体感したことのない人にしかわからない爽快感の鼻洗浄。気にはなっているけれど…「なんか痛そう」「試したら痛かった」「道具をそろえるのが面倒くさい」「液体はどうしたらいいの?」など実践までのハードルが高いのも事実。今回はそんな鼻洗浄(鼻うがい)の魅力と方法についてご説明します。
もくじ
(1)鼻洗浄とは
(2)西洋医学に学ぶ「ネブライザー療法」
(3)アーユルヴェーダに学ぶ「ジャラネティ」
(4)マクロビオティックに学ぶ「番茶うがい」
(5)鼻洗浄のコツと注意点
(6)まとめ
人の体液と同じ濃度の塩水で鼻の中を洗い流し、鼻の粘膜についた塵や埃・汚れを綺麗にする鼻の洗浄方法。洗浄液(塩水)はきちんとした濃度であれば鼻に入れても基本的にまったく痛みを伴いません。
この時期は鼻の中に入った花粉を落とすことはもちろんのこと、鼻からくるウィルス性の風邪などの予防対策としても効果的です。また、鼻の通りが良くなると呼吸が楽になり脳に酸素が回りやすくなることで、脳の活性化にもつながります。鼻トラブルの際に起きがちな頭のぼーっとする感じを取り除くことができ、インドの伝統医学やヨガでは「第六チャクラ(眉間)」、第三の目(サードアイ)を浄化させる洗浄方法とも言われています。
耳鼻咽喉科では、花粉症やぜん息、蓄膿症や気管支炎や肺炎などの治療として「ネブライザー療法」という治療方法があります。
ネブライザーとは、鼻や喉の炎症を抑える薬剤を超音波により細かい霧状にして鼻の中に放出する機器のこと。細かい霧状にすることによって、口や鼻から気管や肺、鼻の奥へ薬剤を送り込むことができます。
これは耳鼻科ではとても一般的で、炎症を起こして蓄膿になった副鼻腔(顔の骨の中の空洞)の炎症を和らげる治療法のひとつで普段洗うことのできない副鼻腔や上咽頭までをネブライザー療法(鼻洗浄)することで、通常取り除けない汚れまで綺麗にすることができます。
※2022年3月現在、ウィルス感染・飛沫(エアロゾル)対策でネブライザー治療をお休みしている病院もあります。
ヨガやアーユルヴェーダを実践されている方にはお馴染みの「ジャラ・ネティ」。
「ジャラ・ネティ」とは5,000年以上前の古代インド医学の頃から記載があるとも言われている鼻洗浄のことを言います。
ネティポットという水差し(ジョウロ)のような容器を使い、塩水を右の鼻に入れて左の鼻から出す、左の鼻から入れて右の鼻から出す、というもの。
アーユルヴェーダは、自然のエネルギーから体が構成されていると考えられており、身体にある不純なものを取り除く浄化法として実践されています。
インドの伝統医学やヨガでは気やエネルギーの出入りする「チャクラ」がありますが、ジャラネティをすることで「第六チャクラ(眉間)」を浄化するとも言われています。
マクロビオティックでは「番茶」を使ったお手当法がいくつもあります。
ここでいう「番茶」とは「三年番茶」のことを言い、緑茶の茶葉と茎を摘み取って天日干しし、よく乾燥させ三年間熟成後じっくり焙煎をさせたお茶のことで、長期間の熟成期間を経て、カフェインやタンニンなどの刺激物質が抜け、まろやかな風味になるのが特長で、お子様でも安心して飲むことができるお茶です。
番茶には殺菌効果があり、マクロビオティックでは目や痒みがある個所に番茶で湿らせたコットンをのせた「番茶湿布」や番茶に塩を入れてうがいをする「塩番茶うがい」、陰性の風邪の初期症状の時に飲む「梅醤番茶」などのお手当法があります。
水と比べ色がついている塩番茶でする鼻洗浄(鼻うがい)は、出てくる鼻水の状態が目で見てとてもわかりやすいのでその状態がやみつきになる人も多いのではないでしょうか。
また「直感」を感じる第三の目(サードアイ)を浄化させる洗浄方法とも言われています。
※番茶を使用する際は、農薬を使用していない茶葉での洗浄をおすすめします。
鼻洗浄のコツと注意点
◆道具
鼻に水を流し込む際の道具はじょうろ型、チューブ型、哺乳瓶やドレッシングの容器のようなボトル形のものなど様々。
道具は、アーユルヴェーダ関連のお店(じょうろ型)が多く、ネブライザー療法はチューブ型などの特徴がありますが、初心者には薬局でも手軽に購入することができる、哺乳瓶のような形をした道具がお勧めです。コップから片方の鼻を抑えてもう片方の鼻からすする方法もありますが、難しく無理に吸うと水圧で粘膜を傷付けてしまうので、あまりおすすめしません。
