【体験談】私たちには賃貸が合っていた。8年住んだこだわりマイホームを手放し手に入れた「心地よさ」

 『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』(KADOKAWA)より
『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』(KADOKAWA)より

漫画家のアベナオミさんは、こだわって建てた住宅を8年住んだ後に手放すという選択をし、現在は賃貸マンションに住んでいます。その過程を『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』(KADOKAWA)に描いています。家を手放したのは、ローンが払えなくなったとか、災害で住めなくなったとか悲しい理由があるのではなく、自分たちにはどんな住まいが合っているのか向き合った結果。とはいえ、葛藤はなかったのでしょうか?4LDKのマイホームから2LDKの賃貸マンションへの住み替えで、どんなことが変わったのかも気になるところ。詳しく伺いました。

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賃貸へ引っ越して“自由”になった

——マイホームを建てたものの、生前整理をしたり、家計を見直したりしているうちに、家を手放すという結論に至っています。最初はどんな葛藤がありましたか?

家を手放すこと自体がネガティブなイメージがありますよね。ローンが払えなくなってしまった・夫が仕事を辞めてしまった・災害で影響を受けてしまったなど、持ち家を手放す理由は、多くの場合、何らかの事情で住めなくなってしまったからだと思います。世間一般から見たら相当珍しい選択をしたので、親戚やママ友からどう見られるかなど、周囲の目は気になりました。

でも生前整理や家計の見直しをする中で、夫婦の目標として、子どもたちの夢を応援するために、3人分の教育費を貯めることを確認していて。大事なのは私たちの目標であって、周囲からどう見られるかではないという話をして、結果的には賃貸へ住み替えるという思い切った選択を取りました。

『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』(KADOKAWA)より
『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』(KADOKAWA)より

——家を手放し、賃貸に引っ越して、どんなことを得ましたか?

自由だと感じるようになりました。家を建てた地域は、私の地元でもあったので、ご近所さんの目が気になってしまって。たとえば、車がなければ出かけたことがすぐわかってしまいますし、外出して帰ってきたときにたまたま会えば「どこ行ってたの?」という会話になります。
誰の目も気にせずに、気軽に一人でふらっと出かけるのが難しい環境でした。

また、公共交通機関が不便な場所だったので、外出先は自家用車で行けて、駐車場がある場所に限定されます。そうすると、どんどん郊外に行くことになるんです。

賃貸に引っ越してからは、私は一人でバスに乗り、仙台の繁華街やデパートに出かけるようになりました。仙台は東京のように地下鉄がたくさん走っているわけではないので、バス移動の方が便利で、意外と色々なところに行けるんです。仙台でも都会的な地域なら、公共交通機関だけでも過ごせるんですよね。車は私の分は処分して、今は主に夫が使う一台しかありません。

郊外だと、女性がわざわざ一人で車でファミレスへ行くことはあまりなくて。同じチェーン店のお店でも、郊外だと一人で食事している人がいなくて、家族や友達と食事をする人ばかりです。仙台の中心部だと、女性が一人で食事をしていても目立たなくて、恥ずかしさを感じないのも新鮮でした。

——再び賃貸に住み始めて、心地よく住んでいることが描かれていますが、マイホームの方が良かったと思う部分はありますか?

音の問題は一軒家の方が快適でした。マンションですと、どうしても上や横の音は聞こえてしまいますよね。上の階の人が夜型生活をしているので、夜中に結構音が聞こえるのですが、末っ子のモナカちゃんは、おばけがいるのではないかと不安になっています。

次男と長女が赤ちゃんだった時期は一軒家で暮らしていたので、泣いてもご近所を気にせずに済んだのは、すごく助かったとしみじみと感じます。

コロナが流行し始めて、外出自粛が求められる時期も一軒家で生活を送っていました。今の賃貸マンションで、ステイホームしなければならなかったら大変だったと思います。あの広さに助けられた部分もありました。

メンテナンスしてもらえることのありがたさ

——賃貸に戻り、生活にどんな変化がありますか?

