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経済学の父が無視した母の労働【レビュー】『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』
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岸田政権がかかげる「新しい資本主義」に、「夕食を作る人」の視点はあるか
現在の主流派経済学やGDPの枠組みで、経済活動や付加価値を測る限り、家庭内の無償労働および、無償労働の延長にあると考えられている有償労働は、無価値化され続ける。そうなれば、男女の経済格差は縮まらず、看護や介護、保育の現場では人材確保が難しくなり、出産率は低下し続けるだろう。
現在日本のGPDは世界3位だが、世界3位の付加価値を生み出している国はどれほど豊かなのだろうか?
令和元年の日本の相対的貧困率は15.7%だ。また、全世帯のうち、55.4%の世帯が「生活が苦しい」と感じている。母子世帯に限ると、実に86.7%が生活の苦しさを感じているというのが実態だ。(※3)「経済発展こそ救済」という宗教は、過半数の世帯が生活の苦しさを感じるという麗しくない現実を作り出している。
世界3位の経済大国の実態がこれならば、経済とはなんなのだろうか? GDPの測る付加価値とは、どれほどの価値があるものなのだろうか?
現在、岸田政権は「新しい資本主義」を目玉政策として押し出しているが、「新しい資本主義」の何が新しいのか、実態はまだ判然としない。そこに、夕食を作る人の視点はあるのだろうか?
真の豊かさと公正さを実現するために、「何を価値あるものとカウントするか」を見直す必要があるだろう。
※1『失われた賃金を求めて』(イ・ミンギョン・著 すんみ、小山内園子・訳/タバブックス)
※2
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