発酵と科学の力で生み出される作り手の顔が見えるスキンケア「FAS」の魅力
さまざまなアプローチから開発されるスキンケアアイテムですが、日本の伝統技術である発酵に着目し、最新の科学を用いて生み出されるスキンケアブランドがあります。それが、「FAS」です。デビュー1周年とまだ新しいブランドでありながら、多くの人々に支持されています。その魅力は、一体どこにあるのか。ブランドマネージャーの井上みなみさんにお話を伺いました。
「一生肌をあずけたい」と思えるスキンケア製品を届けたいという思いで誕生
「FAS」は、『Fermentation and Science(発酵と科学)』をコンセプトに2023年10月にデビューしたスキンケアブランドです。日本古来の技術である発酵と最先端のテクノロジーを掛け合わせて開発されています。FASが誕生するきっかけとなったのが、古代米を復興させた京都府京丹後の黒米と発酵職人さんたちとの出会いが大きいと話すFASブランドマネージャーの井上みなみさん。黒米に含まれるアントシアニン系の色素は、抗酸化作用をはじめ、ビタミンやミネラル成分を豊富に含み、美容のみならず、予防医学の側面からも注目されています。そんな黒米のパワーを最大限に引き出すためにこだわったのが、発酵に用いる酵母。黒米との相性、スキンケアとの適性を見極めるため、約300通りの組み合わせを試し、でき上がったのがFAS独自の黒米発酵液です。発酵は、微生物(酵母)の働きにより生まれる人間にとって有益なプロセスのことで、有益でない場合は、腐敗と呼ばれます。つまり、絶妙なバランスで組み合わせることによって効果を発揮してくれるわけです。300通りとは、気が遠くなりますね。しかも、黒米には、外部ストレスから身を守る丈夫な黒い表皮があるため発酵させる難易度も高かったそうです。そんなハードルの高いことに挑戦し、新ブランドを立ち上げた井上さんは、化粧品のプロフェッショナルかと思っていたら、IT関連で入社し、化粧品部門の立ち上げを任されたといいます。当時は、メンバー全員が、初めての化粧品開発とのことで、デジタルマーケティングを活かし、「N organic」をローンチ。7年間の経験を活かし、2023年に「FAS」がデビューすることになりました。
「化粧品って、消費材であり、贅沢品だと思います。価値を見極めて使ってもらえ、消費者のみなさんと濃く付き合えるアイテムでもあると感じています。」(井上さん)
確かに、毎日使う消耗品だからこそ、自分に納得のいくものを選びたい。「N organic」は、手に取りやすいブランドとしてスタートしていますが、「FAS」は、より美容好きに向けたブランドとして誕生しました。
「30歳になったとき、長く肌をあずけたいと思えるような製品づくりをしたいと考えました。長く愛用してもらうためには、製品はもちろん、その背景も伝えられるストーリーのあるブランドを作ろうと思ったんです。発酵にも興味があったこともあり、ゼロから作りたい。今だからできるものを、市場にはないもの、そして素材の新しさを含めて探していたときに、黒米に出会いました。黒米の農家さんや発酵の職人さんもですが、偶然の出会いからスタートできました。」(井上さん)
たまたま巡り合ったように、笑顔で話す井上さんでしたが、情熱と行動力があったからこそ、巡り会えた必然なのではないかと感じました。
本当にいいものを信頼できる仲間と共に作りたい
黒米は、一般的に多く流通するものではなく、京丹後でも文化の継承のために、ごく一部で育てられていました。そこに、「化粧品に使いたい」と、初めて訪れたときは、農家のみなさんは、「何を言っているの?」という状況だったとか。そこから、「FAS」が目指しているものづくりについて伝え、農家のみなさんと理解を深めることで、信頼関係が深まり、協業できるようになりました。「FAS」のスタッフが農作業を手伝いに行くと、町中の人が集まっているのではないかというくらい多くのみなさんがお出迎えに来てくれるそうです。
2024年9月には、まもなく1周年ということで、『祝祭』と題した、「FAS」のものづくりのこだわりがわかる展示会が開催されました。そのときには、農家のみなさんが、はるばる東京まで駆けつけ、丹精込めて育てた黒米が、このようにすばらしい製品になってお披露目されている晴れ舞台をみて、喜んでいたそうです。ちなみに、「FAS」で黒米を活用することになったため、休耕田だった土地も活用し、黒米栽培を行うようになっています。地域の活性化にも一役買っているのです。
黒米農家さんにたどり着いたように、発酵の分野で匠と呼ばれる秋田今野商店や伊達朗さんとの出会いも「FAS」になくてはならないもの。発酵の技術を駆使し誕生した独自の黒米発酵液を配合し、化粧水とクリームというスキンケアに必須の2アイテムでデビューしました。現在は、11アイテムを展開しています。デビューのときに、ラインアップで出さず、次々と新作を発表するのは、なにか意図があってのことかと思いきや、「季節性を大切にして、ニーズがあるタイミングでアイテムを開発しています。いつもぎりぎりです(笑)。人とのかかわりを大切にすることで、長く続けられると思っています。」(井上さん)
デビューから、百貨店などで見かけることも多く、愛用していたけれど、こんなストーリーがあったんだと改めて知ることができたという声も聞かれた『祝祭』。製品の背景を知ると、もっと使いたくなりますね。
シンプルにピュアに開発を続ける
ブランドの準備期間としては3年ですが、発酵の研究は10年前から行っていたそう。新アイテムが、次々に登場していますが、成分は1から開発し、テクスチャーは数十回試すなど各部門のこだわりを経て、ようやく製品となって発表されています。
「原材料からすべて手配しているブランドって多くありません。お肌や体にいいもの、シンプルに心地いいものをピュアに開発したいです。」(井上さん)
基本的なスキンケア、クレンジングのほか、朝のマッサージという新習慣を提案するアイテムまで展開し、デビュー1年とは思えない人気ぶり。コスメアワードも数多く受賞しています。今後、まだ足りないピースがあるため、それを作っていくとのことで、年内にも新商品が登場しそうです。農家さんと顔を突き合わせて一緒にものづくりを行うことにこだわり、忙しい中、京丹後へも足を運んでいる井上さん。
「発酵液のパワーを感じて、生産者の思いを楽しんでいただきたい。」と、メッセージをいただきました。
スペシャルケアアイテムもありますが、初めて使うなら、まずはデビューアイテムの化粧水「ザ ブラック エッセンス」と、「ザ ブラック クリーム」から始めてみるのが個人的にはおすすめです。さらっとしたテクスチャーでありながら、うるおいが実感できる黒米発酵液のパワーが感じられますよ。
AUTHOR
林ゆり
ロハスジャーナリスト。フリーアナウンサー。 関西を中心にテレビ、ラジオ、舞台などで活動後、東京に拠点を移し、執筆も始める。幼いころからオーガニックに囲まれて育つ。LOHASを実践しながら、ファッション、コスメ、食べ物など、地球にやさしく、私たちにもやさしいものについてライフスタイルマガジンやブログで発信中。
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