「タバコをやめることに焦点を当てない」禁煙・節煙方法とは#やめられない理由

 「タバコをやめることに焦点を当てない」禁煙・節煙方法とは#やめられない理由
Getty Images
広告

CRA(コミュニティ強化アプローチ)とは

薬物依存へのアプローチにはいろいろなものがありますが、今回はCRA(コミュニティ強化アプローチ)を紹介したいと思います。これはオペラント強化アプローチを基礎とした認知行動療法で、オランダなどの国では保険診療として認められているエビデンスの高い薬物依存の治療法です。

このアプローチは薬物を減らすことそのものに直面化させるのではなく、薬物を使用していない時間や環境などを増やすような働きかけや環境調整に焦点を当てます。節煙や禁煙をしたい患者がいる場合、セラピスト(注)は患者の目標や環境に合わせてテーラーメードのプログラムをつくり、支援します。

CRAでは必ずしも全てやめてしまう(禁煙・禁酒・断薬)ことを念頭に置いておらず、患者が目標として望めば、減らして安全に使っていくという考え方があります。また、依存してきた物質は患者にとって良い面もある(あった)と捉えて治療していくため、当然どのようなポジティブな面があるかも見ていき、その効果を得るためにできる代替行動はないか?を患者さんと一緒に考えていきます。

CRAの実践手法の中には様々なツールがありますが、その一つに機能分析と呼ばれるものがあります。意識・無意識にかかわらず、物質(この場合はニコチン)を「摂取する前に自分がどのような状態になっているか」「摂取している際はどうか」「摂取後にはどんな(良い・悪い)結果が表れているか」を見ていくためのもので、そこからわかった強化子(強化刺激)を使って治療に活用します。

また、依存症治療の中では「スリップ」と呼ばれる、再発(再喫煙)への対応や防止策があります。CRAにおいてもスリップはありうるものとして認識されており、それをマネジメントする方法(「リラプスマネジメント」)を考え、仲間に喫煙を誘われた時の対応や、どうしようもなく吸いたくなった時にはどうすれば良いかなどについて、コミュニケーショントレーニングやロールプレイなどをしながら予め行動を検討していきます。

禁煙・節煙をしようとする際には、禁煙外来やカウンセリングをはじめ、いろいろなアプローチがあります。独力ではうまくいかないときにはぜひ試してみてください。

(注)現在日本にはCRAセラピストはいませんが、少しずつ増えていくことが見込まれています。また、CRAの認定ワークショップに参加した方や、書籍を読んだ方が自分の実践に活かすということができます。

ライター/佐藤彩有里
国家資格キャリアコンサルタント/バルーン・コンサルティング代表/高輪こころのクリニックカウンセラー/MBTI®認定ユーザー/龍村ヨガホリスティックヘルスコンサルタント/ASK依存症予防教育アドバイザー/A/CRA/FT ASIA事務局
企業での社内・社外相談や個人向けキャリアコンサルティングで多くの方の悩みに寄り添っており、嗜癖行動や依存に関するカウンセリング実績も多数。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

広告
  • 4
  • /
  • 4



RELATED関連記事