人気ボディワーカー森拓郎さん×トレーナーmikikoさんが考える「幸せになれるフィットネス」とは

 人気ボディワーカー森拓郎さん×トレーナーmikikoさんが考える「幸せになれるフィットネス」とは
森拓郎さん×mikikoさん
mikiko
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2023-08-26
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「信じたい情報」と「正しい情報」が違うということに気付けるか

mikiko:本でもSNSでも、森さんは「〜をするだけでいい」という訴求を避けている気がしますが、他にも情報発信をする上で気をつけていることはありますか?

森:僕は、逆張りすることが自分の軸だなと思っています。他の人が言っていることと同じことを言ってても意味ないじゃん、っていう考えが根底にありますね。僕、小学校・中学校の頃から、大人が言ってることに違和感を覚えながら育ってきたんです。「この人、本心で言ってないな」とか「立場で言っているな」とか「この人、そこに魂ないな」って。でもそれを突っ込むと生意気とか言われてしまう。フィットネスについても同じで、それは本当の情報なのか、本当に効果があることなのかと疑問を持って考えるようにしていたんです。

mikiko:フィットネス業界でも、流行りを作るためとか、お金を作るためを優先した情報発信があるのは気になっているんですが…その点はいかがでしょう。

森:僕が情報発信をはじめた頃はブログしかなかったんですね。今はtwitterやinstagram、TikTokなどたくさんSNSがあり、その中で過激に思えるワードが流行ったりしますよね。「たったこれだけ!5分で腹筋が割れますよ」とか。でもよく考えてみてください。それだけで割れている訳じゃないでしょ、他にもやってるでしょ? という(笑)。

mikiko:でもSNSでそういう過激なワードは目立つから、たくさんの人が信じやすい。何が正しい情報なのかが分かりにくい時代ですよね。

森:せっかくよい情報があっても埋もれてしまうことも多いですよね。

mikiko:それにプラスして、自分が信じたい情報と正しい情報が違うということもありますよね。よくあるダイエットは、フィットネスを仕事にしている私から見ると、プロでもつまづくような難易度高めの方法だったりするのに、そういう人気が出やすいダイエット情報が溢れているのがインターネットの世界だと思うんです。ダイエットの方法で、これが一番つまづきのきっかけになっているなと思うことは何ですか?

森:権威者と言われるような人、たとえばお医者さんとか、どこそこ大学の研究とか、「最新の医学が解明しました!」「新たな真実がわかりました!」って言われると、一般の人が「おかしくない?」って思っても、それ以上の情報で丸め込まれてしまうというのがありますよね。でもそれって、自分自身よりもすごい人だと思う人からそれっぽいことを言われたら、きっとそうだと思ってしまう人もいると思うんです。たとえば、有名な女優さんが「これいいよ」って言ってるだけで、その人がやってるだけで物が売れるのも同じことですよね。

mikiko:マーケティングの強さに負けてしまうということですよね。

森:でもこの心理は、決して特別なことではないと思うんです。僕も自分の専門以外のことなら揺れちゃうかもしれないです。たとえば車とか。ランキングを見たり比較サイトを見たりしますしね。

mikiko:でもそこには、その商品の良いところだけしか書いてなかったりしますよね。だから、自分に合うのかどうかとかデメリットとか、そういう視点は抜けてしまいがちですよね。

そもそも、本当に痩せる必要があるのか?

mikiko:本人は「痩せたい」って言ってるけれど痩せる必要がない人に対して、「痩せなくていいんじゃないですか?」と言えるトレーナーが少ないように感じているんですが、どうすればできると思いますか?

