好きな場所に住むと、暮らしと人生が豊かに【連載|京都で見つけた幸せの秘密 vol.3】

 好きな場所に住むと、暮らしと人生が豊かに【連載|京都で見つけた幸せの秘密 vol.3】
Saya
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2024-05-10

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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感覚を信頼して、好きな場所に住むと、暮らしと人生が豊かに

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「移住に当たって、なぜ京都を選んだのか」と聞かれることも多いのですが、理由はひとつとは言えない、感覚的なものです。占星天文暦とノートパソコンさえあれば、どこにでも住める。そんなありがたい身分のうちに、さまざまなライフスタイルを体験してみたいというのがもっとも大きなモチベーション。沖縄のビーチが好きで、那覇の暮らしも5年経験し、弾みがついていた気もします。

個人的には長野県の八ヶ岳も気になっていました。子どもの頃から八ヶ岳・東麓で夏を過ごしていたので、山の暮らしに憧れがあったのです。とは言え、車の運転ができないことで那覇でも不便を感じていましたし、八ヶ岳の冬の寒さに耐えられそうもないなど、現実的なハードルがありました。夫婦ともに学生時代を東京で過ごし、そのうえで、沖縄で出会っているので、東京と沖縄の価値観は共有している。それぞれに刺激はありつつも違う極性をもつ、特徴的なカルチャーのふたつの都市を経験したあとで、国内でどこに住みたいだろうと考えたとき、なんとなく歴史のある京都が浮かんだというのが一番近いかもしれません。

また潜在的な理由としては、2007年頃から、「ご先祖さま探し」をライフワークにしているのですが、母方は、近畿や東海エリアに縁のある家系だとわかったのも大きいと思います。室町、戦国、江戸と各時代を通じて、先祖の誰かしらが京都にいたようで、わたしにとっては、遺伝子に呼ばれるような感覚もあったわけです。

そんなこんなで、2016年の2月、京都に下見に来たのですが、西日本におけるもうひとつの候補として、神戸も視野に入れ、神戸にも滞在しました。「神戸試住」というプロジェクトに参加し、「神戸R不動産」の方などにもお話を聞いたものです(神戸市は、移住促進に熱心ですし、「神戸R不動産」は、シェアハウスなども運営しているので、興味のある方はのぞいてみるのをおすすめします)。

神戸も楽しかったのですが、その後、やってきた京都で、夫婦揃って、賀茂川の北大路橋あたりの眺めにひと目ぼれ。京都の中心部を流れる鴨川は、出町柳駅にある三角デルタで、賀茂川と高野川に分かれるのですが、河川敷が鴨川公園として整備されています。とくに、御所のある丸太町から柊野くらいまでは広々としていて、散歩をしたり、ランニングしたり、お茶を飲んだり、楽器を弾いたり。市民の誰もが思い思いに過ごしています。

タイミングよく、北大路橋のたもとに貸家が出てきて、そこを借りることに。京都暮らしの初めの2年間を過ごすことになりました。バス停で言うと、「植物園前」です。貸家は古く、表面はリノベーションされていても、断熱材もろくろく入っていないような有様で、沖縄に住んでいた身としては、外と変わらないくらい寒い。住み心地はイマイチだったのですが、徒歩数分で府立植物園と賀茂川に出られる暮らしは、東京を出る直前、渋谷に住んでいた頃には想像もできないほど豊かに感じられました。

春から夏にかけては早朝に賀茂川沿いを歩いたり、植物園で花見をしたり、自転車で出かけて、ベーグルを買ってきて、ピクニックをしたり。植物園にはバラ園があり、バラの季節も楽しいですし、木々が色づき始めてからもヨーロッパの公園みたい。執筆の合間の気分転換によく散歩をしていました。今ではすっかり有名店になった賀茂川ピクニックもできる隠れ家カフェ、『WIFE AND HUSBAND』も、わたしたちが移住した前年のオープン。ふらりと立ち寄って、オーナーのおふたりとおしゃべりさせていただいたものです。

東京でももちろん、西荻窪や中目黒といった、お気に入りの町に住んだりしていたのですが、でも、大前提は、「雑誌編集という好きな仕事をするための東京暮らし」でした。仕事よりも暮らしを優先させて実現した、「好きな場所、好きな環境に住む豊かさ」を実感したのが京都での初めの2年間だったのです。

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文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram    @satoko.nog

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アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。



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