性交痛を慢性化させないために|性交痛の専門医に学ぶ、更年期女性のためのデリケートゾーンケア

 性交痛を慢性化させないために|性交痛の専門医に学ぶ、更年期女性のためのデリケートゾーンケア
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更年期障害にはさまざまな症状があらわれますが、性交痛もそのうちの一つ。40代より上は性に対してオープンに発信する世代ではなく、更年期の症状やセックスの痛みも我慢してきた世代です。セクシャルウェルネスを語るとき、なくてはならないのが女性としてのセックスの楽しみ方。更年期以降に多いセックス時に生じる性交痛の対症療法について、富永ペインクリニック院長・麻酔科医 富永喜代医師にお話をうかがいました。

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性交痛の対症療法はマッサージや気持ちの切り替え

性交痛は慢性痛になりやすく、脳が痛みを覚えてしまうとすれば、どのような対症療法があるのでしょうか。

「更年期の性交痛には保湿とマッサージによる血流改善が有効です。セルフケアでデリケートゾーンを保湿してマッサージで血流をよくする、運動療法に似たようなものですね。当院で処方しているのは女性ホルモンのエストラジオールが入ったオイルです(Dr.ESTRAゴールドエッセンス)。更年期障害は女性ホルモンの減少が原因です。デリケートゾーンには、このオイルで女性ホルモンの有用成分エストラジオールを塗布します。

乾燥だけでなく、更年期の症状にはデリケートゾーンのにおいが気になる場合もあります。これは、エストラジオールの作用で上皮に作られていたグリコーゲンを餌としていた善玉菌である乳酸菌(デーデルライン桿菌)が減るために、においが起こります。乳酸菌の入ったジェル(エストラジェル)も併用して、リンパの流れを考慮した太ももから下腹部、鼠径部を中心に考えたマッサージを行います」

マッサージの方法は、富永ペインクリニックのホームページや富永医師のYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』で視聴することができます。

リンパの流れも考慮されたマッサージ方法を実践しながら、エストラジオールを含むDr.ESTRAゴールドラベルでマッサージして、エストラジオールを補給してみてはいかがでしょうか?富永医師がオイルやジェル、マッサージ方法の開発など、更年期の性交痛のケアに力を入れるのには、女性としての自信を取り戻してほしいという思いがありました。

「更年期の『更』は『変える』という意味ですよね。更年期だから女は終わりとか卒業とか、そんなことはありません。更年期というのは、服を着替えるようにさらっと変わるだけなんです。だから、更年期だからといって、女性としての自信を失ってほしくないと思っています。自分らしく生きられるように、性交痛外来ではその患者さん一人ひとりの問題に即したアドバイスを行うよう意識しています。

痛みを我慢して脳に深く刻み込まれてしまうと、なかなか薬だけでは治療できません。ましてや性交痛は複数の因子が絡み合っています。ですから、これだけやっていれば痛みが治るという治療方法はないと言えます。痛みに囚われている患者さんの意識を別のところへもっていくことも大切で、痛みを理解したうえで、好きなことや大切なことを楽しんでいただく認知行動療法も性交痛の対症療法の一つです」

抑圧から解放された自由なセクシャルウェルネスへ

40代以上の女性は更年期やセックスの痛みを我慢し「これまで医療が見捨ててきた女の人たち」と富永医師は言います。性交痛外来を訪れる患者さんは、セックスにおける痛みを訴えます。しかし、紐解いていくと、仕事、子育て、経済状況、家族や人間関係など、いろいろなストレスや不安が性交痛に影響していることが多いそう。富永医師は、麻酔科医として痛みに造詣があり、さらに自身も更年期障害に悩んだからこそできる性交痛治療を行っています。

「これまで女性にとってセックスは話題にしづらい傾向にありました。これからは性欲や痛みを自分が否定したり抑圧したりせず、こころの自由を感じて心と体が満たされるセクシャルウェルネスを楽しんでくださいね」

お話を伺ったのは…富永喜代先生
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会指導医。1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人超の臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。のべ23万5000人の痛みを治療し、性交痛外来では5000人のセックスの悩みをオンライン診断する。著書に『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA、2022年)など。

参考:
大川玲子.ワギニスムス再定義の試み.心身医.38.1998.
富永先生YouTube「女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室」
月刊TENGA45号『「フェムテック」「セクシャルウェルネス」「プレジャーギャップ」これひとつで丸わかり!』

 

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Text by Midori Matsumura

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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