【薬物中毒、母の死、事故による片脚切断…】ヨガに出会い「僕から自信を奪ったもの」を許せるまで

 【薬物中毒、母の死、事故による片脚切断…】ヨガに出会い「僕から自信を奪ったもの」を許せるまで
Robert Sturman
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問題児からチェンジメーカーへ

許しの心と家族の存在は、メディロスが少年時代のトラウマから回復するための柱になっている。彼は23歳の娘デスティニーを何より優先し、優しさと愛を惜しみなく注いでいる。デスティニーは父と一緒にプライド・パレードやブラック・ライブズ・マター抗議運動にも参加した。志を同じくする二人は政治的意見やアクティビストとしての思いを共有し、週末には、よくサンフランシスコのレストランを訪れたり、アウトドアを楽しんでいる。メディロスは彼の人生を変えるカギとなった寛容さと「欠点に縛られない」という価値観をデスティニーにも身に着けてほしいと願っている。

それほど遠くない昔、彼は家族に悪影響を及ぼす存在として見られていたが、今では周囲の人々の手本となるまでに成長した。「自分の立場や信念、価値観を堂々と見せる彼の姿に、自信と誇りを持って生きる勇気をもらいました」と、いとこのソフィア・デンジャーフィールドは言う。彼女は二人の娘が偏見を持たない人間に育つように彼が手を差し伸べてくれたことに感謝している。

「僕はいつも人から「私が知る限りあなたは最も公平な人だ」と言われる。それは、最も公平に扱われるべきなのに、そうされない人々、つまり有色人種や女性やLGBTQの人々に対して、という意味だ」と彼は言う。チェンジメーカーになるのは簡単ではない。でもくじけそうになると、ヨガの癒しの力が彼を後押ししてくれる。「僕は「イークァニミティ」という言葉が好きだ。混沌の中で心の平静を得るという意味なんだ」と彼は言う。

彼は他にも情熱をかきたてたり、心を穏やかにするものについて語ってくれた。警察と刑務所の改革、誰もができるヨガ練習、命に関わるケガからの回復など、その内容を紹介しよう。

Winni Wintermeyer
Winni Wintermeyer

ヨガとの出会い

18から22歳までの間、僕はまさに底辺にいた。何度も人生を変えようとしたけれど、問題にただ対処するだけで、その根底にあるものを見ていなかった。トラブルメーカーたちとの付き合いをやめ、定職につき、酒とパーティーをやめても、まだ怒り、傷ついていた。子どもの頃のトラウマに向き合っていなかったんだ。本好きな僕は、足繁く本屋に通い、やがて一冊のヨガ本に出会った。それまでヨガについては全く知らなかったけれど、読んでみたらすごく面白かった。そこで家で独学を始めた。難しかったけれど、ヨガの虜になった。元々僕は運動が好きで、以前は競技スポーツや空手を練習していたけれど、ヨガは全く違う挑戦だった。まず、長い間感覚が鈍っていたと気づいた。生きている実感がなかったんだ。でもヨガを練習するたびに体調がよくなるんだ。僕が取り組んでいる問題、特に最近の出来事と向き合っていると、肉体的に下半身やあご、肩などに影響が出てくる。ヨガを練習するとその緊張がゆるむんだ。必ずね。

許しの心

母の死は僕の人生に大きな影響を与えた。僕は自分の価値について考え始めた。僕も両親のようになる運命なんだろうか?と。 10代の頃は人生で何を選択し、何になりたいのかまだ思い描けなかった。母の死後、僕は手に負えない状況に陥った。

学校やスポーツへの興味もすべて失った。

ドラッグや酒に手を出し、地元のギャングとつるむようになった。まさにお先真っ暗という感じだった。22歳の時、疲れ果てた僕は心から変わりたいと思い、解決を求めて自分の内面を探り始めた。

すると、両親を許さなくてはならない、というメッセージが浮かんだんだ。

そこで僕は、二人を心から許した。その途端、自分が新しい人間に生まれ変わった気がした。過去が気にならなくなったんだ。両親がしたことや、しなかったことだけでなく、トラウマの原因となった人々や、母を殺した人間たちも許せたんだ。それまでの僕はものすごい怒りを抱えていて、それを問題行動で発散していた。でも許すと決めた途端に、怒りが完全に消えて、他のことに意識が向くようになったんだ。僕は次から次へと本を読み、自己啓発や、内省、自己発見の道に傾倒していった。人として、そして父親としての自分自身や自己成長の邪魔になるものはすべて脇に追いやることにした。家族との関係も取り戻した。若い頃はストリートが家族になっていた。ストリートでは、そこにいる仲間がすべてだと思うが、実際はそうではない。

いま僕は若者たちと話し、どんなに過ちを犯しても君たちは尊いんだと伝えている。過去の行為のせいで、自分にはまともな未来はないと僕らは考えてしまう。でも僕は過去に囚われないと決めたんだ。過ちを犯しても、自分には愛にあふれた人生を送る価値があるのだと。そのためには自分自身のことも許す必要があった。それから僕は、自分や他人の新たな面を見出しながら、今を自由に生きられるようになった。

Winni Wintermeyer
Winni Wintermeyer
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By Lindsay Tucker
Translation by Sachiko Matsunami

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ヨガジャーナルアメリカ版

ヨガジャーナルアメリカ版

全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。



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