更年期の心をケア?温泉と森林浴のウェルネスプログラム「森林養生」に学ぶ|栗尾モカの更年期大学#3

 更年期の心をケア?温泉と森林浴のウェルネスプログラム「森林養生」に学ぶ|栗尾モカの更年期大学#3
星のや
栗尾モカ
栗尾モカ
2021-12-16

記者・漫画家の栗尾モカが、医師や博士など様々な業界のプロフェッショナルに会い、更年期を快適に乗り越えるための知恵やメソッドをレポートする連載「更年期大学」。第3回目は、心身のバランスを整え健康になることを目指し開発された星のや軽井沢の「森林養生」をご紹介します。癒しの舞台は「国設 軽井沢野鳥の森」と、100年以上の歴史を持つ「星野温泉」。

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更年期の体調を整えるために。森林浴を日常に取り入れる方法とは?

近年、森林浴によるリラックス効果や健康効果に関する研究も進み、副交換神経を優位にすることでストレスを低減させる恩恵があると言われています。更年期真っ只中にいる私・栗尾も、普段から地元の横浜にある根岸森林公園や、鎌倉の竹林を歩くようにしています(気分は爽快になりますが、体型に変化は現れませんでした。今回のレクチャーで、筋肉の正しい使い方を学びました)。

今回、教えて頂いた深呼吸を意識して歩く「森林パワーウォーク」は、免疫力を高めるプログラム。自律神経を整え、正しく筋肉を使うメソッドとして、普段の生活に取り入れることが出来るポイントを伺いました。「森林養生」の監修は、公益財団法人「身体教育医学研究所」。東信州に位置する東御市を拠点に「からだを育み、こころを育み、絆を育むこと」を大事にしながら地域のネットワークづくりに貢献している団体です。

森林ウォーキングとヨガ、そして瞑想の湯…

お話を伺ったのは…星のや軽井沢「森林養生」担当スタッフ高橋明日香さん

先生
「森林養生」担当スタッフ 高橋明日香さん

2005年星野リゾート入社。「星のや軽井沢」や「星のや竹富島」にてスパ担当として勤務し、2021年にリニューアルした「森林養生」に合わせポールウォーキングのベーシックコーチの資格を習得。森林養生のみならず「星のやスパ」にて「調身・調息・調心」の癒しを提供。

深く長い呼吸を意識し、筋肉もしっかり使うウォーキングを

ウォーキングを始める前にまずはコンサルテーションシートに記入し、現在の体調のコンディションを高橋さんにお伝えします。その後、安静時の動脈血酸素飽和度(SpO2)と心拍数を計測。パワーウォーク中にも計測のための休息をとり、望ましい呼吸法で身体にしっかりと酸素を取り込めているかをチェック。


ストレッチ

高橋さん:今回、こちらのポールを使って、ポールウォーキングを行います。ストレッチもポールを使ってアキレス腱を伸ばしていきましょう。

――こちらのポールを使うのは初めてです。山歩きをすると使っている方によくお会いしますが、どのような効果がありますか?

高橋さん:まず、ポールを持つだけで背筋がスッと伸びますし、筋肉を使いながら左右のバランスがとれた姿勢で歩くことが出来ます。自然に身体を大きく動かすので、しっかりと筋肉を使った全身運動に繋がります。転倒を防止することも出来ますね。

――転倒ですか!更年期世代仲間で、ふとした瞬間に転んだ話をすることがありますが、笑い事ではなく危険です。以前は転ぶことなどなかったのに、障害物のない場所でなぜか転んだりして……。筋肉量が減ったことや、ホルモンの減少によって注意力が落ちたからでしょうか。森林には石や木の根などがありますから、なおさら注意が必要です。

高橋さん:そうなんですよね。このポールを持つと、体が安定するので安全ですし、安心して森林も歩いて頂けると思います。また、姿勢を良い状態に保てると思います。では、早速歩いてみましょう。

