無酸素運動、有酸素、筋トレ…種目別・運動前の食事で注意すべきことは?アスリート管理栄養士が解説
皆様は何のために運動をしていますか? またその運動をせっかくするのなら効率を上げていきたいですよね。実は運動と食事には深い関係性があることをご存知でしたか? 今回は、運動前に食事で注意すべきポイントをお伝えしていきます。
こんにちは。
管理栄養士の佐藤彩香です。
今回は、運動前の食事で注意すべきポイントをお伝えします。食事と運動の関係性を知り、運動をより効率的に行う食事の方法を知っていきましょう。
目的やどんな運動をするのかによって食事の方法は違う。
空腹の中で運動するのは良くない!
そんな声も多く聞きます。確かにその意見も間違いではないのですが、近年の研究では空腹の中で強度の低めの有酸素運動をすると脂肪代謝の効率があがるというデータもあります。そこでよくある目的や運動の種類をパターンに分けて食事方法をお伝えします。
①筋トレなどの無酸素運動などを行う場合
筋トレによって筋肉量を増やすことで、様々なメリットがあります。
基礎代謝のアップはもちろん、正しい姿勢をキープしたり、むくみや冷えの改善、有酸素運動の効率アップなど嬉しい効果はたくさんあります。
筋トレなどの無酸素運動は、基本的に糖質を多くのエネルギー源として使用します。そのため運動前には糖質をしっかり摂っておくのが良いです。
しっかりとした食事を摂るのであれば、運動の3〜4時間くらい前に摂るのがが望ましいですが、もしおにぎりやバナナなどの簡単な補食であれば1〜2時間前までに食べましょう。セリー飲料やドリンクタイプのものであれば、30分から1時間ほど前でも問題のない方も多いです。
ただ、この時間に関しては、人によって大きく差があります。運動してみて、ご自身のちょうど良い感覚を大事にしましょう。
注意点としては、空腹状態で行うこと。無酸素運動は糖質をエネルギーとします。そのため空腹で低血糖の状態でトレーニングを行うとトレーニングの質が下がることも考えられますので、糖質をしっかり摂っていきましょう。また、脂質やたんぱく質などの他の栄養素ですが、運動に近い時間であれば、シンプルに糖質を主とした摂り方が望ましいです。そのため、お肉やお魚の主菜やお野菜がたっぷり入った副菜など、しっかりとした食事を摂る場合は運動の3〜4時間前までには済ませましょう。
②ジョギングなどの低強度の運動を行う場合
運動不足解消のためにちょっとしたウォーキングやジョギングを行う方も多いですよね。
これは目的にもよりますが、減量などの目的として行う方は、あえて水分を摂って食事は控えていくことも選択肢の一つです。
有酸素運動は、糖質と脂質をエネルギーとして使用します。空腹時や起床時は血中の糖質が少ない状態です。糖質を使い、血中の脂質をエネルギーにすることで、脂質代謝の向上が期待できます。
ただ、知っておいて欲しいのは、強度の高い有酸素運動や筋トレなどの無酸素運動はしないことです。あくまでも軽いエクササイズやウォーキングやジョギングなどを行う場合で、脂質代謝の向上を目的としている場合になります。血中に糖質が少ないので、低血糖になりやリスクもあります。低血糖になりやすい方や少し心配な方は、飴玉やスポーツドリンクなどを携帯しておくことをお勧めします。
③しっかり動く!有酸素運動の場合
ランニングをしたり、泳いだり、ヨガをしたりなど、しっかりとした有酸素トレーニングをする場合。
その場合は、事前にしっかり糖質と水分を摂って頂きたいです。②のように空腹で行うことは危険です。
そのため、①のようにしっかり糖質を摂っていくようにしましょう。
また長い時間ランニングをしたりバイクを漕いだりする場合は、ナトリウムも多少摂っておくことも大事。暑熱環境下での運動中の体温調節を改善のため運動1〜2時間前の一時的なナトリウムローディングが推奨されています。※1
体重1kgあたり、20〜40mgのナトリウムが推奨されていますので、例えば体重50kgの人であれば、1000〜2000mgのナトリウムということになります。もし食塩で行う場合は約2.5〜5g(小さじ1/2〜小さじ1)程度になります。暑熱環境下で運動をされる場合などはお試しください。
①②③共通して言えること
共通して言えることとしては、水分を運動前にしっかり摂るということです。
どのくらいの量を摂ることが望ましいのかは、運動量やその方の発汗の量などによって様々のため「このくらいを摂った方がいい」と言い切れないのですが、1つの目安として、運動を始める30分前までに250〜500mlの水分を補給していくことが望ましいです。※2
ただ個人差が大きい部分にもなるので、運動前後の体重の減りや顕著の場合は、運動中の水分補給の見直しももちろん必要ですが、運動前の量を少し増やすなどのコントロールをすることをお勧めします。またいつもより尿が濃いなと感じる場合などは多めに水分を摂って運動することも意識していきましょう。
まとめ
食事と運動にはとても大きな関係性があります。
ぜひどんな運動をするのかや目的に応じてどんな食事が良いの参考にしていただけると嬉しいです。しっかり食事を味方につけていきましょう。
※1
McCubbin AJ, Allanson BA, Caldwell Odgers JN, Cort MM, Costa RJS, Cox GR, Crawshay ST, Desbrow B, Freney EG, Gaskell SK, Hughes D, Irwin C, Jay O, Lalor BJ, Ross MLR, Shaw G, Périard JD, Burke LM. Sports Dietitians Australia Position Statement: Nutrition for Exercise in Hot Environments. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2020 Jan 1;30(1):83-98. doi: 10.1123/ijsnem.2019-0300. PMID: 31891914.
※2
日本体育協会:「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」,2013.
AUTHOR
佐藤彩香
管理栄養士、予防医学士。 企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後独立。実践型の栄養サポートを行い、プロアスリートからスポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、専門学校非常勤講師、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行いながら「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く