買い物を通じて”きっかけ”を創出。循環型ビジネスのカギとなる本質性とは/銅冶勇人氏に聞いた

 買い物を通じて”きっかけ”を創出。循環型ビジネスのカギとなる本質性とは/銅冶勇人氏に聞いた
CLOUDY代表・銅冶勇人さん

地球上にはさまざまな社会課題が存在します。たとえば、SDGsの目標が17項目にわかれていることからもそれがわかるでしょう。サスティナビリティやソーシャルアクションといった言葉を見聞きする頻度も増えているのではないでしょうか。と同時に「なんだかむずかしそう」そんな声が聞こえてきそうです。たしかに「世界単位」「地球規模」ととらえると、それはもう壮大な話。でも実は…もっと身近で個人単位のアクションに紐づいていることがたくさんあります。その1つは「買い物」というアクション。何を買うかというわたしたちの日々の選択は、その先の未来に通じています。ソーシャルアクションの本質と、実践のヒントとは。

広告

パッと目が覚めるような鮮やかな色と、クールなデザインのテキスタイル。アフリカの民族柄や伝統の織の技術を用いたプロダクトを通して、アフリカの貧困・教育問題の解決に取り組むファッションブランド「CLOUDY」(クラウディ)

代表の銅冶勇人さんは、外資系証券会社在職中にNPO法人を立ち上げアフリカ支援をスタート。当初は「学校教育の機会創出」が目的でしたが、教育以上に「雇用」が必要だと痛感、雇用を生むスキームを考え、退職後「CLOUDY」を創設。現在はその収益の一部を現地での雇用の創出や教育に活用還元するという循環型ビジネスを確立させています。言語も文化も異なる遠い国アフリカにおいてゼロからイチを作り上げ、持続可能なビジネスにとして進み挑み続ける銅冶さんに、その原動力やソーシャルビジネスにおいて必要な視点など話を伺いました。

「問題を解決する」ということが「特別なこと」になってはいけない

CLOUDY
CLOUDY

――日本においてもSDGsの認知度や取組が拡大していますね。ソーシャルビジネスの先駆者的存在である銅冶さんは、昨今のSDGsの風潮をどのようにとらえていますか?

「SDGs」という言葉は賛否両論あると思っていて、積極的に言葉を使うことを推奨していません。この言葉をきっかけに生活の中で考えることや向き合う人が増えたことは、いいことだと思っています。しかしいいことばかりではなく、負の産物のようなものも生まれてしまっているように感じています。SDGsを謳った本質のないビジネスや本質のないアクションが増え、言葉だけがひとり歩きし、日本中をとりまくような状況になっているのでは、という印象が強いです。

――確かに、ソーシャルアクションの第一歩は、「知る」ことであり、日本でもSDGsの広がりによって「知る」ことは拡大しつつあるように感じます。しかし、そこに自分との接点が見出せないとその先のアクションには至りづらいのでは…とも思えます。もっとアクションを拡大するには?

「きっかけ」は非常に大事です。でも、もっと大事なのは、「自分事」として考えられるかどうか。誰かに「させられている」とか、なんとなく「誰かのためになってるでしょ」というような他人事でいると、どうしても続かないものです。

だから、CLOUDYとしては「買い物を通じて、どういうふうにきっかけを得てもらうか?」ということを大事にしています。私たちはアフリカをベースに展開はしているけれど、「CLOUDYを買う=アフリカのためになる」ということを目的にしているわけではないんです。CLOUDYのプロダクトを通して、消費者に対して、どう自分事として捉えてもらうか。例えば消費者自身の人生や生き方、ここから先の未来に対してどう変化させていけるかどうか。そのきっかけづくりを、買い物を通じて提供したいという思いがあります。

多くの人が、「きっかけ」を特別視していると思うんです。僕の人生においても「きっかけ」があったからこそ、今の自分があります。そのきっかけは誰にでもあるんです。違ってくるのは、きっかけに気付けるかどうか、触れるかどうか。それだけです。毎日触れているインターネットひとつとってもそう。その中でどんな情報を得て、何に触れるか、そこにチャンスがあるわけです。いつもすぐそこに何かしらの材料がある、そんな人生を誰もが送っているということを、忘れて欲しくないですね。だけど、多くの人は、固定観念だけで選択を狭めている傾向が強いと感じます。たとえば就職活動なら「自分に向いているかどうか」「将来性があるか」「働きやすいか」……実際はそこで働いてみないと何ひとつわからないのに、それまでの自分が体験したことだけで判断して、人生の可能性を狭めてしまっている人が多いんじゃないか?と。それが「きっかけ」を逃しているとも思えます。だから、いろんなことに興味を持ちながら突き進んでいくことが大事なのではと思います。

――店頭や商品で途上国のイメージなどのアピールはせず、「かわいい」「ほしい」と買い物を楽しむことを通じて間接的に社会課題に貢献できている…衣食住の選択肢の中でそうしたアクションを叶えてくれるCLOUDYは理想的なブランドに思えます。こうしたブランドがもっと増えていくためにはどんな視点が必要でしょうか?

