一人で暮らす=孤独とは限らない。心地よさを築くための、中高年シングル女性の“人づくり”のヒント

 一人で暮らす=孤独とは限らない。心地よさを築くための、中高年シングル女性の“人づくり”のヒント
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独身・元母子家庭・別居中の人といった中高年のシングル女性の自助グループである「わくわくシニアシングルズ」では、オンラインや対面での交流のほか、セミナーや調査も行っています。代表の大矢さよ子さんは、元々母子家庭のNPOに十数年在籍し、理事も務めていたとのことですが、その後、2015年にわくわくシニアシングルズを立ち上げました。団体名には「現実には苦しいことがたくさんありますが、みんなでつながっていれば、気持ちだけでもワクワクすることもあるよね」という意味が込められているとのことです。後編では、中高年期の人とのつながりや、「孤独」についてのお考えについて伺いました。

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「シングル女性」に共通する問題

——シングル女性=ずっと独身の女性というイメージを持っていたのですが、わくわくシニアシングルズでは、もっと広くを対象としているのですね。

独身だけでなく、母子家庭の人や、元々母子家庭で子どもが自立した人、配偶者と離別・死別した人、離婚を考えているものの別居中の人もいて、共通点は「40歳以上で配偶者やパートナーのいない女性」ということです。

若いときは結婚や子どもの有無などで、考えや生活スタイルが違って合わなくなってしまうこともありますが、年齢を重ねるにつれ、社会構造として共通した問題に直面していることを感じてきました。気持ちの分かち合いを目的とするのであれば、より共通点が重なっている人同士でつながる方法もあります。ですが、社会に声を届けていくことも想定して立ち上げたので、同じ課題を抱えている人同士で、より広くつながることを考えました。

——団体を作って人とつながることは支えになる一方で、大変なこともあると思います。

組織や団体は難しいことや面倒なこともありますが、それ以上に、人とつながっていけることで充実しています。私は仕事も一人でするよりも、チームで協働して取り組む方が合っているので、みんなで一緒に考えてアクションを起こすのは楽しいんです。わくわくシニアシングルズは小さすぎず、大きすぎず、フラットな関係性の自助グループで、私にとって心地良いですし、元気をもらえます。

——わくわくシニアシングルズで出されている本『シニアシングルズ 女たちの知恵と縁』では「最大のセーフティーネットは助けてくれる人づくり」とあります。助けてくれる人づくりというのはどのような関係性でしょうか?

自助グループはメンタル的な助け合いの意味が大きく、物理的に何かをし合うわけではありません。直接会えることもありますが、関東を中心に、住んでいるところはみんなバラバラで、メーリングリストやSNSで交流することが多い関係です。一人の人間が頭の中で考えられることには限りがあります。自分だけで考えているよりも、人の話を聞くことで自分のことを振り返られますし、アドバイスももらえる。人とつながることで、新たにクリエイティブなものと出会うこともできます。

物理的な助け合いは、自助グループや社会運動とは別で考える必要があります。高齢になってくるにつれて、自分が人の手を借りないと生活できなくなったり、介護状態になったりすることを想像するようになりました。なので、人に頼ることに対して、抵抗がないように生きようとは思っています。

70歳頃から、地域でつながることの必要性を感じるようにもなりました。子どもは遠くに住んでいるので、子どもにお願いできないようなことは、周りの人にお願いしなくてはいけない。でも、お願いすることは全然恥ずかしいことでもありません。シングルマザー団体で活動していたときには、私が若いシングルマザーさんたちにできることをしてきました。高齢者になって、逆に私が社会にサポートしてもらう立場になることもあります。「助け合い」というと、一対一の関係をイメージしがちですが、giveの相手とtakeの相手は別々な助け合いです。

去年仕事をやめ、家の中にいることが多くなって、地域のことも少し見えるようになってきました。今まではあまり地域の中に入っていったことがなかったので、私もこれからの課題です。地域の催しに足を運んで知り合いを作ることからスタートするのだと思います。

一人で暮らす=孤独とは限らない

——世間では、一人で暮らすことを「孤独」と捉えられがちですが、大矢さんは一人で生活することをどのように考えていますか?

単身高齢者は孤立しやすいと言われますし、「孤独」と感じることはあると思います。一方で、本人が「孤独」と思わなければ、孤独ではないと私は思います。女性は結婚している人より、独身の方が長生きするという話も有名ですよね。私の周りにも、夫が亡くなって1、2年は悲しんでいるものの、その後、謳歌している人は結構います。

私自身は一人で暮らすことを、孤独とは感じていないです。一人って結構楽しいですよね。自分のペースでご飯を作りますが、「今日は何もしたくないな」って思えば、寝ておけばいいですし、こんなに楽なことはないと思います(笑)。その一方で、LINEやSNSで人とつながれますし、情報も見ることができる。テレビでドラマもたくさん放送しているので、暇で仕方ないということはないですね。

ただ、仕事をやめて、人と話す機会は少なくなってきているのを感じます。それで滑舌が悪くなってきたり、言葉がすぐに出てこないことも多いので、自分なりに歌を歌ったり、YouTubeで滑舌を良くするための動画を見ながらやってみたりしています。孤独感はないけれども、物理的に動けなくなったときの不安はありますね。

——40代・50代で生きづらさを感じているシングル女性にアドバイスをいただけますか?

自己責任にとらわれたり、自分を責めたりする必要はないです。私は73歳ですが、若い頃は結婚して夫の給料で生きていくのが当たり前の時代でした。今は共働きや独身の選択をする人も増えているのに、昔と変わらない家族をベースとした社会制度や慣行、仕組みのままであれば、当てはまらない人は生きづらさを感じると思います。

ただ、私が若い頃はこういう話が出てくるとすら思っていませんでした。女性の寿退社が当たり前で、「オールドミス(結婚適齢期を過ぎた未婚の女性)」という侮蔑的な言葉も使われていましたし、女性だけ定年が早かった時代もありました。

今の女性たちは働く人が増えて、主張もしていて、女性たちが自分の力を信じて生きていると感じます。「私はこうしたい。こう生きたい」と自信を持って生きていいと思いますし、その力が今の若い人にはあると思います。

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【プロフィール】
大矢さよ子(おおや・さよこ)
1950年生まれ。わくわくシニアシングルズ代表。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事なども務めた。編著に『シニアシングルズ 女たちの知恵と縁』(大月書店)。

■わくわくシニアシングルズHP
https://seniorsingles.webnode.jp/

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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