【コロナに負けない体づくり】医師が解説!人体最大の免疫器官「腸」を整える4つの生活習慣

 【コロナに負けない体づくり】医師が解説!人体最大の免疫器官「腸」を整える4つの生活習慣

人体における「最大の免疫器官」といわれる腸。コロナウィルス感染拡大が続く今、健康な体を維持するためには、免疫力を高くキープすることが重要なポイントに。そこで今回は、腸の免疫機能を活性化させる生活習慣のコツを、マリーゴールドクリニック院長の山口トキコ先生に教えていただきました。

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体内に入ってきた「異物」を撃退する腸の免疫システム

「免疫」とは、異物が体に入ってきたときに体から排除しようとする働きです。通常、ウィルスや病原菌などの異物は、鼻や口から体内に侵入。その通り道となる消化器官は、常に異物の脅威にさらされているため、腸には「腸管免疫」という免疫システムが備わっています。

「病原菌などの異物の多くは胃酸によって死滅しますが、小腸まで達した異物は腸壁にある“パイエル板”にとりこまれます。パイエル板には樹状細胞、T細胞、B細胞とよばれる免疫細胞が集まっていて、それらがとりこまれた異物を体にとって有害なものと判断すると“免疫グロブリンA(IgA)”という免疫物質を分泌。異物を撃退します」(山口先生)

また、小腸末端から大腸にかけて生息する腸内細菌も、腸管免疫に深く関わっていることが、最近の研究でわかってきました。

「腸内細菌の善玉菌は、人間の消化酵素で消化・吸収されない食物繊維などをエサとして食べ、酢酸や乳酸といった短鎖脂肪酸を産生します。短鎖脂肪酸は、腸の免疫細胞=B細胞を刺激し、免疫グロブリンA(IgA)や免疫グロブリンG (IgG)の免疫物質を生み出す働きがあり、腸管免疫をサポートするのです」(山口先生)

つまり、ウィルスや細菌などの感染を防ぐには、腸管免疫を十分に機能させることが大事で、そのためには腸内細菌の善玉菌を増やし、腸内環境をよくすることが大切と言えるのです。

腸内環境を左右する、善い「腸内細菌」とは?

腸の免疫システムに関わる「腸内細菌」について、ここで詳しく説明します。大腸には、100種類、100兆個を超える腸内細菌がすんでいると考えられ、これらが生息する環境をお花畑に見立て、腸内フローラと呼んでいます。腸内フローラには、健康に役立つ善玉菌、増殖すると不調を招く悪玉菌、優勢な菌の味方をする日和見菌の3タイプの菌が存在しています。腸内細菌はバランスが重要で、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7の比率が保たれると善玉菌が活性化。腸内が酸性の健康な状態になり、腸の免疫システムがきちんと働きます。反対に、腸内環境が乱れると全身に不調がおこりやすく、感染症の罹患のほか、心臓病や糖尿病、大腸ガン、肝臓ガンのリスクアップにつながると報告されています。

では、どうすれば自分の腸内環境の状態を確認できるのでしょう?

「腸内環境が整っているかどうかは、便でチェックできます。腸内環境が整っていると、便の表面がなめらかで柔らかく、スルッと出ます。大きさはバナナ1本〜1本半程度で、色は黄土色か茶色系ですね。一方、腸内環境が乱れていると、ウサギの糞のようにコロコロした硬い便になり、出すのが大変に。においも非常に強い傾向があります」(山口先生)

抗生物質の薬を服用すると、腸内細菌も死んでしまう?

腸内環境で気になるのが、医療機関などで処方された抗生物質の薬を服用した後の状態。「腸内細菌が全滅してしまうのでは……!?」と心配になる人も多いかもしれませんが、「腸内細菌が、すべて死んでしまうことはありません」と山口先生。

「薬の影響で一時的に腸内細菌のバランスが崩れ、下痢をおこしすい傾向があります。抗生物質を飲むと下痢をしやすい人は、整腸剤を一緒に飲むと症状をおさえやすくなります」(山口先生)

腸の免疫システムを高める日常生活のコツ

腸内環境を整え、腸の免疫機能を高めるには「規則正しい生活を送ること、栄養バランスのいい食事を3食きちんと食べること、睡眠時間を十分にとること」が基本中の基本。その上で、心がけたい日常生活のコツを山口先生がアドバイス。

(1)食物繊維をとる

食物繊維
(1)食物繊維をとる

腸内環境を整えるには、便秘にならない食事をすることがポイント。そのためには、食物繊維を多めにとることが大事です。食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維の2種類があります。不溶性食物繊維は、野菜や根菜、いも類、豆類、穀物、切り干し大根、かんぴょうなどの干物に多く含まれ、水分を吸収してカサを増し、大腸を刺激してぜんどう運動を促す働きがあります。一方、水溶性食物繊維は、藻類類やオクラ、納豆、きのこ類、くだもの全般、にんにくなどに多く含まれ、水に溶けてゼリー状になり、発酵性における整腸効果は不溶性食物繊維より高いです。1日の目標摂取量は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を合わせて20〜25 gを目安に。

(2)発酵食品をとる

発酵食品
(2)発酵食品をとる

納豆、味噌、漬けもの、甘酒など、日本伝統の発酵食品には乳酸菌や麹菌が多く含まれ、腸内の善玉菌を増やすとともに、悪玉菌を抑える働きがあります。また、ビフィズス菌などの乳酸菌を多く含むヨーグルトや乳酸菌飲料も善玉菌の増殖には有効。毎日の食事で、積極的にとることを心がけましょう。

(3)口腔ケアをする

歯ブラシ
(3)口腔ケアをする

口腔内の細菌と腸内細菌はリンクしています。虫歯菌や歯周病菌など、口の中の有害細菌が腸に多く入ると、腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境を乱すことに。ブラッシングや歯垢除去などこまめな口腔ケアは腸内環境を整えるためにも大切です。また、食事中にしっかり噛むことも口腔内の環境を整える秘訣。噛むことで分泌される唾液には、有害細菌の増殖を抑える抗菌作用があり、口腔内の環境を整えることができます。

(4)ストレスを解消する

運動
(4)ストレスを解消する

腸の働きは自律神経の影響を受けるため、ストレスフルな状態が続くと交感神経優位になり、腸が過敏に。その結果、便秘や下痢をくり返し、腸内環境に悪影響を及ぼします。ヨガや運動など自分なりのストレス解消法で副交感神経を優位にすることで、便通がスムーズになり、腸内細菌のバランスを整えることができます。

教えてくれたのは…マリーゴールドクリニック院長 山口トキコ先生
医学博士、日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員、日本外科学会専門医、臨床肛門病学会技能医指導医。1988年、東京女子医科大学卒業。1992年、東京女子医科大学・大学院修了。日本初の女性肛門医として多くの患者の悩みに答えると共に、TVや雑誌、Web等でも幅広く活躍中。『最新版 本気で治したい人の腸の不調 便秘・下痢』(学研パブリッシング)など著書多数。

山口トキコ先生
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text by Minako Noguchi



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