日本の良きもの、伝統的な素材の魅力を伝えたい…スキンケアブランド「joscille」創設者の想い

 日本の良きもの、伝統的な素材の魅力を伝えたい…スキンケアブランド「joscille」創設者の想い
joscille
山口華恵
山口華恵
2022-04-08

コロナ禍がもたらした気づきがきっかけに。広告&アパレル業界の第一線で活躍する2人が立ち上げた小さなスキンケアブランド「joscille」。スキンケアの展開を通して「日本各地の生産者さんと手を結び、日本のよきものや地域を育んでいきたい」と語るお2人に、ブランドの立ち上げ背景や商品に込めた想いについて伺いました。

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2年前の新型コロナウィルスによるパンデミックをきっかけに、時間、物、仕事、生き方など様々な価値観が劇的に変化した。ふと立ち止まり、日々の暮らしや人生、仕事を見直すきっかけになった人は少なくないだろう。コロナをきっかけに、運動を始めたり、生活スタイルを見直したりした人も多いはず。

今回ご紹介するのも、そんな世界的なパンデミックをきっかけに、新たなライフステージの一歩を踏み出した2人だ。

大手有名化粧品会社やアパレルなどの広告やパッケージデザインなどを手掛けてきたアートディレクターの今井クミさん、そして大手アパレルメーカーで長年デザイナーとして活躍してきた今井まゆさん。流行の最先端を行く業界で活躍してきた2人だが、昨年、「自分たちが本当に必要だと思うものだけを最小限に、正直に作る」ことをモットーに年齢、性別、肌質にとらわれない小さなものづくりを開始し、スキンケアブランド「joscille(ジョシーユ)」を立ち上げた。

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「joscille」は、現在、オイルなどのオリジナルアイテムと各地の生産者と協力して作られた希少な養生茶や生馬油、マスクなどのアイテムの両方を取り揃えている。今後はオリジナルのアパレルラインも開始予定だ。異国での旅を彷彿とさせるエキゾチックな香りと肌馴染みの速さが魅力のオイル、保湿力と浸透力に優れた生馬油、体の内側を綺麗にしてくれる薬草茶、肌に優しい竹素材のマスクやタオルなど、いずれも日本各地や世界に昔から伝わる良い成分や素材を厳選して作られた心身に優しいアイテムは健康に一層気を使う今、気になるものばかりだ。

「joscille」を立ち上げようと思ったきっかけは?2020年の世の中の大きな変化により、心に大きな変化が訪れた。

クミさん:「独立して間もない頃、某自然食品会社の仕事に携わったことをきっかけに無農薬の食品やオーガニックの化粧品への興味を持ちました。また、自分が共感できるブランドに寄り添う仕事に長年携わってきましたが、自分がものづくりする側になるという発想は正直全くありませんでしたね(笑)。2020年の世の中の大きな変化により、広告の仕事をしていながら、広告に翻弄されてものを選ぶことに急に疑問を感じるようにもなりました。そして長年関わってきた化粧品分野で、単に広告やデザインだけではなく、大切な人たちに使って欲しいものを作ってみたいという想いが突如自分の中で沸き起こり、加速し、昨年から小さくスタートすることなったのです。

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長引く不安な生活の中、肌が不安定な状態は心にも大きく影響することを実感しました。毎日使い続けられる手の届く価格帯で安心して心地よく使い続けられるもの、可能な範囲で地球環境にも負担のない、正直で小さなブランドを作りたいと思って立ち上げました。また、同じ時期、アパレルの仕事をしている姪のまゆの独立もきっかけの一つです。コロナ禍で、お互いにこれからの働き方、生き方について語らう時間が増え、思いが重なり、ファミリーとして作り手としての信頼関係をシェアできるパートナーだと確信し、共にブランドを運営していこうと思いました」。

まゆさん:「コロナ以前から漠然と自分でものづくりをしたいという想いはありましたね。年を重ねるにつれて働き方を変えるのも今だなって思ったんです。大手企業で働いてはいましたが、幸い、割と小さなブランドを担当していたので丁寧なものづくりに携わることはできていました。しかし、その反面、大きなものづくりを目の当たりにし、エコやSDSsなど業界的にも意識しなければいけない状況下で、廃棄問題など様々な矛盾を目の当たりにして疑問を感じることもあり、ただただ消費されるのではなく、最後まで全うできるような本質的なものづくりをしたいという気持ちが高まっていました。そろそろ独立しようかなという話は叔母のクミにしていたんです」。

「joscille」の魅力の一つは本当に肌に良いものとは何かをきちんと考え、既存の自然派スキンケアの枠にとらわれすぎていない点かもしれない。自然の成分を活かしつつ、でもそれに固執しすぎず、安全で安心で毎日使い続けて心地が良いもの、使い続けることに無理がないものを厳選し、また最後まで全うできるようなものづくりを意識している。生馬油も特徴的なアイテムの一つだ。

クミさん:「例えば長野や熊本では、馬肉の文化があり、その副産物としての馬油も先人たちの暮らしの知恵として、昔から乾燥や保湿のためのスキンケアとして地域で愛用されてきました。自然派というと植物由来のものをまずは思い浮かべる方が多いとは思いますが、命の恵みにしっかりと感謝し、余すところなく頂くことが重要だと思っています。馬油は人の皮脂に近い性質を持ち、とても相性の良いオイルです。Joscilleの生馬油は無臭で精製度合いが高く、肌にスーッと浸透し、以前のイメージよりも肌なじみが良いという声を多数頂いています」。

