背骨のストレスを取り除こう|パーナヨガ創始者による7つのヨガポーズ

 背骨のストレスを取り除こう|パーナヨガ創始者による7つのヨガポーズ
Caveman Collective

「人生とはヨガである」。アーディル・パルキヴァラは、インドの霊的指導者、シュリ・オーロビンドの言葉を引いてこう言う。自分が生まれたのはヨガのおかげだと断言する人物にふさわしいセリフだ。半生をヨガの研究に捧げてきたパルキヴァラは、妻サヴィトリと一緒に、パーナヨガTMと呼ばれる全体観的治療法を確立。パーナとはサンスクリット語で、「欠けたところがない十全な状態」を意味する。今回パルキヴァラは、自らの驚くべき体験について語り、さらにヨガジャーナルのためにシークエンスを考案・指導してくれた。

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アーディル・パルキヴァラ氏のルーツとは

ヨガを初めて経験したのは、母の胎内にいた時でした。

7年間妊娠できなかった母は、ヨガに出会いました。そして、父と一緒にインドでB・K・S・アイアンガーから直にヨガを学びました。ヨガのおかげで私は生まれたのです。

私は幼少期に、両親がレッスンを受けているのを見ていました。アイアンガーは7歳未満の子どもにはレッスンを受けさせませんでした。人は7歳になって初めて心と体が結びつくというのです。1966年に受けた初めてのレッスンについては記憶もおぼろげですが、アイアンガーとは一生分の記憶があります。アイアンガーはやるべき仕事を厳しく課す人でした。世界で最も名の通ったヨガ指導者だったアイアンガーは、自分以外の人の指示には従う必要がありませんでした。

苦しみに耐えて鍛錬、得たものは

私はアイアンガーの最年少の生徒で、愛弟子のひとりに数えられるようになり、頑張ることを強いられました。それには良い面も悪い面もありました。良かったのは、それによって計り知れない自制心を得たことです。その一方で、度重なるけがに苦しみました。7歳でヨガを始めた当時、アイアンガーはパスチモッターナーサナ(座位の前屈)をしている私の背中に10分間も座っていたんですよ。あまりに痛くて、ずっと叫び声をあげていました。しかし、インドでは先生に「ノー」とは言いません。先生をとても尊敬するのです。ですから、私も痛みに耐えました。痛みに耐えたおかげで、強い性格になりました。今では人生の困難な状況にも落ち着いて対処できます。私はヨガの練習を続けました。

ヨガを教える立場に

そして、15歳の時、スクールの役員からヨガを教える話を持ちかけられました。伝統を重んじれば、弟子はうやうやしく師に許可を求める必要があります。ですから、私はグルジ(当時はグルジのことをアイアンガー叔父と呼んでいました)にたずねました。「私は教えてもよろしいでしょうか」。グルジは微笑みながら「よろしい、教えなさい」と答えました。ヨガを教え始めた時に、「ヨガを教えるのであれば、自分自身の体でヨガを究めることに真剣に取り組まなければならない」心の底から思いました。

私の練習は激しさを増していきました。1975年には、当時ボンベイでグルジからヨガを学んでいた私たち生徒が、ボンベイの近くのプーナにグルジの有名なヨガインスティテュートを設立するのにひと役買いました。グルジは私をインスティテュートに招いてくれました。私たちは、時には1日8時間練習しました。私はこの練習を通じて、持続する粘り強さと、衝撃を受け止める心を得ることができたと思います。

パーナヨガの目指すもの

私が10歳の時、私たち家族は縁あってインドの詩人であり、ヨギであり、哲学者であった偉大な精神的指導者のシュリ・オーロビンドを紹介していただいていました。

後に(独力で瞑想を究めた)妻のサヴィトリと一緒に自然療法と生活習慣の改善について研究を始めてからは、シュリ・オーロビンドのヨガに心酔するようになりました。また、家族が病気になったこともあって、アイアンガーヨガでは扱っていない栄養学の勉強も始めました。最終的に妻と私はパーナヨガを始めました。このヨガは、シュリ・オーロビンドの描いていた限りなく広がる理想の実現を目指すヨガです。

パーナヨガの特徴は

特定の症状を治すためのシークエンス

パーナヨガにはこのヨガ特有のものがいくつもあります。私は体(特に、腰、肩、背中上部)が求めているものを踏まえて、特定の症状を治すためのシークエンスを考案しました。1つのシークエンスを単独で行うこともできますし、いくつかのシークエンスをつなげて完結させることもできまアーサナは体の可能性を切り開きます。私たちを強く生き生きとさせて、人生を受け入れる覚悟を持たせます。

