ボディポジティブヨガ創設者インタビュー|どうすれば「自分を愛すること」が革命的な行為となり得るか

 ボディポジティブヨガ創設者インタビュー|どうすれば「自分を愛すること」が革命的な行為となり得るか
写真:ティフ・ブラウン、スタイリング:ガブリエル・ポルカロ、ヘアメイク:ティミア・イヴェット;セーター:Forever21、ジャンプスーツ:Athleta

ボディポジティブ・ヨガ(Body Positive Yoga)の創設者であるアンバーさんは、私たちにハイエストセルフ(最高の自分)を称えることを説き、また、家父長制のイデオロギーなどについても批判しています。

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アンバー・カーンズさんは、ボディポジティブムーブメントは自尊心を育むための活動に見せかけて、実は石鹸と法外な値段のカミソリを売るために考えられた広告キャンペーンとして始まったことを十分承知しています。彼女が2010年、ボディポジティブ・ヨガを設立した際、そのコンセプトは資本主義よりももっとソーシャルジャスティス(社会的正義)に基づいたものでした–「すべての体型の人に居場所とアクセスを構築するために始めた」と彼女は言います。

写真:ティフ・ブラウン、スタイリング:ガブリエル・ポルカロ、ヘアメイク:ティミア・イヴェット;セーター:Forever21、ジャンプスーツ:Athleta
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当時、カーンズさんは1年に及ぶ200時間ヨガティーチャートレーニングの途中で、同じような問題がクラスで度々発生していました:彼女とその他の生徒たちはポーズの取り方の指導法を学んでいましたが、その方法は1つの体型タイプ:瘦せ型で能力の高い生徒にのみに効果的でした。「“うーん、でも手と手の一歩前に足が出ないわ”など、私は常に自分の意見を述べていたの」と8月の午後、太陽が降り注ぐ中、ボルチモア市内の私の家の近所にあるインナーハーバーを見下ろすフェデラルヒルパークのベンチで彼女は私にそう語ってくれました。「そのとき、あれ、私たち、自分みたいな体型の人に指導する方法を実は学んでいないじゃないって思ったの」。

自身のヨガ実践法を記録し始め、自分のような体型の人に対し、ハウツービデオをシェアし始めてこの10年間、カーンズさんはヨガティーチャーとして、リトリートリーダーとして名を馳せ、また、ソーシャルジャスティス・アクティビスト(社会的正義のための活動家)で作家のダイアン・ボンディさん(2015年、ヨガスタジオをもっと包括的で公平なものにしたいティーチャー向けコースを提供する、ヨガ・フォー・オール・トレーニング(Yoga For All Trainingを立ち上げた)やアクセシブルヨガ(Accessible Yoga)の創設者でディレクターのジヴァナ・ヘイマンさんら、その他のウェルネス提供者たちと協力して活動を行ってきました。また、カーンズさんとヘイマンさんは、6月にアクセシブルヨガのトレーニングスクールを開校し、7月にポッドキャストを開始しました。「ヨガを学び、ウェルネスやフィットネス分野に携わっているのに私のような体型の人間を見ることは、多くの人にとってどんな意味があるのか、あまり心の準備ができていませんでした」とカーンズさんは言います。

カーンズさんは自分の実践法をより良くするアイディアが頭に浮かぶと常に喜んでシェアしています。ある種のポーズは自分には難しい、と多くの人がしばしば考えますが、実際にはどんなポーズであっても正しく行えば、誰にでも可能です。例えば、ヨガストラップを胸周りに締めれば、反転時に体を喉から遠ざけることができ、より広々とした深い呼吸を行えます。こういった小さな発見が生徒たちにとっては人生を変えるような発見になり得る、とカーンズさんは言います。

「一般的に大きな胸をしていると、ヨガを行う際にそれが邪魔になりかねませんが、このような目から鱗の瞬間が訪れると、生徒たちは自分自身そして自分の実践法の見方が完全に変わるでしょう」。