企業にとって、社会に対してインパクトを出していくということは当たり前のことだと思っています。「問題を解決する」ということが「特別なこと」になってはいけないと思う。各企業ひとつひとつが大きいことを成し遂げるのは難しいかもしれませんが、企業の使命として「何かをしなきゃいけない」「こうなってかなきゃいけない」、そういった意識が特別なことではなく、当たり前になっていくことが大事なのではと思います。

僕も、「アフリカの人のために偉いですね」といったことを言われることがあります。しかし僕は、自分の喜びのためにこの仕事をやっています。そのフィールドがたまたま「アフリカ」で、誰かのためになっているだけ。おいしいパンを作っている人も、そのパンを食べてくれる誰かの喜びのために作っているでしょ?それと同じです。僕のしていることは、決して特別なことではなく、パンを作ることと変わらないと思うんです。

CLOUDY
CLOUDY

――ビジネスとして軌道に乗るまでの様々な苦難を乗り越える支えとなったモチベーションはなんでしょうか?

アフリカ支援を考えるきっかけとなったのは、大学の卒業旅行で初めて行ったアフリカでの体験。スラム街の衝撃的な光景や触れ合った人たちが抱えている問題を知った時に、自分の中で「人生をかけて向き合いたい」という覚悟に出会い、いまがあります。しかし、確固たる決意のもと突き進むなかで、大きなギャップに直面しました。それは、アフリカ支援に携わる団体や企業の多くが、本質からかけ離れたアクションになってしまっているという現実でした。世の中で良しとされているアクションが、実は現地にとってプラスになっていなかったり、表面的なものになっていたり……。

「現地にとって本当に必要なものは何だろう?」「ビジネスを進めていく上で、一番大事にしないといけないものは?」突き詰めていくうち、僕の中で「一つ一つが現地の人に直結すること」という考えに至りました。現地の人の顔が見えているからこその答えだったと思いますが、僕が関わっている現地の人たちの人生を、少しずつ良いものにシフトできていること。それがモチベーションの核になっています。そして今は、CLOUDYに関わる全ての人に、この思いを一緒に感じてもらえる環境をつくっていきたい。それが僕のモチベーションです。

――2005年ブランド創業から7年。ご自身にとって「CLOUDY」はどんな存在でしょうか?

CLOUDYというブランドがあるからこそ、たくさんの人と繋がることができています。現地のワーカーをはじめ、日本にも取り巻く人が日本にもたくさんいる。CLOUDYというブランド名には「みんな同じ雲の下」というメッセージがあります。世界中みんな空を見上げれば必ず雲がある。その下にいる人間というのは、みんなそれぞれに人権があり、何かをしたいと思う権利がある。そういうことをお互い支え合う中で、何かができていく。過度に意識しなくても生活の中でそういうものは溢れている。感謝を忘れがちだけど、ある意味、CLOUDYは「つながり」であり、自分を改めるきっかけにもなっているなと思います。

CLOUDY
CLOUDY

――消費者にとってはどんな存在であってほしいと思いますか?

まずはシンプルに、みんなにとって好きなブランドになりたいなと思います。プロダクトもそうだし、生活の中でCLOUDYを持ってくれることで高揚したり、あるいはステータスになったり、自信になったり……誰かのために動けている喜び、そんなきっかけを提供できるブランドになればいいなと思っています。

――銅冶さんのように「ゼロ→イチ」を作り上げ、循環型ビジネスを構築することは容易なことではありません。これからアクションしたい人に向けて、アドバイスをお願いします。

ぜひたくさん失敗をしてほしい!日本人は頭でっかちというか、成功例だけを追いかける傾向がありますね。実際は簡単に成功することなんて、ないんですよ。とにかく「やってみる」「行動してみる」ということが大事。あとはそのビジネスのフィールドにおいて「本質をどう捉えられるか」ということですね。ソーシャルビジネスは、大義名分ばかりが前に出過ぎてしまいがちです。「やっていること」だけに満足してしまって、数字につながらないことが多いようです。僕は、ソーシャルビジネスが持続可能であるためには「数字」が全てだと考えています。数字が作れないと、せっかく素晴らしいことをしていても、継続は難しい。きちんと「数字」を作れるかどうか。「本質と数字」、この2点にこだわり続けることが、圧倒的にソーシャルビジネスには大切なことだと思います。

一方的な支援や形だけの援助、一過性のビジネスに陥らず、現地のニーズや本質を見据え「幸せの連鎖」を持続的に作り出しているCLOUDY。もはや支援の域にとどまらず、現地の人のモチベーションや誇り・希望創出をも叶えているのではないでしょうか。

「買い物」という日々の個人のアクションからつながる未来。あなたは今日、何を買いますか?

Information

10月31日(月)まで、表参道ヒルズでPOP UPを開催中。冬の定番、エコファーバッグシリーズが新しいカラーやタイプを揃えて今年も登場します。CLOUDY商品を実際にご覧いただける貴重な機会です。

日程: 10月21日(金)~10月31日(月)
場所:表参道ヒルズ 西館1階 GALLERY KOWA
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目12-10
営業時間:12:00-19:00
※最終日17:00終了予定

広告

Text by Shoko Hoshino

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

CLOUDY
CLOUDY
CLOUDY