漢方家・ロン毛メガネさんに聞いた、心と体を養う生活 #デジタルネイティブたちの食わずらい|特別編
学業や進路、人間関係に加えて「食」に思いわずらい、揺れる若者の心。デジタルネイティブな若者たちの2つの「わずらい」(患い、煩い)のリアルをお伝えした「人と違う、私たちのリアル」。最終回では10代、20代の方々への「自分学」を提案しました。 特別編では、心と体のための『自分学』を設け、生活学・休養学のヒントをお届けします。
お腹がすくこと、眠ること。体の「自然」を取り戻せ
前編、後編、特別編にわたってお伝えしてきた「#デジタルネイティブたちの食わずらい」では、日々投稿を続けるネットの若者当事者たちの声に、ある共通項を発見しました。
それは「おなかがすかない」という若者の本音から出た言葉。
「神経性食思(しょくし)不振症」という症例は、必ずしも食欲は低下しないことで「神経性やせ性」と名前を変えたといわれますが、改めて「食思」がどういうものか、再考しました。
それは、自然におなかが空いて、食事を摂りたいという素直な気持ち。
そんな気持ちが失われた結果が、後編でお伝えした「他人軸」で選ぶ食や、若者のトレンド「#おそろ食べ」に表れているように感じられました。
もちろん、前夜にお酒を飲みすぎた大人も、体の違和感がとれるまで次の食事をコントロールすることがあります。しかし、体が本来持っているはずの食思(=食べたい気持ち)が慢性的に機能不全になった若者が増えた結果、国民病や社会現象に発展する予感もさせます。
さらに若者の生活面に目を向けると、多くが季節や気候を無視した食生活に陥っていました。
10代、20代の女性たちには、真冬にサラダ、コンビニ食品や冷蔵のデザートを食事のメインとするような選択が日常化している傾向も見られます。
他の見方では「雪の日にこたつでアイスを食べる」醍醐味もあると言えますが、こうした状態が長期化すれば、この先10年、20年と歳を重ねていく女性の体には悪影響となるでしょう。
食生活のみならず、下剤や睡眠薬、サプリメントなどの市販薬を手放せなくなっていることも、若者の体の「自然」が失われた一つの兆候と感じられました。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)で発表された調査からは「増える10代の市販薬の乱用」が報じられ、原因は生きづらさ、不安感と分析されています。
医師を受診し、処方を受ける、治療のためでない日常薬が、ドラッグストアやネットで簡単に手に届く環境も一因と考えられますが、ネットの若者の中には、薬を過剰摂取することで(略語で「OD」とも言われます)不安定な心理状態、睡眠や便通の帳尻を合わせたり、逆に狂わせたりしているユーザーも見られました。
ここで薬を否定し、薬に頼らない医療を肯定したい思いはありません。
自然に便通が訪れないから下剤、眠れないから睡眠薬といったように、体が本来持つ回復の力を待たず、薬で押さえる生活を日常とすることを、問題視しています。
薬とうまく付き合いつつ、排便や睡眠が自然に訪れるよう、生活改善に取り組むか否か。自分次第で体の「自然」を失わせるか否かを分ける、重要な選択と捉えています。
AUTHOR
腰塚安菜
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代から一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会で「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員を6年間務めた。 2016年よりSDGs、ESD、教育、文化多様性などをテーマにメディアに寄稿。2018年に気候変動に関する国際会議COP24を現地取材。 2021年以降はアフターコロナの健康や働き方、生活をテーマとした執筆に転向。次の海外取材復活を夢に、地域文化や韓国語・フランス語を学習中。コロナ後から少しずつ始めたヨガ歴は約3年。
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