更年期に多い「巻き爪」大きめの靴でごまかすのは危険!痛みや腫れが治まる爪切り治療とは?医師が解説

 更年期に多い「巻き爪」大きめの靴でごまかすのは危険!痛みや腫れが治まる爪切り治療とは?医師が解説
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増田美加
増田美加
2024-09-14

“健やかで美しい体と心”を手に入れるための最新情報を女性医療ジャーナリストの増田美加がお届けします。 爪が変形して素足が恥ずかしい、サンダルが履けないなど、足の爪の変形によるトラブルの多くは、更年期以降の女性です。爪の変形が起こる理由と爪変形を防ぐ方法、治療法について、爪治療の第一人者である皮膚科医の齋藤昌孝先生を取材しました。

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放置するとひざ痛、腰痛のリスクにも!

爪が皮膚に食い込んで痛みがあるなど、爪のトラブルは、爪だけの問題ではありません。歩くのがつらくなったり、ひざ痛や腰痛などの問題も生じてきます。爪に変形を起こすトラブルとして代表的なものが、巻き爪です。

「巻き爪とは、爪の端が内側に巻き込んで変形することです。巻き爪になっている爪の縁は、周りの皮膚を傷つけやすく、細菌感染が重なって炎症を起こしやすくなります。爪の先端が周囲の皮膚に刺さって、炎症を起こした状態を“陥入爪(かんにゅうそう)”と言います。陥入爪は、巻き爪があると起こりやすいですが、巻き爪がなくても起こります。つまり、爪周囲が痛くても、必ずしも巻き爪とは限りません。また、巻き爪だけで痛みがなく、特に気にならなければ、治療の必要はないのです」と齋藤昌孝先生。

足の爪が痛い=巻き爪ではありません!

巻き爪になったことで起こるトラブルには、さまざまあります。

①爪の縁が周りの皮膚を傷つけて痛みを起こす。

②巻き爪で爪の中央が高くなるため、靴を履くと圧迫され、痛みが強く、歩きづらくなる。

③ひどくなると、自分で足の爪が切りにくくなることも。

「巻いている爪をうまく切れず、間違った切り方を繰り返していると、陥入爪に発展してしまうことがあります。更年期以降の女性は、陥入爪と巻き爪を併発することも多く、そうなると炎症による腫れや赤み、痛みがより強くなります」(齋藤先生)。

巻き爪が起こる理由にはさまざまありますが、おもな原因は、若いときに足に合わない靴を履いたことです。合わない靴を履いていると、爪が横から強く圧迫されることがあります。また、歩く量が少なかったり、足の指に重心がかからない歩き方をしていたりなどで、足の指が地面から受ける力が弱いことでも、爪の端が内側に向かって巻いていきます。

「巻き爪は爪だけの問題ではありません。外反母趾などの足指や脚のさまざまな関節の変形の結果として、巻き爪が起こります。変形は、年齢と共に加速します。一度、巻き爪になってしまうと、残念ながら元に戻ることはありません。爪が薄く柔らかい子ども時代に、正しい靴を履くことが将来の足のために非常に重要です」(齋藤先生)。

爪のトラブルは、骨格の変形や皮膚の病気とも関係し、足指の痛みを我慢していると、歩き方のバランスが悪くなり、ひざ痛や腰痛を招きます。転倒リスクも上がります。人生100年時代、早めに適切な対処をすることが大切です。特に、糖尿病などの病気を持つ人は、たかが爪と侮らず、慎重に対処しましょう。

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巻き爪と陥入爪の違いは? 

足の爪に変形や痛みを起こしている場合は、巻き爪か、陥入爪かの可能性があります。どちらなのか、見極めポイントを紹介します。

①爪は巻いているが、痛みがない場合は、巻き爪の可能性が高いです。変形が強く、靴を履いて当たる、見た目が気になる場合には、矯正治療を検討してもいいでしょう。しかし、そうでなければ治療の必要はありません。

②爪が巻いていて、痛みがあるが、皮膚に刺さっていない場合も、巻き爪だけの可能性が高いです。この場合は、痛みを取り除くために何らかの処置や治療が必要です。

③爪が巻いて皮膚に刺さり、腫れと痛み、赤みや出血がある場合は、巻き爪と陥入爪の両方が生じている可能性が高いです。爪が皮膚に食い込むことで痛みなどの原因になっているので、爪を切るなどの処置が必要です。

④爪は巻いていないが、皮膚に爪が刺さっていて、腫れと痛みがある場合は、陥入爪の状態です。間違った爪の切り方によって、爪が皮膚に刺さっている可能性があります。このような場合も③と同様に、爪を切るなどの処置が必要になります。

痛みや腫れは、爪切り処置だけで劇的に痛みが改善!

