「手を洗いすぎてしまう…」苦しいのに、それでもやめられない原因とは?心理師が解説

 「手を洗いすぎてしまう…」苦しいのに、それでもやめられない原因とは?心理師が解説
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石上友梨
石上友梨
2024-05-26

手を洗いすぎてしまう、苦しいのにやめられない。そんな悩みを抱えていませんか?やめたいのにやめられず、時間や体力、気力までも奪われしまう。それはとてもつらいことです。やめられない背景にどのような心理的要因があるのかご紹介します。

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手を洗いすぎる原因とは?

手を洗いすぎる要因にはさまざまな可能性があります。以下を参考にしてください。

強迫性障がい

強迫性障がいとは、心の病気の一つです。強迫性障がいの症状の一つとして、汚染恐怖や過剰な清潔さが強迫観念(不安を呼び起こすような考え、イメージなどが頭の中に繰り返し浮かび、払いのけることができなくなる)として現れる場合があります。何度も手を洗うことによって、「洗ったから大丈夫」などと強迫観念を打ち消して不安や恐怖を和らげようとします。

強い不安

強い不安が手を洗いすぎる行動の原因になることがあります。特に不安や恐怖の原因が感染症などの健康的な問題と関連している場合、手を洗うことで安心感を感じやすくなります。

環境要因

コロナ禍や衛生管理が厳重な職場など、清潔さや衛生に対する社会的なプレッシャーや期待が高まる環境では、手を洗いすぎる傾向があります。

習慣化

子供の頃から手洗いを重視する環境で育った場合、その習慣が現在も強く根付いている場合があります。そうすると習慣的に手を洗い続け、それが人と比較して過度になっていると気づいていない可能性があります。

手を洗いすぎる原因は人によって様々です。上記の理由のうち、手を洗う強い苦しさを伴うものは1番になります。特に長期間続く場合やどんどん回数や時間が伸びている場合は、医療機関など専門家の助言やサポートが重要になります。

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手を洗いすぎる状況に対処するための方法

認知行動療法

強迫性障がいや強い不安の治療法として効果的がある認知行動療法を受けることが役立ちます。認知行動療法は、強迫観念と強迫行動(強迫観念の打ち消すためにとる行動)、不安などの感情、身体症状の関連を客観的に分析し、健康な思考パターンや行動パターンを築くのに役立ちます。次の章で詳しく説明します。

薬物療法

一部の場合、抗不安薬や抗うつ薬などの薬物が処方されることがあります。これらの薬は、手を洗いすぎる行動に関連する不安や恐れを軽減するのに役立ちます。

マインドフルネスやリラクゼーション技法

マインドフルネスや深呼吸、瞑想などのリラクゼーション技法を練習することで、不安やストレスを軽減することができます。これにより、手を洗いすぎる行動が減少する可能性があります。

セルフケアを続けること

体の健康を維持するために、バランスの取れた食事、適切な睡眠、適度な運動などの自己ケアを行うことが重要です。これにより、不安やストレスを軽減し、手を洗いすぎる行動を抑制するのに役立ちます。

専門家のサポート

必要に応じて、医療機関や心理カウンセラーのサポートを受けることも重要です。先ほど紹介した認知行動療法を含め、それぞれの状況に合わせて適切な心理療法やサポートを提供してくれます。

手の洗すぎに対する認知行動療法は何をするの?

認知行動療法には様々な技法があります。手を洗いすぎる問題を改善するために、心理カウンセラーはクライエントと協働作業で、状況に合わせて技法を組み合わせていきます。今回はよく使われる技法を紹介します。

認知再構成法

手を洗う行動や強い不安と関連する「認知:考えやイメージ」を客観的な視点から検討していきます。例えば、「私の手は汚染されている」という認知に対して、客観的な根拠を探したり、反証したりします。一人では難しいので協働作業で意見を出し合うところがポイントです。

暴露反応妨害法

あえて不安になる状況に曝すことで不安を下げる方法です。強迫行為は一時的に不安を下げる行為です。しかし、不安はすぐに再燃するため、再び強迫行為をするという悪循環に陥ってしまいます。 例えば、「自分の手が汚れている」と思っても、あえて手を洗わず、不安を感じ、不安を受け入れます。そうすると強迫行為をせずとも不安が下がっていくので、それをしっかりと感じます。暴露反応妨害法をやる場合は専門家と一緒に計画的に実施しましょう。

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認知行動療法を実施する場合、現在は自分で取り組めるワークブックが書店にて発売されています。しかし、症状が強い場合や、長期間続いている場合などは専門家と一緒に取り組むことをおすすめします。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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