しかし、ヨガの本質は、その強さと活力をいかに使うかという点にあります。アーサナは体と心の問題に対する診断ツールでもあり、治療法でもあります。また、パーナヨガでは、古典的な太陽礼拝など、昔から行われてきたシークエンスも利用しますが、安全のためにアライメントを重視しています。私自身がアイアンガーヨガで幾度もけがをしたため、最高に安全なヨガの練習をつくることを目指しました。といっても、パーナヨガではけがをしないという意味ではありません。もっと正確に言えば、私たちは生理学や体への影響に慎重すぎるほど注意を払っています。

ハートフル瞑想

パーナヨガにしかないもうひとつの特徴は、ハートフル瞑想です。この瞑想は、私の妻がヨガと瞑想の達人たちから授かったものです。妻は瞑想を究めていて、体と人生に光と愛を注ぐ方法を生徒たちに指導しています。

また、パーナヨガでは、古代と現代の栄養学と生活習慣についても研究しています。

人生のあらゆることに意味があります。ただ、マットの上でストレッチをすることだけが重要なのではありません。マットの外にある人生のほうがずっと重要です。アーサナの狙いは、体の可能性を切り開くことにあります。アーサナは私たちを強く生き生きとさせて、人生を受けとめる覚悟を持たせます。

しかし、ヨガの本質は、その強さと活力をいかに使うかということにあります。他人を思いやり、地球に敬意を払う気持ちを持つことにあります。ヨガの本質は自らの法(ダーマ)に誠実に生きることにあるのです。

ヨガの本質は人生における行動と振舞い

シュリ・オーロビンドは「人生とはヨガである」という言葉を残しています。ヨガの本質は私たちが抱く考えであり、私たちが口にする言葉であり、私たちがとる行動だということを意味しています。ヨガの本質は、人生の一瞬一瞬に私たちがいかに存在し、いかに振る舞うかという点にあります。これがパーナヨガの力です。

今に意識を集中させましょう。今という瞬間に誠実に対処すれば、未来は未来でなんとかなります。ヨガはもういい加減、自己中心的なアーサナの練習から離れて、生きていくうえでの全体観的なシステムのほうに向かってもいいでしょう。パーナヨガはきわめて現実的です。恐れをなして逃げてしまう人もいますが、それは、内省と変化を求められるからです。一方、人生からもっと多くのものを得たいと思っている人は、この素晴らしいシステムに夢中になります。

パーナヨガに挑戦してみよう

パーナヨガの共同創立者、アーディル・パルキヴァラが、体と心を同調させるのに役立つポーズを指導する。

パーナヨガの4つの柱のひとつは、安全性とアライメントに基づくアーサナだ。このポーズを学ぶという第一段階は、のちにヨガを深めたときに到来するものに備えて体と心を訓練する方法となっている。つまり、誠実な心、謙虚さ、洞察力、高潔さ、安らかな人生を迎えるための準備なのだ。アーサナは、マットを下りたときにどう生きるべきか教えてくれる。アーサナの本質は、体の可能性を切り開き、体を強く生き生きとさせ、人生を受け入れる覚悟を持たせることにある。

パーナヨガの様式に則ってアーサナの練習を行う。背骨のストレスを取り除くように考えられているこの短いシークエンスを進めながら、体と心と感情に何が現れてくるか観察しよう。どんなことが気持ちよく感じられ、どんなことに調整が必要と感じられるのか、自分の直感を信じて感じ取ってみよう(立位のポーズ、ねじりのポーズ、後屈のポーズなど、各分野1つのポーズから構成)。このシークエンスは毎日単独で練習してもいいし、もっと長いシークエンスに加えて練習してもいい。そして、シークエンスの最後にハートフル瞑想を行って、魂に通じる扉を開こう。

1 ターダーサナ(山のポーズ)

両足で立ち、指の付け根を床に押し下げることによって、足全体、足の外側、かかとを活性化させる。土踏まずを引き上げる。大腿四頭筋を引き締める。大腿骨の最上部を後方に押して、大転子(大腿骨上部の突起)が足首の真上にくるようにする。腹部の底を引き上げて、横隔膜を柔らかく広い状態に保つ。肩甲骨を下ろし、腎臓を前方上部に引き上げる。9回呼吸する間この姿勢を保つ。このポーズは心身のバランスの悪さを浮き彫りにし、安定をもたらす。

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photo by Caveman Collective

2 胸部を開くポーズ

ブロックを2つ並べた上に、スリーミニッツエッグ(たまご型のヨガブロック)を2つのせる。「エッグ」の頂点が、第5胸椎(肩甲骨の中央に位置する)に当たるように仰向けになる。両腕を頭上に伸ばし、手のひらを合わせる。首をゆるめて頭を床のほうに下げる。息を吐きながら大腿骨を床に押し下げ、横隔膜を解放する。息を吸い、横隔膜を柔らかく保ちながら手を下げていく。深く9回呼吸する間この姿勢を保つ。次に、頭の後ろに手を当てて、頭を3回上げ下げする。このポーズは背中上部に活力をもたらし、肺と横隔膜の緊張を取り除く働きをする。