森:まずは、その痩せたい人にカウンセリングすることが必要だと思いますね。いきなり「痩せる必要ないですよ」って言ってしまうと、自分の欲求を否定されていると思われてしまう。僕なら、痩せたいと思っている中身をもっと探ります。痩せれば人生がすべて好転するはずとか、痩せさえすればスタイルが良くなるはずと思い込んでいるだけで、単に語彙力がなくて言ってるということもよくありますから。その場ではあえてうやむやにして、時間をかけてどうでもよくさせていくこともあります。そういうカウンセリングの能力は経験も必要だと思うんですけれど、コミュニケーション能力にかかってきて、それはトレーナーの技術とはまた違うところにありますよね。おせっかいではなく、その人の本質的なところに入ろうとする能力です。その人の思い込みではなくて、その人に合った正しいトレーニングに心を変えていく必要があります。たとえば、1か月に何キロ痩せたいという要求があったとしてもスタートは同じなんです。体の動きのチェックや食事について見直すことからはじまります。最初はベーシックなことをしないといけないんだよってことだけ理解してもらえたら、あとは僕なりのペースで教えていきます。「今必要なことをやる」っていうスモールステップの繰り返しですね。そこができればあとは信頼関係でうまくやっていけると思います。僕個人の意見としては、痩せる必要があるかどうかはすぐに結論を出さなくてもいいんだと思っています。

mikiko:私は少し違うアプローチをするんですけれど、まず「何で痩せたいんですか?」と聞くんです。そうすると、「他人から太っていると言われたから」とか「前着ていた服が着られなくなったから」という答えが返ってくることが結構あります。それとなくですが、周りの人の反応を意識してフィットネスをはじめていないかの確認をしますね。ニュージーランドでは、自分の心がイキイキとするためのトレーニングをする文化が根付いている印象です。

森:トレーナーがクライアントさんの目標設定をするとき、例えば「元彼を見返したい」「バカにしてきた友人を見返したい」みたいな「誰かを見返したい」という他人の目線を目標設定にしたりすると、トレーニングに矛盾が生じやすいですね。とはいえ、最初はトレーニングの考え方が間違っていても、やっているうちに気持ち良くなってきた、楽しくなってきた、見返したいというネガティブな気持ちがなくなってきたというケースもあるので一概には言えませんが。スタートはどんな目的でも良いし、その場でいきなり方向転換をさせようとはしないのが僕のスタンスですね。

mikiko:確かに、運動自体が楽しければ、結果が出ても出なくても続くパターンもありますよね。信頼関係は確かに大事です。ちなみに、森さんが男性トレーナーとして女性を教える中で気をつけていることや信頼関係を気づいていくの必要なことは何ですか?

森:フィットネス業界でよくあるケースとしては、男性が女性を指導するときに、できていないのにめちゃくちゃ褒めるとか、「ホストトレーナー」みたいに言われる人はたくさんいました。僕の場合は、事実しか言わないので、「森さんって全然褒めないよね」って言われることが多いですね(笑)。恋愛気分みたいなものを感じさせるような距離感にはならないように気をつけています。

mikiko:ニュージーランドでは、ホストトレーナーみたいな話は聞いたことがなかったので文化の違いを感じますね。トレーナー選びを間違えないために必要なことは何だと思いますか?

森:難しい質問ですね。「情報発信をきちんとしている人がいいですよ」と言いたいけど、優れた人ほど発信しなくてもお客さんがたくさんいたりします。SNSで発信してなくても予約が取れないほど人気の人もいます。能力を持った人が情報発信をしていて、これから人気が出そうな人を見つけましょうとしか言いようがないですね。

mikiko:私のお客さんの場合は長く続けている人が多くて新規の方をなかなか受け入れられない状況なんですけれど、「ものすごい数の人を教えました!」という人が必ずしも良いトレーナーとは限らないとは思いますね。

森:逆に、数人の人に人気がある人がいても、検証人数が少ないので経験値が上がらないという場合もありますよね。だからこればかりは、正解というものはないかもしれません。

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パーソナルトレーナー|自身の失敗経験を元に個人差や体質を重視した『mikiko式フィットネス論』を提唱|身体と人生観が変わるフィットネス哲学で、一生ブレないための視野と学びを発信しています|流行を根拠と本質で斬る人| 筑波大学健康増進学修士|NZベストトレーナー入賞



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