【どんな体の特徴がある人も安心して行える】あらゆる人のためのヨガ

 【どんな体の特徴がある人も安心して行える】あらゆる人のためのヨガ
Sarit Z Rogers

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ヨガとは何かと尋ねられたら、ほとんどの人が動物の名前がついた妙なポーズをすることだとか、大半の人にはできない熟練を要する運動だと答えるだろう。いったいどのくらいの人が、実際にはヨガの本質は自分の心とつながるために心を静めることにあると答えられるだろうか。

私はこのことを題材にした拙著『Accessible Yoga(あらゆる人のためのヨガ)』の中で、プロップスを用いたりポーズを修正したりして、さまざまな体型、さまざまな不調がある現代人のためにヨガの可能性を探った。ヨガが現れた頃にも地面ではなくブランケットの上に座った人がいるとしたら、ある意味では『Accessible Yoga』は数千年前から存在することになるが、人がポーズに合わせるのではなく、ポーズのほうを人に合わせて修正するという考え方は比較的最近生まれた。ヨガをしている人や指導者たちは最近になってようやく、文化的側面、心理学的側面、生理学的側面などさまざまな面でヨガに起きていることを真剣に考えるようになった。この流れを受けて、ヨガの焦点は今、複雑なポーズを完成させることよりも、一人ひとりの経験や直感を大切にすることに移りつつある。
それでもポーズの多くは、障害のある人や太った人、ヨギの商業的イメージと合わない人にとって親しみやすいとは言えない。

ヨガとは本当はなんであるのか調べていけば、「こういう人でなければヨガができない」という限られた理解を変えることができる。ヨガとは古来よりインドで慣習的に実践されていたものと比較的現代に近い時期にインドで実践されていたものを合わせたもので、実にさまざまな流派がある。ヨガは本質的には、自己探索、自己研究、自己認識を行う精神的修練であって、方法さえわかっていれば、誰でもいつでも行うことができる。
ヨガによって人生に対する別の見方を知ることができる。体と呼吸の緊張がゆるんで自分の心と親しくなり始めるとき、自分のなかで何かが変わる。これがヨガの目指すところだ。言い換えれば、自分の関心を外界から自分の内側へ変える。究極的には、私たちが探している透明性や平和、愛は、自分の内側に見つかる。

『Accessible Yoga』はチェアヨガを中心にして、慢性痛のある人や骨粗鬆症または多発性硬化症などの症状のある人でもヨガをできるようにつくられている。
次ページからのチェアヨガのシークエンスを試してみよう。関節の負担を和らげる一方で、集中力、可動性、体力が高まるように構成されている。どのポーズも心を落ち着かせ、体を活性化し、神経系を静めるため、これを行うと呼吸法と瞑想を行う準備が整って、ヨガのさらに深い恩恵を実感できるようになるだろう。

対象はすべての人

ここで紹介している「Accessible Yoga」のクラスで目指しているのは、あらゆる人を歓迎すること、生徒と話をすること、一人ひとりに合わせてポーズを修正すること、意識を現在に集中することの4点だ。
また、日常生活では体力が必要になるため、体力をつけることを重視している。

クラスの構成

クラスではまず姿勢を確認する。ここでは、生徒全員を身体的に楽にすることに重きを置いている。具体的には、スカーサナ(安楽座)のようなポーズを、椅子に座ったり、立ったり、マットに座ったり、壁を利用したりして行う。次に、チャンティング、瞑想または全身のボディスキャン(全身の感覚の観察)を通して、意識と心の焦点を自分の内側に向けていく。

心が集中したら、肩回しや首回しのような可動性を高める動きと、ゆるやかな太陽礼拝や立位のポーズのような体力をつける運動をバランスよく進めていこう。私たちのクラスではここで、生徒一人ひとりの体調と感じ方に合わせてポーズに修正を加える。

