「自然の中で行うヨガ」がメンタルヘルスにもたらす効果とは|臨床心理士が解説

 「自然の中で行うヨガ」がメンタルヘルスにもたらす効果とは|臨床心理士が解説
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石上友梨
石上友梨
2022-05-13

新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、世界情勢の不安定さもあり、ストレスや不安を感じている人も多いと思います。自然と触れ合うことに、ストレス軽減効果があることは以前から報告されています。今回は自然の中でヨガをすることのメンタルヘルスへの効果をお伝えしますので、よかったら参考にしてください。

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自然ももたらすメンタルヘルスへの効果

自然には、ストレス解消効果や免疫力の向上効果があります。カナダの研究では、自然の音を聞くことで、苛立ちや痛みの軽減、ポジティブ感情や認知機能が増進されることが明らかになりました。また、別の研究によると、森林の中を歩いているときは、ストレス時に分泌されるコレチゾールというホルモンが減少傾向にありました。森林浴を1日した後、2日した後に免疫に関連する細胞を調べた結果、前者は27%、後者は53%免疫機能が増強されました。

波の音や雨音などの自然音は、1/ゆらぎという規則性と不規則性のバランスがとれたリズムになっており、癒しの効果が高いことが明らかになっています。また、森林浴がメンタルヘルスに良い理由は、マイナスイオンやフィトンチッドの影響があります。マイナスイオンとは、大気中に存在する負の電荷を帯びた分子の集合体のことです。フィトンチッドとは、樹木などが発する化学物質のことで、殺菌力を持ち、植物が傷つけられた際に微生物の活動を抑制する作用があるそうです。これらが、メンタルヘルスにも良い影響を与えると言われています。

ヨガのメンタルヘルス効果

ヨガはメンタルヘルスに効果があることが分かっています。例えば、「うつ症状の改善」「自律神経を整える」などの効果があります。ヨガをやることで、うつや睡眠と関係するセロトニンという神経伝達物質が放出されるため、落ち込みや、イライラなど気分が改善したり、集中力が向上する、寝つきが良くなります。また、自律神経という、循環器、消化器、呼吸器など身体の基本的な活動を調整する神経のバランスを整えるため、心身の不調感にも効果が期待できます。

このように、自然の中でヨガをすることは、自然による効果に加えて、ヨガによる効果と、メンタルヘルスにとっていい影響が期待できるのです。

森ヨガを体験してみよう

森や緑豊かな公園などでヨガを行う際は、五感を研ぎ澄ませ、森や植物の香り、葉がすれる音、水のせせらぎ、風や日差しを肌で感じる感覚、土を踏みしめる感覚などをしっかりと味わいましょう。部屋の窓から自然を眺めるだけでもメンタルヘルスに良い効果があるので、森の中にあるスタジオ、自然が多い地域のスタジオでヨガをやってもいいかもしれませんね。

ビーチヨガを体験してみよう

スタジオや自宅で行うヨガと違い、自分のポーズや呼吸に集中するだけではなく、目の前に広がる水平線に目線を向けたり、波の音を聞きながらポーズを取ったりしましょう。著者自身が以前に体験したビーチヨガでは、ヨガマットをあえて薄いものにして、砂の感触を味わえるようにしているとインストラクターが話していました。足の裏で砂の感覚を感じ、ポーズを変えるたびに、大地に足を踏み入れる感覚がよりリアルに味わえました。ヨガの最後に行うシャヴァーサナでは、目の前に青空が広がり、波の音を聞きながらいつもよりも深くリラックスできたことを覚えています。

自然の中でヨガをするのは、とても開放的で気持ちがよりリラックスできるオススメのストレス解消法です。自然の中でヨガをやることはメンタルヘルスに良い効果があります。まだ旅行をしづらい状況ではありますので、みなさんの無理のない範囲で今回の記事を参考にしてください。例えば、キャンプに行った際にヨガをしてみたり、旅行に行った際にヨガのクラスを探してみたりするのはいかがでしょうか。また、ヨガができなくても、緑が豊かな公園に行く、森林浴に出かけるなど、自然と触れ合う機会を意識的に増やしましょう。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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