人気ボディワーカー森拓郎さん×トレーナーmikikoさんが考える「幸せになれるフィットネス」とは

mikikoさん（以下、mikiko）：森さんのことを知ったのは、まだ私が学生だった頃の2016年でした。いま私はニュージーランドでパーソナルトレーナーとして活動していますが、ニュージーランドに渡る時、森さんの著書『オトナ女子のための食べ方図鑑 - 食事10割で体脂肪を燃やす 』（ワニブックス刊）を持ってくるほど愛読していました。スーツケース２個に荷物をまとめないといけなかったのですが、どうしても持って行きたいバイブルになっていた本でした。

森拓郎さん（以下、森）：一部の方から叩かれた本でしたね（笑）

mikiko：私は過去に摂食障害だったことがあるのですが、森さんの本に出会ったのは、ちょうど摂食障害のど真ん中か終わりぐらいだったと思います。どのダイエットに手をつけたらいいか分からない状態だったのですが、とても心に刺さる内容でした。他にも著書を読ませていただいていますが、森さんが教えているのは「ダイエットではない」という印象があります。森さんの発信は「ダイエットを頑張りましょうね」という内容ではなくて、「世の中にいろいろな情報はあるけれど惑わされないで、しっかり基礎を固めていこうね」っていうメッセージが印象的だなと思っています。そんな森さんが、トレーナーとして、当時としてはまだめずらしい、栄養やストレッチにフォーカスして発信をしはじめた理由を聞かせていただきたいです。

森：僕は、最初はパーソナルトレーナーという肩書きで、フィットネスクラブで活動していました。そこで出会ったお客さんが、食事より運動で体を変えたい人が多かったので、運動中心に教えていました。ですが、週に１回くらいの運動だけで体が変わるなんてとても思えないし、フィットネスクラブに毎日通っている人も、それだけでは体はそうは変わらない。けれども楽しそうにはされているんです。僕は、体を変えるなら運動以外にも食事管理が大切で、栄養に気をつければ体は変わると伝えたいのですが、「好きなものを食べたいから運動をしている」と言われたりして、お客さんとの間に考え方の違いがありました。さらには、同業者からも「運動を教える人なんだから運動指導に専念するべき」という声もあったりして、パーソナルトレーナーという自分の肩書きにも疑問を持っていました。

僕がやりたかったのは、食事や体の構造的な機能を変えていくことで、それによってお客さんが思い通りの体を手にいれるということ。ビジネスやマーケティング的に言われている、有酸素運動をして筋トレをすれば体が理想的になるよとか、食事を制限したら体が変わるよというようなことを鵜呑みにしすぎて摂食障害になってしまったり、言われたことをやっているのに体が変わらない、むしろ悪くなってしまった人に対して、もっと提言できることがあると思ったのが、方向転換の大きなきっかけでしたね。

mikiko：私も、「トレーナーのくせにそんな体で」って言われたりします。「フィットネス＝ムキムキ」みたいに思われるところがあって。そういう逆風みたいなものは、最初の頃の方が強くありませんでしたか？

森：最初に刊行した本が『腹筋運動ではお腹は凹みません 呼吸と姿勢だけでみるみる凹む最強メソッド』（アスコム刊）だったのですが、当時はひたすら腹筋をすればよいというような情報が一般的でしたから、この本もずいぶん叩かれましたね。その後に出した本が『運動指導者が断言! ダイエットは運動1割、食事9割』（ディスカヴァー・トゥエンティワン刊）でした。運動より食事が大事ということを書いた本ですが、これも当時は叩かれました。今となっては栄養管理が大切なことは一般的に知られていることですが、当時は意外性があったんですね。

mikiko：「頑張って運動しているのに、何でそんなことを言われなきゃいけないんだ！」っていうダイエッターさんが多かったのかもしれません。「頑張っている感」を大事にしているダイエッターさんもいますから。それに乗っかってメディアでも「これをするだけで痩せる」というような偏った情報が流れたりしますよね。