私には私の好きなシークエンスがあるが、私の生徒には自分自身が心地よく感じるポーズを指導するよう助言している。さらに、生徒にとって重要なことに的を絞って、その日クラスに誰が参加したとしても参加者全員に合わせてポーズを修正するよう指導している。私がヨガを教えるときには通常、後屈と前屈のポーズを1つか2つ、逆転とねじりのポーズをそれぞれ1つずつ行っている。

クラスの終盤では、生徒がリラックスしてヨガの恩恵を受けられるようにする。そのひとつが静寂だ。シークエンスを終えたら、誘導がない場合も指導者が誘導する場合もあるが、瞑想を2〜3分間行おう(次ページの「自分の心と親しくなる瞑想」がひとつの例だ)。その後、どのような形でもいいので、シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)で休息しよう。

参加者に合わせる

ポーズを誰にでもできるようにするには、プロップスを利用することが最も効果的かもしれない。一部の公共施設で行われているクラスでは、プロップスの利用が禁止されていたり、利用するのは恥ずかしいと思われていて利用できないことがある。しかし実際には、プロップスは実に多くの効果をもたらしている。利用しない理由を挙げるのが難しいほどだ。

プロップスを利用すると…
●床と体の距離を縮められるため、ポーズがしやすくなる。
●ポーズをしているときに骨格の配置が変わらないため、安心感が生まれる。また、伸ばしすぎや捻挫を防げる。
プロップスを利用しなければ届かない体の部位にも触れることができるため、全身を流れるエネルギーをよく感じられるようになる。

さらに、自分でプロップスの位置を変えれば、さらにポーズをしやすくできるだろう。ポーズのなかには体の向きが原因で難度が高くなっているものがある。アドームカーシュヴァーナーサナ(ダウンドッグ)はさまざまな理由から難しいポーズだ。体重を手首で支えなければならないということも理由のひとつである。これを体に合わせるには、手を床ではなく椅子か壁におけばいいのだ。
また、心のなかでポーズを練習して、ポーズを修正することもできるだろう。たやすいことのように聞こえるかもしれないが、高い集中力があってはじめてできることなので、実際にはヨガのなかで最も高度な方法のひとつだ。この方法を使えば、体が思うように動かない人でもヨガができるようになる。

あらゆる人のためのヨガ
photo by  Sarit Z Rogers

シークエンス

このシークエンスでは、まずポーズを試してみて心地よいかどうか確認してみよう。自分の体に効果があると感じられたら、そのポーズを静止して保持するのではなく2、3回繰り返してみよう。

1.意識の集中
椅子に座り、背もたれで背中を支えて両足を床に下ろす。足が床に届かない場合は、プロップス(折りたたんだブランケットなど)を用意し、その上に足裏をおく。ここで姿勢を確認して、背骨を伸ばす(背中が丸まる場合は、お尻の下にたたんだブランケットを敷いても)。このときに、息を吐くたびにエネルギーが大地に入っていくことを感じよう。次に息を吸うたびに大地から上がってきたエネルギーを感じ、全身を上昇していくのに合わせて背骨が伸びる様子を観察しよう。

あらゆる人のためのヨガ
photo by  Sarit Z Rogers

2.首回し
息を吸いながら首を上に伸ばす。息を吐きながらあごを胸部のほうに下げる。吸う息で頭を右に傾けて、右肩に耳を近づけていく。吐く息であごを胸部のほうに下げる。次の吸う息で頭を左に回す。吐く息であごを胸部のほうに下げる。これを3~5回繰り返す。
※頭を後ろに回さないようにする。頭を後ろに倒すことで、椎骨が押され頸椎を不必要に圧迫してしまう。
※関節炎や骨粗鬆症がある場合は、体の内側で繊細な動きをして、外側はほとんど動かさないようにしよう。