――本当ですね!ポールはとても軽くて持ちやすいですし、なにより体が安定します。足も開きやすくて歩きやすいです!普段の散歩にも使いたいです。

高橋さん:ポールウォーキングが初めての方は、この心地よさに驚かれます。ぜひ、普段のエクササイズにも取り入れてみてください。

野鳥の森
エコツーリズムを提唱し、持続可能な観光資源として自然を守っている軽井沢野鳥の森。「星のや軽井沢」に面する森の一部です。
像
森の入口には、日本野鳥の会創始者で歌人の中西悟堂氏の銅像が。星のやとの繋がりは、星野温泉2代目当主・星野嘉助が敬愛する中西氏の弟子になったことから始まったとのこと。
先生
颯爽と歩く高橋さん。息が上がることなく、笑顔でお喋りが出来るくらいの速さのウォーキングなので快適!

ポールは「突く」のではなく、「置く」イメージ。出した足のかかとくらいの位置にポールを置くのがポイントです。慣れてきたら、ポールをあえて前に置いて歩くことで、運動強度を高めることもできます。

自分の歩いている姿を撮影してもらったところ…ショックを受けた理由

高橋さん:ウォーキングを始めるにあたって、栗尾さんの歩いている姿を動画に撮ってみます。一緒にフォームを確認してみましょう。

――(動画を見ながら)自分の歩き方を客観的に見るとショックですね。姿勢も良くないです。視線は下の方を見ていますし、なんだかとてもお疲れ感が漂っています(苦笑)。仕事明けで全身が硬くなっている自覚はありましたが、こんな姿勢で歩いているんですね。見ることが出来て良かったです。

高橋さん:日々忙しく働いていらっしゃる多くの方が、長時間のデスクワークやスマホを見る前かがみの姿勢で胸が開いていない状態なので、呼吸も浅くなっていると思います。

――この歩き方だと、どこの筋肉にも効いていない感じが見て取れます。これでは、何キロも歩いたところで身体が締まっていくことはなさそうです。とはいえ、どんな風に意識をしたら高橋さんのように颯爽と歩けるのでしょうか?

高橋さん:5つのポイントを意識してみてください。すぐにフォームが変わりますよ。

代謝を上げ、正しいフォームで歩くポイント5つとは?

①  足の付け根がみぞおちの位置にあるイメージで歩く

②  目線は20~30メートル先

③  一直線上を歩くように

④  腕は後ろ方向にしっかり引く

⑤  歩幅は身長マイナス100センチを目安に

――「足の付け根がみぞおちの位置にあるイメージで歩く」はユニークな表現ですね。でも、実際に頭の中でイメージをして歩くと、自然に足さばきが良くなり、歩幅が広くなる感覚です。その状態で目線を30メートル遠方に移すと、自然に胸が開きますね。

高橋さん:一直線上を歩くことで、内腿の筋肉を意識することが出来ます。また、腕はぶらんとさせるのではなく、後ろ方向に引くことで肩回りの筋肉を使うことが出来、姿勢が良くなります。

――実は、以前もウォーキングを習う機会があったのですが、正しい歩き方の説明を受けた際に注意するポイントが多すぎて、不自然な動きになってしまったことがありました。今回の5つのポイントはシンプルで、私でも取り入れることが出きたように思います。考え尽くされたポイントなのではないでしょうか。

高橋さん:快適に歩いて頂けて良かったです。今度は、深呼吸を意識しながら気持ち早足で歩きましょう。呼吸は、鼻から吸って口から長く吐くことを意識してください。かかとから着地し、つま先で蹴って大きく次の一歩を踏み出します。体幹の筋肉を引き締めて、骨盤を使って脚を運ぶイメージです。

ほはば
歩幅は、おおよそ身長マイナス100センチがベスト。160センチの人なら、60センチほどですが、やや大股歩きです。股関節を開くことを意識して歩くことで血行が良くなります。

ヨギーニにはたまらない!森林で味わうヨガの時間

ヨガ
是非おすすめしたい森林の中のヨガスポット。鳥のさえずりを聞きながら三角のポーズ。

ウォーキングのあとに高橋さんと共に森林の中で身体をほぐしました。普段、自宅かスタジオでのヨガに慣れているので、大自然の中での深呼吸は新鮮。呼吸をするたびに細胞が生まれ変わるイメージです。

再び酸素飽和度と心拍数を計測後、高橋さんからコンサルテーションシートへのコメントを頂きました。「呼吸は3歩吸って6歩吐くことに慣れてきたら、より長く吐けるように意識してみてください。肺機能が鍛えられ、お腹の引き締めにもなります」とのこと。短く吸って、細く長く吐く。まさにヨガの呼吸法ですね。「歩き方のレクチャー後には大きく綺麗に手が振れ、姿勢もよくなっていました」というコメントも。嬉しいです…!