◆洗浄液
薬局では容器と洗浄液がセットになっているものが1,000円近くで販売されています。
始めは濃度調整された洗浄液でチャレンジしてみましょう。人の体液と同じ濃度なので、鼻に入れても痛みはまったくありません。
最近では水に溶かすだけの粉末もヨガサイトやオーガニック系のサイトでも販売されていますので是非探してみてください。
慣れてきたら塩水をご自身で作って洗浄してみましょう。
用意するもの
・容器
・水…500ml
・塩…4.5g
やり方
(1)9%の塩水を作ります。※洗浄液を使用する場合は(2)へ
綺麗なボウルに水1L(1,000g)に対して塩9g、水500ml(500g)に対して塩4.5gを入れよく混ぜ合わせます。
水は人肌(36℃)くらい、塩は天日塩(自然塩)を使います。
水道水の場合は必ず沸騰して殺菌したものを、またはミネラルウォーターか精製水を使用してください。
※塩の融解度は20℃の水で358.5gまで溶けるので、熱いお湯に溶かす必要はありません。
(2)容器に塩水(洗浄液)を入れる。
(3)右の鼻に容器の口を指し、洗浄液を鼻に流し入れる。
ボトル型の場合は顔は正面のままボトルをやさしく押して、ネティポットの場合は頭を左に方向け水を流し込みます。
この時に口を少し開けて「あー」と声を出すように喉を開放するとうまく逆に左の鼻から水が出ます。洗浄液が口に行く場合がありますが問題ありません。鼻に刺激がいかないように優しく流し入れましょう。
(4)左の鼻に容器の口を指し、洗浄液を鼻に流し入れる。
一度空になった容器に洗浄液を入れ、(3)と逆の鼻に流し込み洗浄します。
(3)と(4)を洗浄液がなくなるまで繰り返します。
※鼻洗浄をする場所は、洗面所やお風呂場がおすすめです。
◆温度
鼻の中は粘膜なので、とても敏感です。
ネット検索すると「40℃くらいのお湯」と良く出てきますが、40℃では少し温度が高すぎます。
洗浄液に手を入れてみて「お風呂くらいかな」と思いそのまま使用すると、塩分濃度が正しくても、デリケートな粘膜には温度が高すぎて痛いと感じることがよくあります。
「温かい」と感じる温度よりも「ぬるい」「常温」くらいまで温度を下げてから洗浄することをお勧めします。
◆鼻洗浄のタイミング
花粉症の時期は外出から帰ったタイミング、毎日のルーティーンとしての場合はお風呂から出たタイミングがおすすめです。ただし、寝る直前は避けましょう。鼻に炎症があったり常に鼻が詰まっている人が鼻洗浄をすると、すっきりしているのに洗浄液が鼻の奥に残っている場合があります。
頭を傾けて戻した瞬間に中に残った洗浄液が出ることがありますが、残ったまま寝てしまうと、朝まで鼻の奥に洗浄液が残り中耳炎などの原因となります。心配な方は、洗浄後に頭を下に(前屈)したり寝転んでから起き上がるなどをして鼻の奥の洗浄液を鼻の外に出してあげましょう。
この場合は思い切り鼻を噛んでも洗浄液は出ない場合が多いです。無理に出そうとせず、頭を色々な方向に傾けて様子をみてみましょう。
◆水の種類
沸騰させた水道水を冷ました水や市販のミネラルウォーターか減菌精製水など、滅菌された水を使用しましょう。水道水の水を沸騰せずに人肌に温めて使ったり、37℃に設定した水道水を使うのは危険です。アメリカで滅菌せずに鼻洗浄をし「原発性アメーバ性髄膜脳炎」で死亡者も確認されています。容器も清潔な容器を使用しましょう。鼻の中は粘膜なので、とてもデリケートです。急性中耳炎/浸出性中耳炎/声帯麻痺/誤嚥を起こしやすい人/膿性鼻汁の多い人などは、症状を悪化させる場合もありますのでご注意ください。
花粉症や風邪を引いたときに鼻が詰まると、頭がぼ~っとするように、鼻の周りには感覚を感知する機能がたくさんあります。鼻づまりによる脳の酸素不足に陥ったり、顔周辺が凝り固まってしまい頭痛を招いたり、不調になりがち。それらを軽減させ、とてもスッキリした状態になる鼻洗浄。
医学的にもまだ解明されていないことの多いメラトニンというホルモンを分泌する「松果体」とも関係があるとも言われています。未経験の方は一度試してみてはいかがでしょうか。