両足を一歩前に動かし、両手を足に向かって歩かせ、立位の前屈になる。ロールアップしてタダーサナに戻り、戦士のポーズIII、ピラミッドポーズ、ダウンドッグを逆サイドも繰り返す。
ウトゥカターサナ(椅子のポーズ)
壁から30センチほど離れ、壁に背を向けて立つ。膝を曲げ、背面が壁に触れるまで尾骨を後ろに引く。お腹を強くしながら背骨を伸ばし、腰にスペースを作る。少し前傾姿勢になり、両腕を耳と平行に上げ椅子のポーズに入る。壁はタッチポイントとするが体重は預けず、3~5回呼吸する。
マラーサナ(花輪のポーズ)
椅子のポーズから、足幅少し広げつま先を外に向ける。両手を胸の位置でアンジャリムドラにする。膝を深く曲げ、体を下ろしてしゃがむ。臀筋が軽く壁に触れるようにし、しゃがんでいく際のサポートにする。必要に応じて足の調整をし、お尻を壁に押し付けるか、両手を前の床に置いて体を支える。準備ができたら、お尻を床まで下ろし、壁に背中をつけて座る。
ダンダーサナ(杖のポーズ)
両脚をまっすぐ前に伸ばし腰幅くらいに開き、つま先を天井に向けて伸ばす。両坐骨に均等に体重を乗せ、臀筋の上部が壁に接するように姿勢を整える。肩甲骨と後頭部が軽く壁に触れても良い。頭頂部を天井に引き上げ背骨を伸ばし、手の平をお尻の横の床につく。太ももと腹筋に力を入れ、肩を耳から離し、視線を足先に向け背筋を伸ばし、ダンダーサナになる。5呼吸、もしくはもう少しホールドする。
準備ができたら、深い呼吸をし、吐く息と共に筋肉の力を抜き、目を閉じ、両手を太ももの上に預ける。練習を終える準備が整うまでしばらく座って呼吸する。
教えてくれたのは・・・タマラ・Y・ジェフェリーズ
ライター、エディター、リサーチャー兼ヨガの指導者というキャリアを経て現在はヨガジャーナルのシニアエディターを務める。
ヨガジャーナル アメリカ版 / 「12 Yoga Poses You Can Practice Against a Wall」
AUTHOR
ヨガジャーナルアメリカ版
全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。
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