子どもたちへの声かけは変わりました。マイホームでも落書きはダメだと言っていたものの、「今は借りてるお家だから、大事に使おうね」と伝えるようになりました。

大人たちも「大事に使わなくては」という意識が高まったと感じます。マイホームの頃から乱暴にしていいと思っていたわけではないものの、振り返れば雑に扱っていた部分はあったなって。

マイホームでは「壊れたらどう修理するか」についても、漠然とした不安があったのですが、今は不具合があれば管理会社に連絡すればいいという安心感もあります。

点検のための停電や、貯水槽の清掃のために水が止まったり、消防設備点検があったりと、定期的に業者さんが入って、それに合わせなければいけないことがあるのは少し億劫であるものの、建物や設備のメンテナンスをしてもらえるのはありがたいです。

——マイホームに住み始めたばかりの頃に「賃貸の管理費は家事代行のサブスク」と夫さんがおっしゃっていましたね。

最近、玄関先に蜂の巣ができてしまいました。持ち家だったら自分たちでどうにかするか、業者を呼ぶしかないですが、賃貸なので、管理会社に電話をしたら、駆除業者の人がすぐ来てくれて、あっという間に蜂の巣を取り除いてくれました。

自分で業者を呼んでいたら1万~2万くらいはかかっていたと思うので、管理会社で管理の一部として対応してくれるのは助かります。

狭いスペースで暮らす工夫

——生前整理をして物を減らしたとはいえ、4LDKから2LDK(しかも息子さんのピアノ用の防音スペースがあるので実質1LDK)への引っ越しは、かなり狭くなりましたよね。暮らす上でどのような工夫をしていますか?

引っ越してきた当初は、上手く生活できるか不安も少しありました。でも物を減らしてきていたので、すぐに問題なく暮らせると思えました。

ただ、子どもが3人いるので、教科書やおもちゃ、服など、どんどん物は増えます。そういった状況で、私が徹底しているのは、収納家具を増やさないこと。長男のピアノの楽譜だけはどうしても増えてしまうので、本棚はピアノがある部屋に置いて対応していますが、それ以外は、極力家具を買わないようにしています。

また、物が溢れてきたタイミングで、整理整頓は定期的に思いきって実施しています。

——本作には、部屋をどう使っているかも詳しく描いていますが、アベさんの仕事用スペースがないですよね。ご自宅でお仕事をする中で、決まった自分のスペースがなくても大丈夫なのでしょうか?

小さい頃も持ち家の頃も、自分のスペースを持っていたものの、私の今までの傾向として、自分のスペースがあれば散らかしてしまって、結果的に物がどんどん溜まっていくんです。

振り返れば、私はプライベートな自分のスペースがなくても大丈夫なタイプだったと気づき、賃貸へ引っ越すときに、私のスペースは極限まで小さくしました。

今はこたつテーブルで仕事をし、仕事が終わればワゴンラックにパソコンを片付けるようにしています。そのテーブルで家族でご飯も食べますし、子どもたちが宿題したりお絵描きしたりもします。寝るときは旅館のようにテーブルを寄せて布団を敷く形で、夜に仕事をしなきゃいけないときは、夫と子どもが寝ている横で作業をします。物を置きっぱなしにできないので、強制的に定期的に片付けられるんです。

持ち家が向いている人・賃貸が向いている人

——アベさんが住んでいた一軒家はお姉さんご夫婦が住むことになって、快適に暮らされているようですね。アベさんのご経験をふまえて、賃貸が向いている人と、持ち家が向いている人はそれぞれどんな人だと思いますか?

持ち家が向いているのは、維持管理が好きな人です。掃除や修繕、DIYなどを楽しめる人は向いていると思います。姉はガーデニングが好きですし、家の手入れも得意です。

物へのこだわりが強い人も一軒家向きだと思います。姉夫婦はコレクションが好きで、家は今物だらけです。猫が4匹いるので、猫が暮らしていくためのグッズと、そのためのスペースも必要になります。でも物の管理も得意なので、上手く整理整頓して暮らしているようです。

私たちは維持管理が苦手でしたし、大量の物を管理するのは苦手でした。それに今回の引っ越しを経て、物への執着が薄いことがわかりました。何かコレクションしているものはないですし、ないならないで生活できるタイプ。物が少なくても不便を感じずに暮らしていけるので、狭い賃貸でも心地よく住めるのだと思います。

『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』(KADOKAWA)
『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』(KADOKAWA)

【プロフィール】
アベナオミ

宮城県出身・在住。日本デザイナー芸術学院仙台校でイラストを学ぶ。イラスト担当著書に『マンガでわかる! 妊娠出産はじめてBOOK』『子どもを叱りつける親は失格ですか? 』『わたしの心と体を守る本 マンガでわかる! 性と体の大切なこと』『料理は妻の仕事ですか?』(すべてKADOKAWA)、『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』(学研プラス)など多数。東日本大震災を経験し、子育て世代の防災の大切さを伝える活動がライフワーク。2016年に防災士の資格を取得。2男1女の育児に毎日奮闘中。

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AUTHOR

雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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