爪は皮膚の一部。爪の周りの痛みや腫れ、爪の変形によって生活に支障がある場合、受診するのは、皮膚科が専門です。爪の診断、痛みや腫れの原因を正しく診察してもらうことが大切です。

「巻き爪であっても、痛みがなく、生活に支障がなければ、治療する必要はありません。ただし、巻き爪で爪がうまく切れず、深爪などをしてしまうと、痛みを伴う陥入爪になってしまいます。痛みや腫れを伴う巻き爪や陥入爪は、治療を早めに行うことをお勧めします。私たち、爪の診療に慣れた皮膚科医なら、爪切り処置で劇的に痛みが改善します。これは技術とコツがいるので、ご自身ではできず、専門医を受診してください」(齋藤先生)

爪の両端が内側に巻き込んだ巻き爪に対しては、器具を用いた矯正治療もあります。矯正治療はいずれも自由診療のため、医療機関によって費用が異なります。齋藤先生のクリニックでは、爪切り処置が5千円~1万円、矯正器具取りつけで約1万5千円、爪治療用ゲル剤を併用すると約2万円。約1~2か月に1回通院し、爪切り処置や矯正器具の交換、調整を行います。市販グッズもありますが、巻き爪かどうかの検査や診断が大切なので、できるだけ皮膚科を受診して、相談することが望ましいです。

皮膚科やフットケア外来では、次のような治療が行われています。

・クリップを用いた矯正治療(症状が軽い場合、クリップで爪を平坦にする)
・ワイヤーを用いた矯正治療(金属のワイヤーで巻き爪を矯正する)
・プレートを用いた矯正治療(爪表面に樹脂や金属のプレートを貼る)
・ガター法(炎症を伴う場合、皮膚と爪の間にチューブを差し込んで炎症を和らげる)
・爪の部分切除(局所麻酔で食い込んでいる爪を部分的に切除し、痛みを改善させる
・手術治療(現在あまり行われていません)

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爪の矯正治療だけでは再発しやすい! 大事なのは靴

また、巻き爪になってしまう背景には、間違った爪の切り方や合わない靴、運動不足など、生活習慣に問題があることが多いのです。ですから、たとえ巻き爪の矯正治療をしても、生活習慣を改善しないと、再発しやすいと言われています。巻き爪を治療する場合、矯正治療を行って痛みを和らげながら、同時に足にピッタリ合った靴を履くことが重要です。大きめの靴をはいてごまかすのは、かえって症状を進行させる危険があります。靴は、爪や指先に負担がかからず、甲が固定されて、動かないものを選びます。巻き爪になりやすい生活習慣を改善していくことは、陥入爪の予防にもなります。現在、巻き爪に対する手術は一般的ではなく、ほとんど行われていません

更年期以降の女性は、巻き爪+陥入爪の両方を併発している場合が多いです。巻き爪であっても痛くない場合は、陥入爪を予防するための対策が大事。予防のためには、いずれにしても、正しい靴を履くことです。巻き爪で行われている矯正治療は、永久的に巻き爪を治すものではありません。矯正治療をやめてしばらく経つと、徐々に巻き爪に戻っていき、再び治療が必要になってしまいます。予防とケアを日々の生活に取り入れながら、悪化したらまた行うというように巻き爪とうまくつき合っていきましょう。

巻き爪の矯正治療を行なう全国の医療機関は「巻き爪専門メディア」を参考に。

お話を伺ったのは…齋藤昌孝 (さいとうまさたか)先生

麻布台クリニック院長
慶應義塾大学医学部卒業。皮膚科専門医。医学博士。慶應義塾大学医学部皮膚科を経て、米国エモリー大学留学、慶應義塾大学医学部皮膚科専任講師ほかを経て2023年、現職。慶應義塾大学病院でも爪外来を担当するなど、爪疾患の専門家として、爪の処置や爪治療全般の第一人者。『足爪治療マスターBOOK』共同編集(全日本病院出版会)

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取材・文/増田美加 女性医療ジャーナリスト

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増田美加

増田美加

増田美加・女性医療ジャーナリスト。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。 もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択 | 増田美加 |本 | 通販 | Amazon



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