薬と一緒に摂ると効果に影響する?薬剤師が教える、一緒に摂ってはいけない〈薬と飲食物の飲み合わせ〉

 薬と一緒に摂ると効果に影響する?薬剤師が教える、一緒に摂ってはいけない〈薬と飲食物の飲み合わせ〉
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薬は食べ物や飲み物との飲み合わせによって、作用が強く出たり、逆に弱くなったりすることがあります。これを「薬の相互作用」といい、案外見落としがちになるため、注意が必要です。この記事では、薬と一緒に摂ってはいけない飲食物について解説します。

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薬と飲食物との相互作用が起こりやすい食べ合わせ・飲み合わせは数多くありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

① 納豆×抗血栓薬「ワルファリン」

ワルファリン(ワーファリン)は、血液を固まりにくくする薬で、血栓(血の塊)の予防のために使われる抗血栓薬です。脳梗塞や狭心症の予防や治療のために使われ、日本では処方数が年間10億を超えるほどポピュラーな薬ですので、ご存じの方も多いかもしれません。

このワルファリンと相性が非常に悪いのが納豆です。ワルファリンは肝臓でビタミンKを阻害することで薬としての効果を発揮するのですが、納豆にはビタミンKが多く含まれ、さらに食べた後もビタミンKをどんどん増やす作用があるので、ワルファリンの効果を弱くしてしまうのです。

② 牛乳×抗菌薬

抗菌薬とはその名のとおり、症状の原因となっている細菌の増殖を抑えたり、殺したりする薬全般を指します。細菌が原因で起こる病気は、中耳炎や膀胱炎、ニキビなどを含め、さまざまあり、抗菌薬もそれに応じて種類があります。その中の一部の成分と相性が悪いのが牛乳です。

牛乳に含まれているカルシウムと抗菌薬の成分が結合してしまい、薬の吸収や作用を低下させてしまうのです。すべての抗菌薬がそうではないのですが、念のため薬剤服用後は、牛乳の摂取を避けたほうが良いでしょう。

③ チーズ×精神安定薬、抗うつ薬

チーズにはチラミンという成分が多く含まれています。チラミンは神経伝達物質の一つで、ノルアドレナリンという物質の分泌を促進して血圧の上昇や片頭痛の原因となることがあります。

通常、チラミンは体内にある酵素(モノアミン酸化酵素)によって代謝されるので問題ないのですが、精神安定薬や抗うつ薬はチラミンの分解を阻害する働きがあります。その結果、チラミン中毒といって、顔面紅潮、頭痛、急激な血圧上昇などを起こすことがあります。

なお、チーズほどではありませんが、ニシン、たらこ、ビール、ワインなどもチラミンが含まれているため、あまり食べ過ぎない方がよいでしょう。

④ グレープフルーツ×降圧薬(血圧を下げる薬)

グレープフルーツと降圧薬も相性が悪いといえます。グレープフルーツの果肉に含まれるフラノクマリン類という成分が、肝臓の薬物代謝を邪魔して、薬物の血中濃度が上がり、効きすぎてしまうのです。そのため、適正量を服用しても効きすぎによる副作用(低血圧による頭痛、めまいなど)が出てしまう場合があります。

なお、薬の服用後2時間程度空けて飲めば、影響は少ないと言われていますが、長時間作用するタイプの薬もあるため、ジュースを含めて避けたほうがよいでしょう。また、はっさくや夏みかんも同様の相互作用を起こるため、控えた方がよいでしょう。

グレープフルーツ
降圧薬を服用している人は、グレープフルーツを食べてはいけない。photo by Adobe Stock

⑤ カフェイン×気管支拡張薬、解熱鎮痛薬、抗血栓薬

喘息(ぜんそく)の治療に使われるテオフィリンは、カフェインと構造が似ているため、カフェインがテオフィリンなどの体内代謝を邪魔してしまい、中枢神経(主に呼吸中枢)への刺激作用が強くなりすぎる可能性があります。また、アスピリンなどの解熱鎮痛薬や抗血栓薬と一緒に服用すると血中濃度が上昇し、鎮痛効果や出血傾向が強まる可能性があります。

カフェインは、コーヒーはもちろん紅茶や緑茶などにも多く含まれています。また、コーラ飲料、エナジードリンク、栄養ドリンク、食べ物ではカカオの含有率が55%以上のダークチョコレートにも多く含まれています。そのため、知らずにカフェインを摂取していることがあるので注意が必要です。また、缶コーヒーはブラック、加糖、無糖に関わらず、全般的にカフェインの量が多いので要注意です。

⑥ アルコール × 精神神経薬、糖尿病治療薬、解熱鎮痛薬

もっとも注意が必要なのがアルコールです。精神神経薬、糖尿病治療薬、解熱鎮痛薬、中枢神経抑制薬(鎮静剤、精神安定剤、睡眠導入剤など)をアルコールと一緒に服用すると、薬剤の血中濃度が高まり作用が増強します。また、アルコール自体にも中枢神経抑制作用があるため、作用が強く出る可能性があります。

この他にも、抗菌薬や抗がん剤などの一部の薬剤は、肝臓でのアルコールの分解を抑制するため、頭痛や嘔吐、顔面紅潮など二日酔いのような不快な作用が起こる可能性があります。

また、狭心症の治療薬もアルコールと一緒に服用すると、血管拡張作用が増強し、立ちくらみ(起立性低血圧)や失神が起こる危険性があるため、絶対にアルコールと一緒に飲まないようにしてください。

ここで紹介したものの他にも、炭酸飲料全般は、薬の吸収の邪魔をして血中濃度を低くしてしまい、薬が効かなくなることがあります。とくに胃薬との併用で腹部膨満感や吐き気が起こることがあるので、炭酸飲料で薬を飲むのは基本的にNGです。

おわりに

ここで紹介した薬の飲み合わせは、数多くある中のごく一部です。どんな薬にも、飲食物との飲み合わせが悪いものがあるかもしれないと考え、慎重に服用することをおすすめします。どのような飲食物との相互作用が起こるかは、お薬手帳に貼られているシールの「摂取に注意する飲食物」の欄に記載されているので、確認するとよいでしょう。また、服用する薬について、事前に医師や薬剤師に飲食物の飲み合わせで注意することがないか、しっかり確認することが大切です。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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