生きづらさは幼児期から始まっている?心理カウンセラーが教える、心理療法や自己肯定感との付き合い方

 生きづらさは幼児期から始まっている?心理カウンセラーが教える、心理療法や自己肯定感との付き合い方
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自己肯定感アップやポジティビティのブーム到来によって、反対に生きづらさやモヤモヤを抱えている方も少なくありません。この先、少しでも多くの方が楽に生きることができるように……『「自己肯定感低めの人」のための本』の著者であり心理カウンセラーの山根洋士さんに、心理療法の役立て方についてお話を伺いました。

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心理療法スキルは、自分を楽にするためのヒント

――「心理療法」という言葉を聞くと、難しく考えてしまい、ハードルが高いと構えてしまう方もいるかと思います。自己肯定感の低い人がより楽に生きるために、心理療法をどのように生活に取り入れたらいいのでしょうか。

山根先生:まず、日本では大人だけでなく、実は幼稚園生くらいの年齢から生きづらさを押し付けられる環境ができていることを知ってほしいです。

たとえば、幼稚園で喧嘩をした子がいたら、「喧嘩はしてはいけません」「人を嫌ってはいけません」などと叱られるでしょう。暴力はもちろんNGですが、言葉遣いや相手への伝え方に気をつければ、本来は人に意見すること自体は良い事のはずです。さらに、周囲にいる人間全員を好きになるなんてことは、実際は大人だって無理ですよね。しかし、人に意見をぶつけることを喧嘩と捉える大人のせいで、意見をぶつけること=いけない事だと教え込まれてしまう。嫌いという感情を持つことが悪とされてしまうのです。

そういった経験から、将来的に自分の気持ちに蓋をして生きづらさを抱えるようになってしまうこともあります。

――子どもの頃から自己肯定感を低くしてしまうトラップがあるとは……日本の教育にはまだまだ課題が隠れていそうですね。そんな環境の中でも、私たちがより楽に生きていくにはどうしたらいいのでしょうか。

山根先生:新型コロナウイルス感染症の影響で数々の制限があり、人々が監視し合うような雰囲気すらありますね。なにかと生きづらい世の中ではありますが、心理療法のスキルをうまく使うことで、誰でももっと毎日を楽しく生きることができると私は思います。

自己肯定感だけでなく、メンタルヘルスに関する書籍もたくさん出版されるようになりました。ですが、言葉や表面上の“イメージ”だけが浸透してしまって、実際に日々使える“スキル”はまだ数多く知られていないのが現状です。

たくさんある心理療法スキルのなかで、自分にあった対処方法や考え方を知っておいてほしい。そうすれば、さまざまな場面に遭遇したときに、自分で自分を助けることができる。

なにか悩んだり困ったりしたときは、あなたを助けてくれる心理療法のスキルが世の中にはたくさんあるんだよということを伝えたいですね。

「私は〇〇が好き!」という気持ちを見つけてほしい

――メンタルヘルスに関する情報がたくさん出回っているからこそ、その情報に振り回されている方も多いように感じます。

山根先生:世の中に出回っている情報がすべて悪いものというわけではありません。まずは、自分自身を知ることからはじめてみてください。本来なら、自分のからだと心の状態を一番見極めることできるのは自分自身のはずです。しかし、周囲の環境やプレッシャーから、その見極めができなくなっている人が多いのも事実。

冒頭の子供教育の話に戻りますが、本来、人と意見をぶつけ合うことは悪いことではありませんし、好き嫌いがあることも人間なら当たり前です。大切なのは、その気持ちを押さえつけることではなく、嫌いな人とも上手く距離を取って付き合っていく方法を知ること。そのスキルをたくさん知っていれば、結局は自分を楽にすることにつながっていきます。

極論ですが、みんながそれを出来るようになれば、この世から“イジメ”はなくなるはずだと私は思います。

――具体的に、みなさんが実践しやすい「情報をうまく選び取るためのポイント」などはありますか?

山根先生:すぐに実践できる簡単な方法をお伝えしましょう。それは、日用品を選ぶようなレベルでもいいので、私は絶対にこれがいい!と感じるものを見つけてみてください。

たとえば、「毎日使う洗剤はこのメーカーじゃなきゃ嫌だ」「コーヒーは絶対にこのお店の豆がいい!」といった感じに。たとえその好きという気持ちを否定されたとしても、気にならない思考を身につけてほしいのです。

こういった日々の選択や批判をスルーできるスキルを磨くことで、自己肯定感の低さをカバーして、楽しく生きることができるようになってきます。好きという気持ちや、自分が心地よいと感じるものを日常的に選ぶクセをつけてみましょう。この行動が、結果的に情報に振り回されない自分を作っていくことにもつながります。

スポーツ選手やヨガをやっている人は、こういった自分に対するセンサーが常に働いています。自分の心やからだに意識を向けることが得意な人が多いのです。これは誰でも磨くことができるものなので、ぜひ試してみてください。

――それでは最後に、生きづらさを感じている方へ山根先生からメッセージをお願い致します。

山根先生:無理に心理療法やメンタルヘルスに興味を持つことはありませんし、これらは強要されるものでもありません。ですが、心理療法のスキルを知っていればもっと楽になれるのに……と、歯痒さを感じることもあります。

誰でももっと人生を楽に生きることができるはずなのに、そうなるための方法を知っているかいないかで、とても大きな差が生まれてしまっている。

これは、心理療法に触れる機会が少しでも多くなってくれればという想いから、私が出版したきっかけでもあるのですが……みなさんがなにか困ったり悩んだりしたときは、助けてくれる心理療法が世の中にはたくさんあるということを、頭の片隅でいいので覚えておいてください。いままさに苦しんでいるという方は、楽になる方法を知らないだけです。

「あなたを楽にしてくれる数え切れないほどの手段が、世の中には存在している」ということを知ってもらえたら、カウンセラーとしてとても嬉しく思います。

●お話を伺ったのは…山根洋士さん

山根
山根洋士さん

これまで、8,000人以上の悩みを解決してきた心理カウンセラー。自身も両親の離婚、就職の失敗など人生の挫折を経験し、激務で身体を壊して入院生活を送るなか「なんのために生きるのか」を模索した結果、心の風邪薬のようなカウンセリングを提供したいという想いから、カウンセラーとなる。著書に『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)があるほか、YouTubetwitterでも発信。

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Text by Aya Iwamoto

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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