 

夕暮れ
国内に6施設、海外に2施設を展開している「星のや」の原点でもある「星のや軽井沢」(旧星野温泉旅館)は、大正3年(1914年)に創業。旅館の始まりは、温泉掘削事業に着手したことからスタート。古くから温泉が湧き出ており、本格的な掘削をしたところ、湯質と湯量に秀でた温泉が湧出したのだとか。

 

外観
施設外観
瞑想バス
洞窟のような瞑想空間のある「メディテイションバス」は、瞑想のための温泉。奥に進むと、光が抑えられた静かな空間が広がっています。温かなお湯に身を委ね、頭の中をリセット。

森林で身体を動かした後は、こちらの温泉で温泉入浴指導員の資格を持つスタッフの方と共に水着姿で「深呼吸入浴法」を。ゆっくりと呼吸を整えながら上半身を大きくひねったり、腰から太ももを伸ばしたりするストレッチをする入浴法です。ストレッチにより全身の筋肉が緩まることで肋骨・胸部が広がり、深呼吸がしやすい身体に整えていきます。

「無」になれる創作。静謐なひとときを愉しむ

着替えを済ませ、自然の循環事業を営む「きたもっく」のスタッフの方と共に、倒れてしまった木などを利用した枝のスプーン作りに挑戦。森との繋がりをより深く感じることが出来る体験です。

お話を伺ったのは…日月悠太(たちもりゆうた)さん

きたもっく
日月悠太(たちもりゆうた)さん

北軽井沢でキャンプ場や林業、養蜂など、自然と人の関わりづくりを行う「有限会社きたもっく」所属。「森林養生では、身近な木の枝からスプーンを作る体験を通して、すぐそこにある自然に興味をもっていただければと思っています」

 

桜の木
桜の木の形状を見ながら、どの部分を使えば機能的な形状になるかアタリをつけます

 

するする
するすると面白いほどスムーズに皮がむける、北欧製のアウトドアナイフ。無心になれます
スプーン
ナイフで削った枝は、作家・貝山伊文紀さんの手によって整えられ、自宅に送付して頂きました。さらにオイルを塗ってやすりをかけ、磨く過程を楽しみながら自分好みのスプーンに仕上げていくことが出来ます

旅の思い出や学びを帰宅後も引き続き楽しめるのは、なんとも嬉しいものです。自宅でスプーンの形を整えながら、軽井沢の森林の空気をふたたび感じていました。

オイル
「森林養生」のプログラムの中には、リラックスへと導かれるウォームストーン・トリートメントと、深呼吸や運動がしやすい身体へと整える指圧の時間も。日常生活で凝り固まった肩や、肩甲骨周りの緊張をほぐしていきます

【更年期大学】今回の学び

進化
イラスト・栗尾モカ

日頃、忙しく過ごしている中で「なんとなく不調」という体調を見て見ぬ振りのまま、次の予定に突入してしまう。仕事や家事、育児や介護など、それぞれ状況は違っても多忙な更年期世代。私も常に時間に追われて「汗をかいている割に体は冷えている」という更年期代表ですが、今回思い切って時間をとり自然の中で自分に向かい合ってみたところ、普段は気付けなかった心と体の調子を観察することが出来ました。なかなかまとまった時間をとることが難しい時期も、たとえば電車に乗っている間も目を閉じてヨガ講師に習った瞑想を密かに実践したりしています。