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3 ブジャンガーサナ(コブラのポーズ)

うつ伏せになり、足を腰幅に開く。手を肩の下におく。足の小指を床に強く押し下げて(脚を内旋させ)、臀部を引き締めながら、膝頭を床に向ける。肩甲骨を腎臓のほうに下げる。息を吸いながら、両手を押し下げて、胸部を引き上げる。アイソメトリックの要領で(実際には筋肉の長さを変えずに)手を足のほうに引いて、腎臓、仙骨、背骨を引き上げ、胸部を開く。9回呼吸する間この姿勢を保つ。息を吐きながら、手を足のほうに引き続け、背骨を伸ばしながら上体を床に下ろす。このポーズは、背骨の硬いところを浮き彫りにし、はつらつとしたエネルギーと柔軟性を取り戻すのを助ける。

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4 スプタパダングシュターサナ(横たわった足の親指をつかむポーズ)

再び脚を伸ばして仰向けになる。右膝を曲げ、右手の人差し指と中指で右足の親指をくるむ。息を吐きながら、右膝を伸ばす。両脚の大腿四頭筋を引き締めて、かかとを押し出す。次に、右腰の外側を頭から離すように押して、左太腿の内側を床のほうに回転させる。右脚のハムストリングを伸ばしながら、右肩を引き下ろす。9回呼吸する間この姿勢を保つ。息を吸いながら、右足の親指から手を離し、右脚を左脚の横に下ろす。痛みを感じる場合は、右かかとにベルトをかけてみよう。反対側も同様に行う。このポーズを定期的に行うと、腰と脚にある緊張が浮き彫りになる。

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5 体を吊り下げた背骨の牽引

ループ状の丈夫なベルトをドアの枠にしっかり固定し、太腿の付け根に当てる。ベルトに体を預けて、膝を曲げながら、手を床に下ろす。ベルトに体重をかけて、足が腰のすぐ下の高さにくるまで、壁面を歩かせる。肘をつかむ。ここで深い呼吸を数回行う。息を吐きながら、背骨を床のほうに伸ばし、背中の緊張を取り除く。ポーズを終えるには、両手を床に下ろし、足を床に向かって壁面を歩かせる。膝を曲げ、両手の親指をベルトの間に入れる。ベルトを下げて立ち上がる。次に、体に安定感が得られるまで、壁に寄りかかる。このポーズは背骨と神経系から重力による緊張を取り除く働きをする。

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6 仰向けの呼吸法

ボルスター(またはブランケット)の上に仰向けになる。臀部がボルスターより5~6cm前に出るようにして、腎臓より上の部分をボルスターで支える。この配置を正確に行うと、横隔膜が解放されて呼吸がしやすくなる。頭の下にブランケットを1、2枚敷いて、額を胸部とハートチャクラのほうに傾ける。手のひらを天井に向ける。吸う息では、雲間から日が差してくるように、息を胸郭の中央から全方向に(三次元的に)広げていく。吐く息では、胸郭の中央に息を戻す。胸腔全体に意識を向け続けよう。この呼吸を10分間続ける。このポーズは、神経系の緊張を浮き彫りにする。練習を続けることによってその緊張を取り除くことができる。

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7 ハートフル瞑想:ハートチャクラのマッサージ

楽な姿勢で座る。両手の中指を脇の下の前の部分に当て、そこから胸の中央に向かって水平に移動させる。その場所で右手の中指を胸に当て、左手は手のひらを上にして膝の上に下ろす。胸骨に敏感な部分と、少しギザギザを感じるだろう。そこにハートチャクラ、つまり魂への扉が存在する。目を閉じ、右手の中指で胸部をマッサージして、深い愛を感じ、人生、自分自身、大切な人、美しい状況などに感謝しよう。心の中心の奥深いところに光を思い描こう。

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心を目覚めさせよう

ハートフル瞑想を約5分間行ったら、丁寧に右手を離して、手の甲を右膝にのせる。微笑みながらゆっくり目を開ける。この瞑想を終えると、体と心と気持ちが一新したように感じられる。この新しいバランス感覚をもって、世界をこれまで感じていたよりも良い場所にすると決意しよう。私たち一人ひとりが、もっと愛情あふれる世界をつくっていく必要があるし、実際これからつくっていくのだ。

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model by Aadil Parkhivala
translatated by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.58掲載



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