「夏のおやつは、おむすびひとつ」がおすすめな理由|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん

 「夏のおやつは、おむすびひとつ」がおすすめな理由|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん
Megumi Sekine
関根愛 
関根愛
2021-08-07

SNSで見かける、彩り豊かな食事の写真。見るからに栄養がありそうで、こんな食生活を送ってみたいと思う人は多いでしょう。でも「そんなに頑張れない…」という人も少なくないはずです。時間もない、料理が得意じゃない、不器用なあなたに伝えたい「頑張らないごはん」。意識すべきポイントは、とってもシンプルです。今日からできる「簡単な食養生」、教えてくれるのはマクロビオティックマイスターの関根愛さんです。

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みなさん、こんにちは。あさってには立秋、暦の上での秋を迎えますね。まだまだ暑さがつづきますが、ふとした中に秋らしい風を頬に感じる季節が始まります。二十四節気では「涼風至(すずかぜいたる)」とも言われる時。

風はふしぎなもので、目には見えないけれど確かにそこにあるもの。葉や花が揺れたり、海面が揺れたり、髪や旗がなびいたりすることで、その存在を感じます。さりげないけど、ものすごく確かな影響力を持っている。風のようにありたいものです。ぜひみなさんも忙しない毎日の中でふと足を止めて、一陣の風を感じてみてくださいね。

とはいえ、まだまだ酷暑でうだるような暑さを感じる日々でもあります。あまりに暑いと甘くてキンキンに冷えたジュースやアイスクリームを欲しますが、こういった甘味が食べたくなるのは脾臓が疲れている証拠だといわれます。脾臓はあまり意識しにくい内臓かもしれませんが、私たちの体のあらゆる臓器に「気」というエネルギーを送る大切な役目をもつ場所。免疫力とも深い関わりがあり、この「脾」のエネルギーが低下して気力がなくなっている時は免疫が下がっているのだそうです。

私は必要以上に食べすぎてしまっている時はよく、通っている東洋医学の鍼治療の先生に「あ、脾が弱っているねえ」と言われます。そんなとき主に何を食べているかというと、実は甘いもの。「最近疲れているから甘いものが欲しい」と、和菓子や干し芋、ドライフルーツなんかをちょくちょく食べているときです。せめて白砂糖は使っていないもの、果物や自然の甘味のものを…と選んでいるつもりですが、量が多すぎるのか、はたまた本当は胃腸が休みたい時なのに無理をさせてしまっているのか、甘いものの食べ方はどうやら「脾」に影響が出てしまうようです。

食養生では「脾」が健康な状態だと甘いものへの要求が減る、といわれます。そのためにまずは「甘いもの」=「おやつ」の概念を覆してみましょう。おやつと言うと、甘いものを食べてホッとひと息つく、糖分をガツンと補給することでさらなるエネルギーが湧く、というイメージがある方も多いでしょうか。

この「甘いもの」「糖分」は特に夏はアイスクリームやひんやりしたケーキ、手軽なスナックなどが大半だと思いますが、いっぽうで干し芋やナッツ、果物などの自然の甘味を選ぶ人も少なくないでしょう。もちろんそれが駄目とはいいませんが、そういったものを食べていてもいまいち体調がすぐれないな、もっと体に良いおやつはないだろうか、と考えている方にオススメするのが「夏のおやつは、おむすびひとつ」です。

おむすび
photo by Megumi Sekine

穀物の自然な甘みと、海苔のもつ香ばしい磯の甘みがひとつになって、生命力あふれる美味しさを全身で感じられるのがおむすびの良いところ。噛めば噛むほど滲み出てくる穀物の自然な甘みは白砂糖の甘みと違いゆっくり燃焼するデンプンなので、体に負担をかけることがありません。白砂糖は急激な糖分吸収により血糖値がぐんと上昇してしまうため脾臓への負担が大きく、疲れたから甘いものを食べたはずがより疲れやすい体になってしまうのです。

体が喜ぶおむすびの作り方で、私が大切にしていることは三つ。一つ目は「適切な塩」。塩分を控えめに、と思うばかりに、体にとって必要なエネルギー源の塩がついつい不足していることも。病気など特別の事情がある場合は別ですが、特に夏はしっかりと塩分を補給することが大事です。お好きなお塩を見つけて、遠慮せずにしっかりお米に振り、優しくよく混ぜていきます。食べてみて美味しいなと感じる塩加減はひとりひとり違うので、ご自身で見つけてみてくださいね。お米のもつ甘さと適切な塩の絶妙なバランスは、いつ食べても本当に美味しいものです。

二つ目は「しっかり両手を濡らし、そこへさらに気持ち塩をのせる」。十分湿らせた手のひらにほんのひとつまみの塩をのせてからおむすびを丸めていきます。この最後の塩ひとつまみがおむすびをぎゅっと引き締めて美味しくするコツです。

三つ目は「ふんわり結ぶ」。ぎゅぎゅっと力強く「握る」のではなく、空気を入れるようにしてふんわり軽く4〜5回ほど「結んで」いきます。米粒と米粒をつなぐように、やさしく結んであげる。だから「お握り」ではなく「お結び」なんです。そこへパリパリの香ばしい海苔をこれまたふんわりと、大切なものを包む時のように巻いてあげる。これで完成です。

体を労ってあげるなら、自分の手で作るおやつが一番です。おやつ作りは手間がかかる印象もありますが、おむすびひとつなら誰でもできる。体質改善を目指す方はぜひ、夏のおやつをおむすびに変えてみてくださいね。自分の手で結んだたったひとつのおむすびが、内臓をすこやかにし、夏の暑さを乗り越える活力を与えてくれます。みなさんにとって健やかな夏であることを願っています。

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関根愛 

関根愛

俳優を始めた十数年前よりアトピーなどさまざまな心身の不調を感じてきたことで、薬に頼るのをやめて自分の体の声を聴きながら養生していくために自然食を始める。「じぶんらしく生きるための食養生」をテーマにInstagramやnote、Youtubeで日々発信をつづける。マクロビオティックマイスター。映画制作者、ライター、翻訳者としても活動。座右の銘は「山動く」。



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