だって、春だから。五感をフルに使って料理してみませんか|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん

 だって、春だから。五感をフルに使って料理してみませんか|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん
Megumi Sekine
関根愛 
関根愛
2021-03-04

SNSで見かける、彩り豊かな食事の写真。見るからに栄養がありそうで、こんな食生活を送ってみたいと思う人は多いでしょう。でも「そんなに頑張れない…」という人も少なくないはずです。時間もない、料理が得意じゃない、不器用なあなたに伝えたい「頑張らないごはん」。意識すべきポイントは、とってもシンプルです。今日からできる「簡単な食養生」、教えてくれるのはマクロビオティックマイスターの関根愛(せきね・めぐみ)さんです。

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みなさん、こんにちは。やっと訪れた三月。待ちに待った春の玄関口ですね。どんな靴を履いて、はたまた素足で、どんな一歩を踏み出しますか?

私は歌手のCoccoさんが好きです。寒くて心もとなくてちぢこまっている東京の冬空の下でも、彼女の厳しくも温かい声を聴くと心に灯がともります。先日Coccoさんの著書「こっこさんの台所」(幻冬舎/2009)を読んでいて、彼女も料理をつくるときに計量をしないと知りました。まるで自慢できませんが、私ももっぱら目分量派。本コラムに載せるささやかなレシピにも分量を書いたことはありません(よくOKしていただいているなあ...ありがとうございます)。

それにはもちろん理由があります。私も過去にいくつかの料理本を参考にすることがありましたが、分量通りに作ってみても、あれ?なんだか美味しくない・・・と感じることがありました。それを繰り返すうちに、レシピはあくまで道筋を示してくれているもので、大切なのはじぶん自身の感覚に素直に従って料理をすることではないか・・・と思い始めたのです。

きっと書かれている分量は目安であって、正解(そもそも料理に正解がない)ということではないはず。でも、分かりやすく分量を示されてしまうとその通りに作れば美味しくなるという甘えが生まれてしまって、じぶん自身の五感をなまけさせてしまうような気がどうしてもしてしまいます。そんなの、もったいない。他の誰かのものではない、唯一無二の豊かな感覚をひとりひとりが持っているというのに、それを使わないでおくなんて・・・。じぶんの五感をちゃんと働かせることは、これから私たちがしっかり見直していかなくてはいけないことなのではないでしょうか。

私は、みずからの感覚を研ぎ澄ませることが本来の料理ではないかと思うことがあります。ひとりひとり違っている体、心、今いる環境、していること。そういうものと密接になった感覚に、素直に忠実でいること。たとえば甘いおやつを沢山食べたから、レシピには「砂糖」と書いてあるけど今夜は控えよう。昨日は沢山泣いたから、今日の料理はいつもよりちょっと塩辛くなりそうだけどまあそれでいいだろう。今日は暑くなりそうだから。今日は体力を使う日だから。今日は心穏やかにいたいから。

そんな些細な、それでいて大きなことが料理の味を自在に変化させる。自然と切り離され極度に文明化された社会に生きる私たちにとって、料理はみずからの五感を頼りに自然と再会させてもらう手段にも思えます。

作りたい料理を調べるとレシピが難しそうだった。手間がかかりそうだ。そしたら、その本を思い切って閉じたっていいのです。次に頼りになるのは料理本でもレシピサイトでもなく、繊細な感覚を持ったじぶん自身。何も考えずにスーパーや八百屋さんに出向いたら、大切な五感をフルに使って、今日の食材を選んでみませんか。彩りがきれいで元気がでるからでもよし。かぐわしい土のかおりがして懐かしい気持ちになった、ほんのり甘い匂いがして疲れが癒えそうだも立派な理由。触れてみたら命の音がした。気持ち良かった。なんでもいい。

そうして今ここのじぶんの体と心から自然と手が伸びた食材を大切に買い、いざおうちへ帰ったら、まな板にぽんとのせてみる。さあどう料理しよう。どう味付けしよう。「分からない」も味になる。だれにも再現できない味をこっそり楽しむ。プロフェッショナルの料理家の方からしてみれば「甘い」のかもしれないけど、それくらい肩の力を抜いて、いきませんか。だって春ですからね。

せきねめぐみ
photo by Megumi Sekine

 

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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AUTHOR

関根愛 

関根愛

俳優を始めた十数年前よりアトピーなどさまざまな心身の不調を感じてきたことで、薬に頼るのをやめて自分の体の声を聴きながら養生していくために自然食を始める。「じぶんらしく生きるための食養生」をテーマにInstagramやnote、Youtubeで日々発信をつづける。マクロビオティックマイスター。映画制作者、ライター、翻訳者としても活動。座右の銘は「山動く」。



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