写真:ティフ・ブラウン、スタイリング:ガブリエル・ポルカロ、ヘアメイク:ティミア・イヴェット;タンクトップ:torrid、レザージャケット:モデル私服
写真:ティフ・ブラウン、スタイリング:ガブリエル・ポルカロ、ヘアメイク:ティミア・イヴェット;タンクトップ:torrid、レザージャケット:モデル私服

体のニュートラリティー(中立な状態)を探す

2020年の世界的なパンデミックによる大惨事さえなければ、私とカーンズさんが出会った時、彼女はポジティブヨガ・サマーキャンプ(2015年からカーンズさんが行なっているリトリート)からちょうど帰宅したばかりのタイミングのはずでした。

そのリトリートはバージニア州ブルーリッジ山脈のモーリー川のほとりに20人ほどのグループが集まって5日間行われ、カーンズさんと共にヨガと自己受容を学びます。水泳、ダンス、ロックジャンピングなども行い、360度山の景色に囲まれ、木々の中で生涯にわたる友情を育みます。「大きな体をした人々は、自分たちがどれだけのスペースを占めるかをとても意識しています」と、アクセシブルヨガを通じてカーンズさんに師事し、昨年のサマーキャンプに参加したヨガティーチャーのアンドレア・ディマイオさんは言います。

「ここでは好きなだけスペースを取ることができますし、問題ありません。むしろ歓迎され、そうすることを奨励されているのです。単純に泳ぐこと、太陽を浴びること、水と空気の感覚を楽しむことができます。私って大きすぎる?なんてことを頻繁に考えなくて良いのです。ダンスしても良いですし、自分の体にどっぷり浸かり、喜びや奔放なひととき、音楽に合わせて動く瞬間を体験できるのです」。

確かにカーンズさんは他人を祝福し、また彼らが自らを祝福するのを手助けする際に本当に輝いています。「私がコミュニティを作る際は、自分が参加したいと思う、他のどこにも存在しないスペースを作ることを意識するの」と彼女はほんの少しの南部訛りで私に話してくれました。

ボディポジティブ・ヨガサマーキャンプで、カーンズさんは参加者が、少なくとも自分を受け入れ、自分の愛し方を学びながら、自分のありのままの体で自由を感じて良いという雰囲気を作り出していました。「もし愛にたどり着かなくても大丈夫。結構大変な注文なのだから」と彼女は明かしました。

カーンズさんは自分の体を愛するための道を切り開いたと言います。そのために彼女は体の見た目というよりむしろ存在と機能を受け入れるため、中立的な言葉を使うことを習慣化し、家父長制、資本主義、白人至上主義、またファットフォビア(肥満恐怖症)から利益を得る社会システムに疑問を投げかけました。

そもそも自分の外見を嫌うことで誰が恩恵を受けたのかを考察し、ヨガを通じて身体的に自分の体とつながり、自分の見た目について何を言われようが気にしていないと周りに思われている自分を受け入れました。ボディポジティブなメッセージ(私の体って綺麗!)よりも、例えば、これが私の体よ、とか、これが人間の太ももよ、とか、そういった中立的な思考を選ぶことは、美しさと価値を同一視する第一歩になります。「私は自分を何らかの方法で売り込もうとしているわけではないの。自分がしていることは、ピローに刺繍を施すとか、Pinterest栄えしそうなグラフィックデザインを作り出そうとか、そういうことではないわ」と彼女は言います。ヘイマンさんは、カーンズさんの自然体で、堂々とした正直さと洞察力について次のように述べています。「私は彼女の率直なところが好きですし、彼女はヨガの世界において珍しい性格です。ほとんどのヨガティーチャーは平和的な雰囲気を装い、とにかく上昇志向です。しかし彼女はそれをしません。彼女はとても地に足がついていて、ありのままです。−ヨガとは自分の身体で今居る場所に存在することですが、彼女はまさにそれを体現しています」。

