【インタビュー】交際3カ月で予定外の妊娠。貯金もない“うっかり婚”から10年経った今言えること

 『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)より
『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)より

24歳のとき、交際して3カ月で想定外の妊娠をした、こいしさん。出会って日が浅く、互いに相手のことをよくわかっていない。若くて貯金も少なく、計画性がないまま始まった“うっかり婚”でした。そんなときから10年経過し、当時の自分に「色々あるけど、楽しく暮らしてるから大丈夫」と声をかけます。『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)は、子育てで不安な気持ちに寄り添ってくれる作品です。こいしさんにこの10年でのお考えになったことやキャリアへの思いについて伺いました。

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最初はみんな「子育て」を知らない

——24歳で予定外に妊娠されたとのことですが、どのように感じましたか。

正直不安しかなかったです。一番は自分が母親になれるか心配でした。そもそも当時はまだ結婚したいとも思ってませんでしたし、身近に出産している友人や先輩がいなかったですし、甥や姪もおらず小さな子どもがいる生活とは無縁だったんです。なので出産や育児に関する予備知識はないですし、子どもを産み育てることが全く想像できなくて。初めは生活が180度変わって、ただ戸惑いました。

キャリアの面でも、当時は就職して1年程度しか働いてなかったので、まだまだ仕事を頑張りたいと思っている時期でした。妊娠・出産で退職するとなると、仕事を続けていく道から外れてしまって、生涯戻ってこれないのではという不安もありましたね。

でも子育てって最初はみんなわからないってことに気づいて、若いからこそ先に結婚・出産してみるのもいいかもしれないと思って、産む決意をしました。

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『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)より

——第10話では、こいしさんがワンオペ育児をする中で夫さんから「自分は働いて帰ってきて、すごく疲れている」と言われてイライラしたり、仕事をやめて専業主婦になったことを後悔したりする描写がありました。

家で家事・育児をする自分と、外で仕事をしている夫との間の摩擦を描きました。私自身が外で働くことが好きで、家事も育児もパートナーと分担することを理想としていたのですが、夫が「家にいてほしい」と言ったので仕事をやめたのですよね。

もちろん夫が一人で大黒柱として家計を支えなきゃいけないというのもプレッシャーはあったとは思います。とはいえ私自身に働きたい気持ちがあった分、働けていないことや誰かのお金で生活していることを窮屈に感じたり、後ろめたさがあったりしました。

でも家事・育児と外で働くことは単なる役割分担だと気づいて、本来は夫から何を言われても、後ろめたさを感じる必要は全くなかったのですよね。働いてないことが問題なのではなく、自己肯定感が保てなかったのが原因だったのだと振り返って思います。

——その頃を乗り越えているので今があると思うのですが、どうやって気持ちを鎮めたのでしょうか。

「最悪、実家に帰ればいいや」って思って、実家付近の求人を調べました。意外と求人もあってほっとしましたね。このことに限らず、選択肢が一つではないことは常に意識しています。悩むとどうしても極端な考えに走りがちなので、色々な選択肢があると思えると心に余裕が生まれますよね。私は気持ちのアップダウンがあるのがしんどいと感じるタイプなので、複数の選択肢を思い浮かべることで、日頃からあまりメンタルの状態が上下しないようにしています。

——この頃、もしご実家が頼れないような状況だったら、どういう選択肢を考えていたと思いますか。

家事・育児をしながら、在宅の仕事を探していたと思います。実家に頼ることも想像しただけであって、実際は実家とも結構距離があって、頼ったことはありませんでした。実際に行動に移すかは別として「私には逃げ道がある」と思えることを大事にしています。夫とギクシャクしても、「『最終的には実家に帰ったり離婚したりする選択肢もある』という気持ちでいること」がポイントなんです。

思い詰めすぎないようにもしていて、今でも嫌なことがあったらゲームをしてリフレッシュしています。メンタルの状態が悪いと、同じ出来事でも深刻に捉えがちだと思うんです。

10年間子育てをしてきて感じたのは、子どもの成長を待つしかないこともたくさんあったということ。また、パートナーを変えようとしても思い通りに変わるものでもないですし、かといって自分が変わるのもモヤモヤします。私は時間が解決してくれることが大半だったので、そのときを過ごすにあたって悪く捉えすぎないよう、自分のメンタルヘルスを大事にしていますね。

夫の収入があったからこそ、在宅ワークで挑戦できた部分も

——こいしさんはお仕事への思いがとても強かったことを描かれていますが、ここ10年のキャリアはどのようなものだったのでしょうか。

自分としてはキャリアというキャリアを築けている気はしていないんです。最初は「ママ歓迎」と明示している職場で事務のパートを始めました。時給は安かったものの、子どもの体調不良で早退することがお互い様だったので働きやすかったです。

夫がメインで働いているうえ、上の子が体があまり強くなかったので、家族のことを優先できる仕事に絞ってしか働いてきませんでした。子どもに何かあったときに駆けつける大人が絶対に必要だったので、一番大切なのは時間。その時間は融通の利かない正社員である夫ではなく、私が確保していました。

でも収入が欲しかったので、外で融通の利く仕事をしながら在宅ワークもしました。このときに子育て系の記事を執筆して、子育ての経験が活かせるような仕事も探せばあることに気づきました。

夫が経済的に安定しているからこそ、私がやってみたい仕事に挑戦できた部分もありました。独身の頃にイラストの仕事をしたことはなかったのですが、未経験のことに挑戦してみようと思えたのは、在宅ワークをしていたからでもあると思います。

今35歳なのですが、下の子が小学生になって、子育ては落ち着いてきました。フルタイムで働きたいという思いはずっと持っていて、がっつり働くとなったら年齢的にも最後のチャンスなのではと思って、一度正社員での就職も視野に入れて挑戦したいと思っています。もし上手くいかなくても、今の状態に戻ることはできますし。

——早く出産した場合に、その後のキャリアがどうなるかが可視化されているロールモデルも少なくて、なかなかイメージもしにくいと思うのですが、こいしさん自身が実際に経験してみて、どう感じていますか。

先に結婚・出産したことで、働きたくても働けなかった時期に、社会における女性が働くことに関する考え方が変わって、女性活躍の機運が高まったり、在宅でできる仕事が増えるなど、働き方の選択肢が増えました。私が再度自分のキャリアに向き合うタイミングになった今、10年前よりも子どもがいても働きやすくなっているのは良かったと感じています。

学生の頃には、新卒で就職して、ある程度働いたら結婚して育休を取って復職するしか知らなかったので、そのようなライフプランを思い描いていました。実際に“当たり前”とされているようなライフプランとは違う道を歩いてきて感じたのは、時代の変化もありますが、いくらでもやりようはあると。

私もキャリア形成についてはこれからだと思っているので「こうでしたよ」とはお伝えはできません。ただ、子育てが落ち着いてから働きたい人はたくさんいると思います。子育てがひと段落した人を雇うメリットとして、「自分探し」といった理由で退職することはないと思いますし、出産も終えているので長期的に休む予定もないことを、私はアピールしていこうと思っています。

※後編に続きます

『うっかり婚も気がつけば10年め。』(オーバーラップ)
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【プロフィール】

こいしさん
愛媛県出身、山口県在住の二児の母。
出産を機に漫画を描き始める。
現在SNSでエッセイ漫画を更新しながら、イラストレーター・コミックライターとして活動中。
クスっと笑えてゆるっと可愛いイラストが得意。  
WEB漫画や広告漫画、PR漫画、書籍カットイラスト等のお仕事募集中。

■X(旧Twitter):@4comapic
■Instagram:@4comapic

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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