あらゆる人のためのヨガ
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3.マルジャリャーサナ&ビティラーサナ(キャット&カウポーズ)
吐く息で猫のように背中を丸めて、あごを胸部のほうに引きながら、ねこの「爪」のように指を立てた手を膝のほうにずらしていく。吸う息で胸部を引き上げながら背中をそっと反らして、牛のポーズに入る。これを3~5回繰り返す。
※骨粗鬆症のある人は背中を丸めるのを避けよう。背中を丸めずに、背骨をニュートラルに保ったまま上体を伸ばして牛のポーズに入り、最初の姿勢に戻るようにする。

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4.女神のツイスト
脚を少し開いて、つま先を外側に向ける。足は床に下ろしてもよいし、ブロックを用意してその上に下ろし、太腿の内側と腰の伸びを強めてもよい。腕を外側から横に上げて、ほぼ肩の高さに揃える。肘を直角に曲げる。息を吸いながら背骨を伸ばす。息を吐きながら上体を右に回す。息を吸いながら中央に戻る。息を吐きながら上体を左に回す。これを3~5回繰り返す。

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5.足の動き
足を前方に出して、床か折りたたんだブランケットボルスターのいずれかの上に下ろす。呼吸に合わせながら、足を自由に動かして動きの可能性を探る。車のワイパーのように左右に振ってみよう。足の指をパッと開いて、またしっかり握ってみよう。さらに、自転車をこぐような動きをしたり、つま先で空中に字を書いてみたりしよう。それぞれの動きを片足15~30秒続ける。

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6.腕上げ
腕を体側に下ろし、手のひらを上に向ける。ヘリウムガスが風船を満たすように、吸った息が腕を満たしている様子を思い描く。呼吸の力で腕がひとりでに上がっていくようなつもりで腕を上げて、その様子を観察する。可動域の最も高いところに達したら、息を吐きながら手のひらを地面に向けて、腕を自然にゆっくり下ろす。3~5回繰り返す。

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7.ボルスターを利用したブジャンガーサナ(コブラのポーズ)
太腿にボルスターを置き、その上に腕を下ろしてボルスターが腹部に当たるように上から押さえる。息を吐きながら、ボルスターの上に身を乗り出して頭を静かに下げる。息を吸いながら首を伸ばして、頭、首、胸郭の上部をゆっくり引き上げる。肩は後方に引いたまま、手のひらでボルスターを腹部のほうに引く。こうすると背骨がさらに伸びる。このポーズをとったり、ポーズを解いたりを繰り返してもよいし、3~10回呼吸する間後屈を保ってもよい。ポーズに入った動きを逆に行い、ゆっくりポーズを解く。

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8.脚のストレッチ
椅子に座り、背骨を伸ばして足を床に下ろす。ボルスターブロックを用意し、その上に右脚とかかとをのせる。足にストラップをかける。左膝は曲げたまま左足をしっかり下ろす。
ストラップの端を手で握り、その力を使って、息を吸いながら背骨を引き上げて伸ばす。息を吐きながら、背中を丸めずに股関節から上体を前方に少し倒す。右脚の裏側に伸びを感じたら動きを止める。3~5回呼吸する間この姿勢を保つ。最初の姿勢に戻って反対側も行う。

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9.首を支えたシャヴァーサナ(亡骸のポーズ)
安全に行うために、足を膝の真下ではなく前方に出す。こうすると眠ってしまっても椅子から滑り落ちない。丸めたブランケットをスカーフのように首に巻くとネックピローのように使える。飛行機用のものを使ってもよいし、椅子を壁際に置いて頭の後ろにブランケットか枕を当ててもよい。
ここで首がしっかり支えられているか確認する。体の緊張をゆるめ、目をつむりたければ目をつむって5~20分間休む。

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10.ダーガ・スワサム(横隔膜の呼吸)
背骨を伸ばして座る。腿の上にボルスターをのせ、両手をのせるか、片方の手のひらを腹部に当てる。息を吸いながら腹部が広がるのを感じる。息を吐きながら横隔膜がゆるむのを感じる。横隔膜がゆるむと腹部が自然に背骨のほうに引かれる。自然な呼吸のリズムに合わせて、意識をしっかり持ちながらこの呼吸を続ける。
次にもし心地よければ吸う息と吐く息を普段より2~3秒長くしてみる。力まないようにして3~5分間続ける。

