女性の約4人に1人、男性も約5人に1人が被害に…DVから身を守るために知っておきたい法律とは?
DVとは、配偶者や恋人から受ける暴力のこと。内閣府の調査(*1)では女性の約4人に1人、男性も約5人に1人が被害を受けています。DVの相談件数も年々増加しており、2002年は約3.5万件だったのに対し、2022年には約17万件(*2)にのぼっています。そんなDVから被害者を守る「DV防止法」が改正され、2024年4月1日に施行されます。万が一、自分が被害に遭ったときに備え、現行のDV防止法と改正DV防止法について理解しておきましょう。
DVとは?
DVの定義
DVとは「Domestic Violence:家庭内での暴力行為」の略称です。
日本では配偶者や恋人(元を含む)からの暴力行為を指すのが一般的です。
DVの種類
DVには次のような種類があります。
・身体的DV:殴る、蹴る、物を投げつけるなど直接的に攻撃するもの
・精神的DV:心無い言動などにより、相手の心や尊厳を傷つけるもの
・経済的DV:お金を渡さない、働くことを禁じるなど経済的に支配するもの
・社会的DV:家族や友人との連絡や交流を制限するもの
・性的DV:性的行為の強要、避妊に協力しない、中絶を強要するなど性的苦痛を与えるもの
経済的DVと社会的DVは、精神的DVとしてまとめる場合もあります。
DV防止法でできること
DVへの対策として2001年に成立したのが「DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)」(*3)です。
どんな法律なのか見ていきましょう。
対象者
DV防止法の対象者は、「配偶者」から暴力を受けている人です。この「配偶者」には、事実婚や元配偶者も含まれます。同居している交際相手も対象です。また、DVの被害者は女性がイメージされやすいですが、男性も対象となっています。
被害者をサポートする環境の整備
DV防止法では、被害者をサポートする環境の整備が定められています。
具体的には以下のような取り組みです。
・相談窓口の設置:配偶者暴力相談支援センターやDV相談プラスといった相談窓口を設置しています。
・一時保護:被害者を一時保護するシェルター等を設けています。
・自立支援:被害者が配偶者から離れても生活していけるように支援します。
・通報の努力義務:DV被害に気づいた人に対し、警察や配偶者暴力相談支援センターに通報する努力義務が示されています。
一方、DV加害者に対して発せられるのが次の「保護命令」です。
保護命令の内容
保護命令は、配偶者からの「身体に対する暴力」または「生命等に関する脅迫」を受けた被害者の身体・生命の安全を確保するために裁判所から加害者に発せられる命令です。
保護命令には次の3つがあります。
・接近禁止命令:被害者や子ども、被害者の親族に近づくことを禁ずる命令(期間6ヶ月)
・退去命令:加害者に住居の退去と、住居付近の徘徊禁止を命ずる命令(期間2ヶ月)
・電話等禁止行為:無言電話や深夜の電話、不安を煽るメールやFAXなどの迷惑行為を禁止する命令
保護命令に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。
改正DV防止法で変わること
2023年5月12日に「改正DV防止法」が成立し、2024年4月1日より施行されます。いったい何が変わるのでしょうか。(*4)
対象者の拡大
DV防止法の保護命令では、身体への危害がない精神的DVは対象になりませんでした。
しかし、改正DV防止法では「自由、名誉または財産」に対する加害の告知による脅迫を受けた者が追加されます。精神的DVの被害者も保護命令の対象になりうるのです。
接近禁止命令の伸長
接近禁止命令の期間が6ヶ月から1年になります。
SNSによる迷惑行為も禁止に
これまでの電話等禁止行為では「電話・メール・FAX」を使った迷惑行為の禁止は示されていましたが、SNSは対象外でした。
しかし、今回の改正でSNSも対象となります。
住居の持ち主・借り主が被害者なら退去等命令を延長
被害者が住居を所有している、もしくは被害者が住居の賃貸契約をしている場合には、2ヶ月間の退去命令を6ヶ月まで延長できます。
※加害者と共同で契約している場合には対象となりません。
保護命令違反の厳罰化
先ほどもご紹介した通り、これまでは保護命令違反には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が課せられていました。
一方、改正DV防止法では「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」と、より厳しくなっています。
おわりに
十分とはいえませんが少しずつ拡充されているDV防止法。「DVとは何か」や「DV防止法」の知識を持っておくと、いざという時に自分自身、もしくはDVに悩む家族や友人を守れる武器になります。ぜひ心の片隅に置いておいてくださいね。
参考・引用資料
*1 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版 1 令和4年度男女共同参画社会の形成の状況 現状編 p150.」
*2 内閣府男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センターへの相談件数の推移」
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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