「支出はどうしたら減らせる…?」夫婦でお金の話し合いをするきっかけ・コツを専門家が解説


物価高が続く中で、「お金を貯めたい」と思っていても、なかなか貯金できなくて困っている家庭も少なくないと思います。『共働きなのに、お金が全然、貯まりません!』(三笠書房)の著者でファイナンシャルプランナーの柏木理佳さんに、共働きでお金を貯めるコツについてインタビューを行いました。後編では、支出を減らすための工夫や、夫婦でお金の話し合いをするきっかけ作り等について伺いました。
支出を減らすためには
——なかなか給料は上がらないですし、賃金が伸びても物価上昇に追いついていないため、現実的な対策として支出を減らすしかない人も多いと思います。ポイントを教えていただけますでしょうか。
物価上昇は本当に大変ですよね。CPI(消費者物価指数)を基準に節約を考えていく方法があります。総務省統計局のページを見ると、何がどれくらい値上がりしているのかがわかります。
たとえば、スーパーで買うようなものが1割くらい高くなっているなら、その分、削る必要がありますよね。一回の買い物でいつも5000円くらいかかっているのでしたら、いつもの感覚で買い物していると、5500円くらいになってしまう。値上げ分を抑えるために、プライベートブランドのものに替えるとか、お惣菜は安くなった時間帯にしか買わないとか、工夫が必要です。日用品も今使っているものが100円ショップのものに替えられないか検討してみたり、服も古着屋を利用するなど、支出を抑えられないか見直してみてください。なるべく物を持たないシンプルな暮らしをすることも、支出減に繋がります。
——スーパーで支出を抑えるのも限界だと感じている人もいると思います。ほかに何か方法はありますか?
最近はスーパーよりも青果店の方が安いことも珍しくないです。個別にパッケージ包装がされていなくて、自分で袋を持っていく必要のあるお店もありますが、その分価格が抑えられているところもあります。
直売所も小売店より低価格で購入できることが多いので、生活圏に直売所がないかも見てみるといいでしょう。まとめ買いをしたり、近所の人と一緒に大量に買ってシェアをしたり(シェア買い)といった工夫をしている人もいます。
夫婦でお金の話し合いをするきっかけ
——本書では、夫婦でお金に関する話し合いをしていくことの重要性が書かれています。現在、話し合いができなくて悩んでいる場合、今からできることはありますか。
今まで別々で管理していた場合、いきなり家族口座や家族カードで全て管理するのはハードルが高いと思います。なので、家計簿アプリで一緒に管理してみるとか、アプリが合わない場合は、まずは1か月分だけでも箱にレシートを入れていって支出を可視化し、物価が上がってることをお互いに確認します。
そうすると、飲み会が多いとか、タクシーを使いすぎとか、お互いのできていない部分が見えてくると思います。このとき、相手を非難しないようにしましょう。支出の無駄が見えてくると、「食品はプライベートブランドのものに買い替えていこう」「今月はこの分をセーブできたからこっちに当てよう」みたいな話ができるようになります。
最初から具体的な話をするのが難しいのであれば、1か月分の収支を可視化し、赤字になっていることをパートナーに確認してもらい、危機感を持ってもらうことから始めてもいいです。見えるところに私の本を置いていただいて、話のきっかけが作れたという経験談を伺ったこともあります。片方に家計管理を任せっきりな状態を抜け出し、二人で話し合いができるようにすることが重要です。
——中高年夫婦ですと、既に話し合いをしようとした人もいると思います。たとえば50歳前後の夫婦が今から話し合いをするにあたって、話のきっかけにできることはありますでしょうか?
そのくらいの年代ですと、老後の生活を考え始める時期です。「ねんきん定期便」を見ながら、いくらもらえるのかを確認し、老後の生活費と計算すると、いくら足りないのかも見えてくるでしょう。50代になると「役職定年」が始まる会社もあります。役職定年とは、一定の年齢になると管理職から退く制度です。役職がついたときは誇らしいのですが、役職定年を迎えると、給料が3分の1になるなんてことも。
もちろん上司にそういう人はいるものの、恥ずかしいからみなさん話していないので、役職定年を意識せずに生活していて、自分の番が来て初めて知ることも多いです。役職がついて一瞬給料が上がるものの、永遠に続かないことにはなかなか気づけないもの。役職がついた時期が一番給料が高くなるので、その時期に老後に備えておくことが重要です。
——中高年の離婚において、お金に関して注意した方がいいことはありますか?
忘れてしまいがちなのですが、厚生年金の分割を2年以内に行うようにしてください。離婚時の年金分割には合意分割と3号分割があります。マンションを持っていて、ペアローンを組んでいると話がややこしくなりますので、住宅ローンを組んだ銀行などの第三者に入ってもらって、どうするか決めるといいでしょう。
親の介護と支出の問題
——中高年になると、親の介護が始まる人もいます。経済的な面での介護の心構えを教えていただけますか。
前提として、介護に関わり始めたらずっと抜けられなくなることが多いです。おすすめは、できるだけ施設に入ってもらうこと。入所できなくても、少し距離を置いて、あくまで遠くからサポートするくらいがいいと思います。
デイサービスやショートステイなど、頼れるものはなるべく頼りましょう。近い距離でケアを行っていると、親から期待・依存されてしまいますし、行政からも「子どもが看られる家」と判断されてしまいますから。
——「一度関わり始めると抜けられなくなる」ということは、どういう関わり方をしていくかを事前に決めておく必要があるということでしょうか。
そうですね。介護は急に始まることも珍しくないので、認知症の疑いがあるときに診てもらう病院や、デイサービスを探しておいて、親に資料を渡しておくという準備はできます。子どもから言われても、親がなかなか聞いてくれないこともあるので、親のご近所さんとも交流しておいて、周囲の人から言ってもらうといった方法もあります。
なお、施設は月5~15万円ほどかかります。「地方に行けば安い」と言われますが、地方ですと深刻な人手不足で入所できる人が少ない。それに15万円ですと年金でも足りない人も多いので、そうするとヘルパーさんに家に来てもらうしかありません。
方法としては、バリアフリーが整っていて、安否確認と生活相談をしてもらえる民間の「サービス付き高齢者向け住宅」に入居するとか、要介護3、4、5の場合には特別養護老人ホームへの入所を検討するとかが考えられます。そもそものお話になりますが、体調が悪くなると色々とお金がかかりますし、人手不足で望むだけのサービスが受けられないことも出てきていますので、健康でいることが一番です。

【プロフィール】
柏木理佳(かしわぎ・りか)
1968年、神奈川県生まれ。生活経済ジャーナリスト。FP(ファイナンシャルプランナー)。NPO法人マネー・キャリアカウンセラー協会代表にて、年金、保険、資産運用をアドバイス。豪州ボンド大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得後、育児中に桜美林大学大学院で博士号取得。国土交通省有識者会議メンバー。
豪州留学後、米国企業勤務、香港にて英国企業(現中国系)勤務、中国留学を経て、シンガポールにて会社設立に携わる。嘉悦大学、城西国際大学大学院などで准教授(経営戦略、マーケティング、人的資源、キャリア)を経て、現在は立教大学経済学部特任教授。
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