【嗅覚が失われる仕組みとは?】新型コロナウィルス感染後、嗅覚を素早く回復させる「嗅覚セラピー」

 【嗅覚が失われる仕組みとは?】新型コロナウィルス感染後、嗅覚を素早く回復させる「嗅覚セラピー」

匂いのトレーニングで嗅覚を鍛え、好きな匂いを再び楽しめるようにしましょう。

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あなたにも好きな匂いがあるはずです。結婚式のブーケを思い出させる花の香り、お母さんの焼きたてのスニッカードゥードル(シナモン味のクッキー)から漂うシナモンの香り、刈りたての芝生の匂いなど、様々あるでしょう。しかし、嗅覚は人間の感覚の中で最も過小評価されています。というのも、ある調査によると、若者はSNSをやめるくらいなら、嗅覚を失う方がましだと考えているそうです。

しかし、新型コロナウィルスの症状として嗅覚障害が現れると、患者の60%が発症から4日以内に味覚と嗅覚を失うと報告し、他の研究でもこの問題は多くの人にとって少なくとも6カ月間残ることが示されています。幸いなことに、嗅覚のトレーニング、特にSRT(Smell Retraining Therapy:嗅覚再訓練セラピー)と呼ばれる手法によって、嗅覚の回復を促すことができます。

嗅覚が失われる仕組み

アノスミアと呼ばれる嗅覚喪失の症状は、コロナウイルスに限った現象ではありません。新型コロナウィルスの大流行以前は、少なくとも人口の5分の1が無嗅覚症や嗅覚障害(以前は良い匂いだと思っていたものが臭いと感じるなどの症状)に苦しんでいたと研究者は推定しています。嗅覚の変化は、通常、ウイルスや風邪、インフルエンザが鼻の中の受容体にダメージを与えることによって起こります。

嗅覚が失われることは些細なことに思えるかもしれませんが、実は嗅覚があることはとても重要なことです。ガス漏れや火の不始末、食べ物の腐敗など、異臭に気が付くことで救われることがあります。

また、鼻は中枢神経系に直接つながる道でもあります。つまり、匂いは感情に影響を与えるのです。特定の人や体験と関連づいて、安らぎを与えたり、感情の引き金になったりもします。

嗅覚トレーニングの実施方法

嗅覚を失った人は、嗅覚トレーニングによって、脳の嗅覚部分への神経経路を再生させるために、匂いを嗅ぐ「練習」をすることができます。研究はまだ限られていますが、初期の研究では、SRTを行った人の68%が改善を示したのに対し、対照群では33%にとどまりました。また、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、SRTは安全であるとしています。

匂いのトレーニングでは、通常、お花の香り、フルーティーな香り、スパイシーな香り、樹脂の香りの一般的な4種類の香りを使用します。嗅覚訓練キットでは、ローズ、レモン、クローブ、ユーカリの精油を使うこともあります。しかし専門家によれば、ラベンダー、シナモンスティック、オレンジピール、バジルやミントの束など、香りが強く持続するものであれば何でもよいそうです。

嗅覚障害者を支援する英国の非営利団体「フィフス・センス」は、嗅覚トレーニングの方法を次のように提案しています:

・まず、香りを1つずつ嗅ぎます。1つずつ別の容器に匂いを入れておきます。

・最初の香りをゆっくり、短く、やさしく嗅ぎます(あまり勢いよく嗅ぐと、匂いを感知する能力が低下します)。

・2~3回繰り返した後、5分ほど休みます。

・次の香りに移り、上記を繰り返します。

・変化があれば記録しましょう。

1日2回、少なくとも12週間は続けてく下さい。研究者によると、結果を得るには一貫性と時間が必要だそうです。

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By DAVIDA WRIGHT
ranslated by Hanae Yamaguchi

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ヨガジャーナルアメリカ版

ヨガジャーナルアメリカ版

全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。



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