森林ウォーキングでは、自分の姿勢を動画で見て反省し、調節して頂けたことが貴重な体験となりました。皆さんもスマホでご自分の歩く姿を撮影し、チェックしてみてはいかがでしょうか?「我ながら綺麗なフォーム!」と安心するかもしれませんし、何か新しい発見があるかもしれません。個人的には、想像以上に老け感のある歩き方で自戒しました。「もうちょっとマシだろう」と勝手に踏んでいたからです。それに比べ、アドバイスをくださった高橋さんの歩く姿の若々しいこと!「代謝を上げ、正しいフォームで歩くポイント5つ」は、ぜひ取り入れてみてください。

また、「森林養生」を通して、自然からの恩恵を受けるだけではなく、自然を守る取り組みに関して情報を集めようと改めて思いました。小さなことから始めています。

施設情報

「星のや」

「夢中になるという休息」をコンセプトに、各施設独創的なテーマで圧倒的非日常を提供するブランド。国内に6施設、海外に2施設を展開

「星のや軽井沢」

施設のコンセプトは「谷の集落に滞在する」。自然と共生調和する理想郷「もう一つの日本」をテーマに、心身の休養を提案する滞在型リゾート

所在地:〒389-0194 長野県軽井沢町星野

▶︎豊かな森の食事で身体の内側からも健やかに

そば
「もう一つの日本」をテーマに日本の原風景を表現した棚田の景色を望みながら頂くおしぼり蕎麦と天ぷらを
夕食
夕食は「日本料理 嘉助」で山の懐石を。野山に咲く淡い紫色のレンゲショウマとほうずき、沢に隠れたカニが微笑ましい

信州には、春には山菜、夏は高原野菜、秋はきのこ、冬は根菜やジビエ肉など、四季折々豊かな土地の恵みを活かした郷土料理があります。

朝食
心待ちにしている人も多い「山の朝食」。厳選された素材で丁寧に作られた滋味深い朝食を頂くと免疫力も上がりそうです

▶︎より自然と深く繋がるために。ゴミの資源化100%を目指す、持続可能なリゾート運営の取り組み

水
客室にはペットボトルではなくウォータージャグにお水が冷えていました

星のや軽井沢では、ペットボトルフリーへの第一歩として客室でのペットボトル入りウォーターの提供は廃止。原水として浅間山麓の水系の伏流水に衛生的な処理を施し、飲料水として提供されています。

ウォータージャグを見つけたことをきっかけにお話を伺ったところ、星野リゾートの環境の取り組みは歴史が古く、1914年の開業当初から続く水力発電の運用が始まりで、かなり早い時期から活動をされています。スタッフの方が私たちでゴミは28種類に分別しています」「ごみの資源化100%を目指しています」とおっしゃったことには驚きました。

「星のや軽井沢」の目標は、計画段階から「環境には最低限の負荷しかかけないエコロジカルなリゾートにしよう」という思い。前身である星野温泉旅館では、敷地内を流れる川を利用した水力発電や地中熱利用システムなど、自然エネルギーの活用で、使用するエネルギーの約7割を生産しているのだとか。その後、リニューアルにあたり旧来の水力発電に加え、温泉排湯熱と地中熱利用システムを採用。星野リゾートではブランドの垣根を超え、持続可能なリゾート運営に注力されているそうです。

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栗尾モカ

栗尾モカ

記者・漫画家。新卒で航空会社に就職。退社後、出版社に入り多くの企画に携わる。「ダ・ヴィンチ」で漫画家デビュー後、朝日新聞の社会見学連載、「TVタックル」モバイルサイトインタビュー、女性誌「STORY」の海外・美容取材など数多くの連載を担当。女性のウェルネスをテーマにしたコミックエッセイは、取材の経験がニュースソースになっている。シンガポールのメディアに再就職した際、締切と子育てに追われる中でインド・バンガロールにあるヨガ研究大学(Swami Vivekananda Yoga Anusandhana Samsthana / S-VYASA)により考案されたヨガインストラクター認定プログラムに出逢い、資格を取得。伝統的なヨガ哲学や、心身を癒すメソッドを学び始める。著書に「サロン・ド・勝負」「おしゃれレスキュー帳」(KADOKAWA)「女のネタ帖」(学研)などがある。



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