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また、5月中旬発売予定の今井まゆさんがデザインするアパレルラインは糸から作ることにこだわった。デザイナーのバックグラウンドを持つ2人だからこそ、機能性だけではなく、使い心地、着心地、そしてデザインの美しさなど、日々の生活の中での存在価値に妥協を許さない。

まゆさん:「肌にずっと身につけるものだからこそ、こだわって糸から作ることにしました。主な素材の一つは丁寧に手積みしたインド産のオーガニックコットン、そしてもう一つはSDGsに取り組んで生産を行っているアメリカ産のエコヴェロ™レーヨンで両方とも環境への配慮した素材です。この二つの素材を組み合わせることで、とろみ感のある上質な肌触りを実現することができました。基本は天然素材を使いながら、わずかにポリウレタンなどを加えており、型崩れしにくく長くご愛用いただけると思います。ノンワイヤーの肌着やワンマイルウェアなどを展開予定です。また購入いただいたアイテムを最後まで全うできるような取り組みもできたらと考えています」。

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クミさんの現在のオフィスは昔からトレンドの発信地である渋谷区神宮前の賑やかの通りを一本入った閑静な場所に佇む。心地の良く上質でシンプルなオフィスは、クミさんの雰囲気そのものだ。しかし、この夏(2022年8月頃予定)、神宮前から鎌倉へとオフィスも住居も引越し、「joscille」の小さなショップ兼カフェをオープンさせると言う。

クミさん:「8月にオフィスも自宅も鎌倉へと引っ越し、小さなショップをオープンしようと思っています。手前がジョシーユのスキンケアとアパレルラインのショップスペース、奥にはカフェエリアを併設予定です。私自身コーヒーが大好きなのですが、大分県で焙煎を行っている友人の美味しいコーヒーやジョシーユの養生茶を始め、各地から厳選したお茶、またお菓子作家による美味しいお菓子などを楽しんで頂こうと思っています。また、季節の折や週末などには料理のプロたちによるランチなども展開できたら、と考えています。海と山が近い鎌倉での暮らしは楽しみですね」。

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「joscille」はフランス語の“J’oscille”(私は揺れ動く)からきており、心と体の揺らぎをイメージして命名された。人生は浮いたり、沈んだり、揺らいだりの繰り返しだ。色んな自分を認め、受け入れ、愛することの大切さをブランド名に込めている。この春発売の二層美容液エッセンス「梅と桜」(4月発売予定)、美容液セラム「白樺と黑豆」(5月発売予定)は、日本の伝統的な素材がメインのスキンケア。季節の変わり目の肌の揺らぎにもピッタリなアイテムになりそうだ。

クミさん:「日本の伝統的な素材がメインのスキンケアシリーズです。 長引く不安やマスク生活により繊細さを感じるお肌をやさしくいたわり、健康的な肌の透明感とハリをもたらしてくれます。「梅と桜」は、ブルーライトから肌を守るカカオ種子エキスと梅果実や、ソメイヨシノの葉のエキスで心地よいハリ、艶やかな生命力溢れる肌に仕上げてくれます。また、フロストのガラス瓶から見えるピンクのオイル部分と化粧水の二層も視覚に訴え、幸福な気分にさせてくれます」。

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性別や年齢、肌質問わず、みんなでずっと使えるものづくりを目指したい。

クミさん:「お肌に対する不安をなくすことで、どれほど心身の健康を取り戻せるかということを常に大切に考え、取り組んでいきたいです。人生100年と言われるこの時代、性別や年齢、肌質問わず、みんなで使えるものづくりを目指したいですね。また、どんなに良いものでも高価すぎては毎日使用することができず、大きな負担となります。きちんと毎日使用できる手に届く価格であることもとても、社会的な取り組みとして、大切に考えていきたいと思っています。心地よい暮らしと自然を愛する気持ち、自由な人生観を感じて頂けるブランドにしていきたいです。

そして、これから私たちがやりたいこと、それは、日本各地の素晴らしい生産者さんと手を結び、日本のよきものや地域を育むことです。時代のトレンドや作られた広告のイメージに惑わされずに、肌と心によいものを選ぶという価値観で選んでいただけることを大切にしていきたいと思うのです。そのため私たちは、小さく小さく、自分たちで商品企画、ブランデイング、パッケージ、サイト等のデザインまでを社内で行なっています。組織を大きくせずに、自分たちで手をつくし、自分たちの手で届けることを大切にしたいと考えています」。

2人の真摯で丁寧なものづくりにこれからも注目したい。joscilleのオンラインショップでは、オリジナルラインのほか、クラフトマンシップに溢れた全国各地から厳選された食品や雑貨なども増えていく予定だ。

プロフィール:

今井クミ
有限会社アピスラボラトリー代表。 旅好き。最近は茶道などの日本の美に惹かれている。 グラフィックデザイナーとして 33 歳で独立。化粧品やアパレル、エコ関連の仕事を中心に手掛け、渋谷区神宮前に事務所を設立。2021 年、秋、新規事業としてjoscilleブランドを立ち上げる。

今井まゆ
大手アパレル企業にデザイナーとして務めた後、2021年、今井クミ氏と共にjoscilleの立ち上げに携わる。2022年夏発売予定のjoscilleのアパレルラインのデザイナー。最近はトレーニングに没頭中。愛猫家。

取材協力:菅野沙織 https://biotika.localinfo.jp/

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山口華恵

山口華恵

翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。



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