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11.自分の心と親しくなる瞑想
背骨を伸ばして座り、呼吸を少し深める。さっと全身を観察してどんな感じがするか確認する。緊張、疲れ、リラックス、幸福感、そのほかどんな感覚があるだろうか。何か感情が湧いてきたら、それを感じとろう。感情や考えが浮かんできたらいつでも受け入れよう。2~3分かけてこれを練習=瞑想をする。
瞑想を終えるときに、もう一度どんな感覚があるか観察する。深い呼吸を2~3回して、瞑想をした自分自身に感謝しよう。

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指導者の皆さんへ

生徒が自分でできるように誘導しよう
「こうしてください」というような命令調ではなく、「この姿勢を試してみましょう」「こうするとどんな感じがするか観察しましょう」のように誘いかける表現を使おう。こうすると、ただ指示に従うのではなく、体の動かし方を自分で決められるようになる。

完璧な形を手放そう
皆さんは単に体を動かしてポーズをつくることを教えていないだろうか。それともヨガの根本的な目標、つまり心とつながることを踏まえて指導しているだろうか。単にポーズに挑戦することがヨガを深めることではない。このことを理解していれば、誰でも参加できて、互いに張り合わない環境をつくることができる。

内受容感覚について教えよう 
ヨガをすることによって関心の的を外の世界から自分の内側の世界に移すことができる。このような内なる意識(これを内受容感覚という)によって自分が経験することにもっと敏感になれる。クラスでは体の内側で起きていることに注目するよう促してみよう。たとえば、骨や関節、筋肉、内臓に何か感覚があるか観察させたり、疲れているか、目が覚めているか、空腹か満腹か、暑いか寒いか観察させよう。この時間は判断するのではなく観察するためのものだ。

練習を深めよう

どのポーズでも「なぜ行うのか」理解しよう
各ポーズの潜在的な効果を確認して、それを得るためにプロップを利用してみよう。たとえば、コブラのポーズのように胸部を開くポーズは、椅子に座って腿の上にボルスターを置いて行うと、両手で体をしっかり固定して胸部を開き、後屈の強度を下げることができる。その結果、腰の負担を減らし、胸部を開くことに集中できるようになる。

試行錯誤しよう
ポーズをするときは、ひとつの動きをして心地よいかどうか見てみよう。自分の体に効果があると感じたら、静止してその形を保つのではなく、その動きを数回繰り返そう。

創造性を発揮しよう
ポーズを行う目的が、くつろぐことでも体力強化でも可動性の改善でも、その目的を励みに練習に取り組もう。練習しているときに安心できているかぎり、指導者がいるときもそうでなくても、さまざまな可能性を探って創造性を発揮することは楽しいものだ。

【さらに深く学ぼう】
「Accessible Yoga」の練習の組み立て方を知りたい人は、オンデマンドで利用できるジヴァーナの「Chair Yoga 101」で学ぼう。詳しくは、『Yoga Journal』のサイトへ。yogajournal.com/chairyoga101

指導●ジヴァーナ・ヘイマンは「Accessible Yoga」を創設し、代表を務めている。夫とふたりの子どもとともにカリフォルニア州サンタ・バーバラで暮らしている。jivanaheyman.com

この特集はジヴァーナ・ヘイマンによる著書『Accessible Yoga:Poses and Practices for Every Body(あらゆる人のためのヨガ:どのような体の人にも無理のないポーズと練習)』に加筆修正したもの(邦訳は未刊)。

モデル●デ・ジュール・ジョーンズは感情的にも身体的にも心理的にも多数の問題を抱えた人が多く住む貧しい地域でヨガを教えている。idreaminyoga.com

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by Jivana Heyman
photos by Sarit Z Rogers
model by De Jur Jones translation
by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.74掲載

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ヨガジャーナル日本版編集部

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