「多様な体型の人が登場するランウェイを」豪デザイナーが語るファッション業界の課題と未来
ファッションの世界でも多様な美を尊重することの大切さが言われるようになって久しい。かつては長身でスリムなモデルが圧倒的に多かったが、カーヴィなボディのモデルも徐々に増えてきている。そんな中、2022年5月初め、オーストラリアで画期的な出来事が起きた。プラスサイズのブランドが集まり、プラスサイズのモデルだけを使ったショーが開催されたのである。
これまでオーストラリアのファッション界は「多様性は皆無」。プラスサイズモデルのケイト・ウェズリーがインスタグラムにそう批判し、注目を集めていた。「オーストラリアは他の国に追いつく必要がある」とも。その言葉通りニューヨーク、ミラノ、ロンドン、パリの世界4大ファッションショーでは少しずつカーヴィなプラスサイズのモデルたちを採用するブランドが増えているが、オーストラリアのショーではこれまでほとんどプラスサイズのモデルたちが起用されることはなかった。その現状を変えるためプラスサイズのモデルエージェントを運営するチェルシー・ボナーがプラスサイズの服を作るブランド4社に声をかけ今回のショー、名付けて「カーブ・エディット(”カーヴィ版”のような意味)を計画した。
そのボナーに共感したのがそのブランドの1社「ハーロウ」の創設者でデザイナーのケリー・ピエトロボン。彼女自身もプラスサイズで、自分に合うおしゃれな服が見つからないことからブランドを立ち上げた。ピエトロボン曰く「ファッションはすべての人のためのもの。でも私はこれまで人としてはB級、ファッションブランドとしては”あれはファッションではない”と見られているように感じていた」。
ボナーは「プラスサイズのモデルたちのショーの完璧さを見れば、みんなの持っている『モデルとはこういうものだ、女性とはこういうルックスだ』という古臭くて時代遅れな先入観を打ち破るきっかけになるかもしれない」と語る。今回のショーは海外のメディアにも取り上げられ、大きな成功を収めた。しかしボナーはまだ十分ではないと話す。目標はプラスサイズだけでなく「ありとあらゆる多様な体型の人が登場するランウェイだ」「次のステップはこれまでと変わらず、ブランドやデザイナーたちに私たちがファッションの消費者のメインストリームであり、存在を認識してほしいと思っているのを理解してもらうことだ」。
日本でもカーヴィな体型のモデルや幅広いサイズを展開するブランドが増えてきている。またプラスサイズのモデルたちによるファッションショーも開催されている。日本、そして世界のファッション界がこれからどのように多様性を実現していくのか、注目したい。
AUTHOR
長坂陽子
ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。
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