容姿への「イジり」に対してNOを言うことの重要性|広がり始めた、男性にとってのボディポジティブ
ボディポジティブは、女性だけのものではありません。ボディポジティブムーブメントの広がりにより、これまであまり語られてこなかった男性のボディイメージについて変化が起きています。
最近は海外だけではなく日本でもボディポジティブの概念が浸透し、多様な体型の女性たちがいきいきとファッションモデルや広告で活躍しています。
海外では、男性のボディポジティブやボディニュートラルといった身体の自己受容についての動きが出てきました。この動きによって、男性は、女性とは異なる身体に関するステレオタイプで抑圧されている課題が浮き彫りになりつつあります。
ファッション、俳優やインフルエンサー、メンタルヘルスへの影響など様々な切り口で語られ、一過性の流行ではなく、これまでの硬直していた男性像を見直そうという前向きな議論がされています。
男性のボディイメージについて語る時がきた
ボディポジティブムーブメントは、「太った体型をスティグマ(不名誉な烙印)にする差別に抗議する」という1960年代後半にはじまったファット・アクセプタンス運動とフェミニストたちの想いが現在に受け継がれてきたものです。
ボディポジティブについて語られることの多くは、外見に関する規範で抑圧される女性たちの声が多かったのですが、議論が深まるにつれて男性のボディイメージに対する抑圧も明らかになってきています。
イギリスを拠点とする自殺防止チャリティ団体Campaign Against Living Miserably (CALM)は、インスタグラムと協力して#CALMBodyTalks キャンペーンで、男性のボディイメージに関するタブーについての調査を行いました。
調査に参加した半数以上(58%)の男性が、自分の見た目についてネガティブな点があり、それが心の健康にも影響を与えていることや、見た目同様に、約半数(48%)の男性が自分の身体に対する感情が原因で精神的な健康を損なっていると回答しました。
#CALMBodyTalks by @theCALMzone, supported by @instagram, asked 2,000 men about how their bodies made them feel. Here's what they had to say: https://t.co/n0ko9rvhEx pic.twitter.com/hgMhxEAyy5
— RKZ (@RKZUK) May 3, 2021
リアーナの下着ブランドSavage X Fentは、プラスサイズの男性モデルを起用し賞賛されました。
男性の下着のモデルといえば鍛え上げたマッチョな男性が多いイメージですが、女性に多いプラスサイズモデルを男性でも起用したことは驚きとポジティブな反応が多くあり、「自分と同じような体型の男性モデルを初めて見た」と言う声も上がっていました。Savage X Fentは、サイズSからXXXLまで取り揃えている包括的なブランドだからこそできることです。
OKAY RIHANNA 👀 pic.twitter.com/kgDD7J24Bg
— Aspiring Hot Mom (@amberellaaaa_) October 2, 2020
男性のボディポジティブインフルエンサーの登場
ケルビン・デイビス
ケルビン・デイビスはファッションやアートに強い興味があったものの、自分の体格や肌の色のせいで、ファッションを楽しめていないことに不満を抱いていました。彼は、ボディポジティブという言葉が一般的になる前の2013年に、プラスサイズの男性がファッションを楽しむ方法を綴るブログを開設し、今ではGapなどのブランドでモデルをつとめています。
ベン・ジェームス
プラスサイズモデルであり、ボディポジティブ・アクティビストのベン・ジェームスは、ソーシャルメディア上で男性のボディポジティブを提唱し続けています。ベンは幼い頃からラグビーに励んでいましたが、持病のセリアック病が原因で引退後に体重が増加し、身体に自信が持てずメンタルにも影響があったと語っています。
そんな状況を食生活や運動習慣で改善した経験をもとに、自尊心、ボディポジティブ、メンタルウェルネスについて積極的に発信をしています。
ロン・ジャック・フォーリー
体型だけではなく、支持されるモデルの年齢も変化してきています。年配のモデルの広告キャンペーンやランウェイでの起用も増えてきています。ロン・ジャック・フォーリーは、年齢を重ねて白くなったヒゲも魅力的であることを体現しています。
「イジリ」の対象ではない男性の身体
おそらくほとんどの人が自分の髪、体型、肌など身体の中で気になるところがあるはずですが、男性がメディアやSNSなど公の場で「イジリ」の対象にされやすい悪しき文化があります。これに対して、発言力のある俳優たちがはっきりとNOを突きつけてセルフラブ・セルフケアを重視する考えが支持されています。
俳優であり映画監督として活躍しているジョナ・ヒルは、彼のサーフィン姿をパパラッチして揶揄したタブロイド誌にはっきりと反論し、身体に関するコンプレックスについて率直に語りました。(詳細はこちらの記事)
子役時代ふくよかな体型だった俳優のジョシュ・ペックも、34歳になった現在も子役時代の体型をからかう「ミーム(インターネットで拡散されるネタ画像)」を使うことをやめてほしいと伝えたTikTok動画が1000万回以上再生されています。
@joshpeckI guess I’m the one who keeps bringing it up…..
♬ original sound - Josh Peck
女性たちが主体のボディポジティブムーブメントによって、これまで語られてこなかった男性のボディイメージに関する会話もできるようになってきました。
男性の体型に対するスティグマ(不名誉な烙印)は、女性の多くが向けられる審美的な偏見とやや異なり、自己管理の能力と結びつけて「怠けている」という揶揄で「イジリ」の対象になることもあるようです。それは男性の身体を機械のように効率的・生産的に動くモノのように捉えている偏見にもつながっているのかもしれません。
人の身体はそれぞれの個性があり、「完璧な」「理想的な」身体というものは存在せず、見た目よりも健康であることや幸せであることに目を向けたほうが自尊心と自信を持つことができます。男性としてボディポジティブを謳歌し発信する人々が証明しています。
ボディイメージの悩みを持つ男性が多いにもかかわらず、話し合いがされてこなかったことや、男性だから気軽に体型を揶揄されていたことも、時代の変化とともに終わりを告げようとしているのです。
AUTHOR
中間じゅん
イベントプロデュースや映像制作を経て、ITベンチャーに。新規事業のコンセプト策定から担当。テクノロジーとクリエイティブをかけ合わせた多様なプロジェクトの設計に参画。社会課題やジェンダーの執筆活動を行う。
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