「アンチエイジングという重圧」若さもお金で買える時代に生きる"昭和生まれ・40代女性"の苦悩

 「アンチエイジングという重圧」若さもお金で買える時代に生きる"昭和生まれ・40代女性"の苦悩
Adobe Stock
井上敦子
井上敦子
2021-02-28

40代も半ばに差しかかった、ヨガ講師の筆者。同世代の友人に会うと必ずと言っていいほど話題にあがるのがアンチエイジングの話です。エステやサプリメント、ヨガや美容皮膚科、整形に至るまでアンチエイジングを望むのであれば様々な手段があります。もちろん、何も対策せずに自然に歳を重ねるという選択肢も。お金をかければある程度の『若さ』を手に入れられる時代って、恵まれている反面苦悩も多いものだと考えるようになりました。40代のリアルなアンチエイジング事情。それを探っていくと、幸せに歳を重ねるためにはどうしたらいいの?という問いに繋がる気がしています。

広告

「若さ」が重荷になることも

正直に言うと私は「アンチエイジング」に関して、40歳を過ぎたあたりからプレッシャーを感じるようになっていました。ヨガはアンチエイジングに良いとも言われるので、ヨガ講師である私が若々しくいなければならない…と勝手に思い込んでいたのです。ヨガクラスの中で「誰かと比べないで」と伝えながら、一方では外見に関しては思いきり他人の目を気にしている自分。そんな自分に違和感を持ちながらも、「あの先生老けているよね」とは思われるのはやっぱりイヤだったのです。

もともと外見を比較的気にする性格で美容好きということもあり、若さに対する執着が強く、その葛藤は自分との闘いレベル(笑)。迫りくる老いを自覚しながら、加齢との向き合い方を模索していたのです。どうしたら幸せに歳を重ねていけるのか?自分への問いかけが始まった時期でもありました。

アンチエイジング
2016年の調査によると、女性の4割近くが「アンチエイジング対策をしている」と回答。また、40代女性の約49%が「実年齢より5~10歳若く見られたい」と回答していました。(「アンチエイジングに関する意識調査」より、株式会社プラネット調べ) photo by Adobe Stock

美しい人ほど「40代が苦しい」?

先日、こんなお話を聞きました。独身40代半ばの美しい方が、自分のお給料のほとんどを美容代に使っているというお話です。その額は年々増えていって、月に数十万単位になることもあるから恐ろしい。でも、それは必要経費だとも感じるのです、と。

何かを失うとき、それが何であれ苦しみや寂しさが伴うのは当然のこと。そこに愛着や執着があればなおさらです。彼女の場合は、人から羨ましがられるような美しさを持っています。そしてその美しさが年齢と共に失われていくように感じる…。苦しいことです。でもそれが、自分の稼いだお金で買えるとしたら!私なら果たしてどうするかな…私は彼女と一緒にひとしきり考え込んでしまいました。人から羨ましがられるような容姿は幸せな人生をもたらしてくれるようにも思えますが、本人にとってその美しさが今の幸せの足かせになっているなんて…皮肉な話にも思えました。

アンチエイジングを選べる私たちの苦悩

考えてみれば老いを本格的に感じ始めた40代の私たちにとって、取り巻く環境はなかなかハードなものに思えます。「今の40代は若いよね!」と言われて嬉しいけれど、努力を求められている気がしてプレッシャーにもなる。一見するとアンチエイジングの選択肢が多くて、選べる幸せな時代にも見えるけれど、どう老いていくかを自分でコントロールできるなんて、実はすごい難問!ではいかと思うのです。

レーザーをあてたりボトックスを打ったりしないまでも、サプリメントを摂ったり、ヒップアップのエクササイズをしたり。アンチエイジングのために出来ることは山のようにあります。情報も溢れています。惜しまず努力をする?お金をかけてみる?それとも自然に任せてみる?…でも、どんな方法をとったらより幸せに歳を重ねていけるか?という問いへの答えは、そこにはないのです。

結局「幸せに歳を重ねる」ってどういうことなんだろう?

アンチエイジングのループにはまっていた少し前の自分を思い起こすと、実は不安の原因は別のところにあったのだということに最近気が付きました。それは、「これがあったら私は満たされる」という幻想にも似た考えです。

羨ましいから手に入れたい。失うのが怖いから保ちたい。そういった欲は本当にやっかいなものですが、アンチエイジングに限らず私たちが陥りやすい「満たされない病」なのではないでしょうか。欲しいものを得ても本質的には満たされないのだということに気が付くまで、その満たされない病は続いていきます。得たもの、持っているものは必ずいつか失うからです。失う不安がもっと何かを得なきゃ、という気持ちを掻き立ててしまうこともあるでしょう。若さは目に見えて失われていくから…よりやっかいですよね。

幸せに年齢を重ねるということは、内面の満足や幸せに目を向けられる豊かさを得ていくことなのかもしれません。物質や外見に左右されない、内面の充足感です。必ず失うもの。それに向き合っていくことが私たちの心を鍛え、豊かな方向に導いてくれているとしたら?歳を重ねることが幸せに近づくことになりそうですよね。そんなふうに考えるようにしたら、希望が持てるようになりました。

40代半ばの私、完全に熟れるまではまだ少し時間がありそうだから…それまでは心を鍛えながら熟れていく自分を楽しんでいけたらと思っています。そして必死にならずに(笑)、そこそこに楽しくアンチエイジングにも力を入れていきたいとも思っています。

シリーズ「#40代のリアル」では、ヨガ講師でご自身もプレ更年期真っ只中の井上敦子さんが感じた40代の心と体の変化を、リアルな言葉で綴ります。

ライター/井上敦子
20代前半、心身のバランスを崩していた時期にヨガに出会い、不眠症をヨガで克服した経験を持つ。30代半ばに勤めていた大手企業を退社し、ヨガ講師に転身。現在は、『眠りのヨガ』と呼ばれるヨガニードラを、古典的な手法に加え最先端の欧米の手法も深く学びながらクラスを展開している。15年間の会社員生活の経験から、現代人の抱えやすいストレスをリリースするクラスを得意とし、導者養成講座・コラム執筆・アプリ監修・海外リトリート主催など幅広く活動中。Instagram:@yoga_atsuko.inoue

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

広告



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

アンチエイジング