「自己肯定感は高めようとしなくて良い」心理カウンセラーが伝えたい、本当の自己肯定感のあり方
自己肯定感が低い人がやってはいけないことは「自分責め」
――「自分が悪い」という思考になりやすい人が自己肯定感の低下を加速させないためには、どのような考え方をしたら良いのでしょうか。
私のところには、「サッカー選手の本田圭佑さん(FKスードゥヴァ・マリヤンポレ所属)、元野球選手のイチローさんなどが、自分に対してダメ出しや、厳しい発言をしているのをよく見ます。これも自己肯定感が低い人ということですか?」といった質問が寄せられることがよくあります。
確かに、彼らはテレビや公の場で自分に厳しい発言をしている印象が強いかもしれません。しかし、それらは自分という存在を否定している内容ではありません。あくまで試合で負けたことや、自分がしたミスという「行動」に対してダメ出しをしているのです。
彼らのようなタイプは、自己肯定感が非常に高いからこそ、あそこまで自分自身にダメ出しをすることができる。
実は「全部自分が悪い」と考えるのが、人間にとって一番楽な考え方であり、逃げ道でもあるんです。自分がした失敗に対し、分析や反省をしなくても「私が悪いです、ごめんなさい。」で事が片付いてしまう。これでは発展性がありませんし、自己肯定感は低下するばかりです。
幼少期の環境が自己肯定感に与える影響とは
――自己肯定感の「高い」「低い」の差は、幼少期など生まれ育った環境や過去の経験によって左右されるものなのでしょうか。
山根先生:心理学の世界では、「マインドセットの原型は6歳までにつくられる」といわれています。最近の研究では、遺伝的な要因もあるのではないかと言われはじめていますが、それもまだ定かではありません。私自身、遺伝的なものより育ってきた環境に原因があるのではないかと現時点では考えています。
自己肯定感低めの人が幼少期を思い出してみると、親から「〜してはいけない」といつも言われていた。良いことをすれば褒めてもらえた。悪いことをしたら酷く怒られた。このような記憶が強く残っているという人が多くいます。
これには日本の教育方法や国の歴史的なものも関係しており、海外諸国に比べると日本は愛情表現の乏しい国民性という一面があります。大袈裟なスキンシップや「愛しているよ」といった言葉がけをほとんどしてもらうことなく育ったという人も、日本では少なくないはずです。
――そういった愛情表現を受ける機会が少ない日本人には、自己肯定感が低い人が多いということでしょうか。
しつけが厳しく、減点法で考えられるような家庭環境に置かれていれば、なおさらその傾向は強くなるでしょう。これは世界的な先進国の調査結果にも現れていて、日本は自己肯定感ランキングでいうと最下位です。
幼少期にたくさんの愛情表現を周りから示してもらい、自分という存在を認めてもらえるような環境に身を置くことができれば、大きくなって失敗したときも「自分が悪い」とは考えません。あくまで「自分の行動(または発言)のなにがいけなかったのだろう?」という思考になり、自分の存在を否定することはないのです。
愛情を伝えられることよりも、「〇〇をしてはいけない」「〇〇しなさい」といわれて育てられることで、自己肯定感はどうしても低くなってしまいます。
●お話を伺ったのは…山根洋士さん
これまで、8,000人以上の悩みを解決してきた心理カウンセラー。自身も両親の離婚、就職の失敗など人生の挫折を経験し、激務で身体を壊して入院生活を送るなか「なんのために生きるのか」を模索した結果、心の風邪薬のようなカウンセリングを提供したいという想いから、カウンセラーとなる。著書に『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)があるほか、youtubeやtwitterでも発信。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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