写真:ティフ・ブラウン、スタイリング:ガブリエル・ポルカロ、ヘアメイク:ティミア・イヴェット;セーター&タンクトップ:Aerie、レギンス:DK Active
写真:ティフ・ブラウン、スタイリング:ガブリエル・ポルカロ、ヘアメイク:ティミア・イヴェット;セーター&タンクトップ:Aerie、レギンス:DK Active

抑圧的なシステムを取り払う

自分の体を愛することは非常に困難かもしれません。なぜならば、私たちの生きる社会には年間600億ドル(約6兆3000億円)のダイエット業界が存在し、その回帰率は80%を超えているからです。そういった社会における美容のスタンダードによって私たちは「自分の体には解決すべき問題があるとか、常に取り組むべきプロジェクトがある」と刷り込まれるのだ、とカーンズさんは言います。そしてこれは今日存在する、ボディポジティブムーブメントの深刻な問題だと彼女は述べています:「昔からの美のスタンダードを基本としつつ、プラスサイズの人々も楽しむことができ、誰もが美しくなり得るという意見が大多数だとしたら、私たちがまだ見た目を重要視している証拠です。私たちはまだ美しさと価値を結びつけています」。むしろカーンズさんは、私たちは本質的にありのままで良く、直す必要なんてない、ということを念頭におかなければならないと言います。「私たちは皆、自分の体にどれだけの価値があるかばかりを気にしているため、外見に固執する以外に、私たちが取り組むべきもっと高いレベルの目的があることを忘れてしまっています。ちなみにそれに取り組めば、変化が確実に現れます」。

カーンズさんは既存のものさしを捨てて、代わりに不平等や地球環境の問題など、もっと現実的な問題に自分たちのエネルギーを注ぐべきだと提案します。そしてそれを行うには、私たちが生まれた時代の利益主導型の生き方をやめる必要がある、と彼女は言います。「私たちがスタジオを経営してようと、ヨガティーチャーであろうと、私たちの決断は利益中心ではなく、人間を中心に考えるべきです」。

もちろん、カーンズさんは、企業が生き残るためにはお金を稼ぐ必要があることを理解しています。実際、彼女も経営者の一人です。しかし、彼女は選択する際、真の自分とのより高い整合性を感じるためにお金や栄誉を犠牲にする場合もあります。「私は多くの自分のプラットフォームをシェアしています。機会が与えられたら、自分自身にそれは誰かにシェアできるものかどうかを問いかけます」と彼女は言います。過去に彼女はティーチャートレーニングの職務や大手国内ブランドの広告を断った経験がありましたが、おかげで彼女よりも表に登場する機会の少ない人たちと時間を共有することができました。

実際、彼女の個人としての実践や指導方法における重要なテーマは、個人の主体性とパワーという考え方です。そして、自分分たちが何者であるか、また自分たちについてどう感じるかを定義づける境遇(夢の職業、大きな家、成功したビジネス、完璧な体)という概念を拒否しています。ヨガはその思考を取り除く手助けとなり、私たちに、必要なものは全て自分の中に存在することを教えてくれます。また、ヨガは心と一緒にワークする手助けとなり、意識的な思考と自分に対する思いやりを育み、他人の前でどのように存在すべきかを教えてくれます。「私たちは皆、スピリット(精神)、内なる輝き、神聖なきらめきを持っており、それらは生きていること、また人間であることの経験を明示しています。そして、私たちが内なる自分、また自分が何者かという真実を探求する旅を始められれば、美しい部分だけでなく、人間の経験全体に触れることができます。すると他人に対しても、もっと簡単にそれを見出し、認識することができるようになるのです」とカーンズは言います。なぜなら、美しさというのは結局のところ、目に見えるものでは全くないのです。内側から感じるものなのですから。

教えてくれたのは…リンゼイ・タッカーさん
リンゼイ・タッカーさんは、米ヨガジャーナルのシニア・エディターであり、ジャーナリストとしても活躍している。

ヨガジャーナルアメリカ版/「How Loving Yourself Can Be a Revolutionary Act

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By LINDSAY TUCKER
Translated by Hanae Yamaguchi



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