悲しみをうまく乗り越え、人生に変化をもたらす3つの戦略

 悲しみをうまく乗り越え、人生に変化をもたらす3つの戦略
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認定死別カウンセラーで「Wild Mercy: Living the Fierce and Tender Wisdom of the Women Mystics」の著書であるミラバイ・スター。彼女の主催するリトリートに参加した筆者が学んだ、悲しみや喪失を乗り越え、それらを糧にする方法とは。

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ある日の午後コーヒーを飲みながら、友人にミラバイ・スターの著書「Wild Mercy: Living the Fierce and Tender Wisdom of the Women Mystics」を既に読んだかどうか尋ねられました。スターさんの初の著書であるDark Night of the Soul(16世紀のスペインの神秘主義者で詩人の聖ヨハネの十字架によって書かれた詩)の新訳書は、彼女の14歳の娘が交通事故で亡くなったその日に発売されました。

今日、スターさんは、瞑想の実践や悲しみや喪失を乗り越え、糧にする力について世界中を飛び回り、講演を行っています。認定死別カウンセラーである彼女は、哀悼者たちが喪失の経験を糧にできるよう手助けをしています。友人からの質問に対して私の答えは「ノー」。まだ「Wild Mercy」は読んでいませんが、すぐにそのタイトルに心惹かれました。

今の時代、私たちの多くが、愛する人を失ったり、裏切りにあったり、うまくいかなくなったり、家族との別離を経験したり、と問題を数多く抱えているように思います。−そして私を含めて、多くの人が「Wild Mercy」からヒントをもらえることでしょう。

過去5年間、私は上記の問題すべてに加え、Janという最愛の叔父を亡くしました。叔父とは亡くなる1〜2年前から連絡をとるようになりました。それ以前の数十年間はほとんど連絡を取り合うことはなかったのですが、ただ血が繋がっているだけでなく、とても気が合いました。彼は才能溢れた詩人であり、私たちには精神的な共通点がありました。私たちは共に家族のはみ出し者で家族に誤解されていました。

私たちはそれぞれアルコール依存症を1年間かけて回復したばかりで彼が亡くなる少し前にそれぞれの体験談をシェアするようになりました。久しぶりにつながって以降、彼は毎日私に電話をしてくるようになりました。彼は私の詩に耳を傾け、私の書いた文章を読み、精神的な話を私に語ってくれました。私の叔父の死とその他いくつか最近起こった喪失の経験は、自分の人生に生涯に渡るトラウマと複雑な悲しみをもたらしました。簡単にそれらを消し去る方法は存在しないと思いました。

私の人生のシンクロニシティは不思議と度々Facebookで起こりました。「Wilde Mercy」を読んでいる時、ふと本を置き、参加しているFacebookグループに目が留まりました。そしてワクワクしました。ミラバイ・スターが運営する毎年恒例秋分の日のリトリート:「自分自身の喪失と変化のストーリーを深める」の最終受付が投稿されていたのです。その会場は、私がずっと訪れてみたいと思っていたニューメキシコ州にあるリトリートセンター、ゴースト・ランチでした。すぐにメールを送信し、まだ参加可能かどうか返信を待つことにしました。そして、そのメールには「イエス」とすぐに返信がきました。私は砂漠からの紛れもない誘いに答えようとしていました。「Wild Mercy」は私にとって招待状でした。冒頭、スターさんは次のように書いていました。「私たちはまるで現在における魔法使いのように、人生を生きやすくするための方法を提案しています。−自分を見つめ、今いる場所からステップアップし、瞑想を生活に取り入れ、 自らの目標を達成しましょう」

リトリート初日の夜

初日の夜、宿泊施設の美しい太陽が拝めるリビングルームに集まりました。スターさんのアシスタントたちは、メディスン・カード(Medicine Cards)を私たちに選ぶよう差し出しました。部族ごとに異なる教えを持つメディスン・カードは、チェロキー、セネカ、フランスにルーツを持つアーティストで作家のジェイミー・サムスによって開発されました。私が引いたカードは亀でした。

私はどちらかというと短距離走者のランナーで動き回るタイプです。亀というよりむしろウサギだと思っていたので結果に困惑しました。しかし、その後、スターさんは、私たちが引いたアニマル・メディスン・カードが、私たちが想いを書き綴ること、そしてその他の教えについても直感的なヒントを与えてくれるかもしれないと述べました。私はおもわず笑ってしまいました。文章を書くということにおいては、私は確かに亀のようなのです!たくさん書くものの、そのペースは酷いほど遅いのです。 美しいニューメキシコの太陽が沈み、光が消えていくにつれて、私の腕にこれから何が起こるのかとドキドキしました。

悲しみを力に変える3つの戦略

ここに5日間の合宿で私がスターさん、そして亀から学んだ3つの項目を紹介しましょう。

1.  コミュニティを頼り、自分の変化のプロセスを大切にする

毎朝、私たちは顔を合わせ、瞑想に続いて歌と詩の朗読で1日のスタートを切りました。音楽と詩は厳選されていました。私はこのセッションを通じて、絆を深め、私たちのコミュニティが抱える深い心の悲しみを受け止める心の器を作り出しているのだと感じ始めました。

参加者の中には子供を自殺や薬物の過剰摂取、突然の死で失った人たちもいました。結婚相手や兄弟、姉妹、両親を亡くした人もいました。また、家族と疎遠の人もいました。それらの4人は、絶縁したアダルトチルドレン(また最愛の孫たち)に苦悩していました。

ケリー・トンプソン リトリート
ミラバイ・スターさんのリトリートに参加した2人の友人と写真に写る著者

私が引いたメディスン・カードは、このコミュニティの域を超えて、別の意味をもたらしました。カードが力を与えてくれると感じましたし、最終的に自分の抱える悲しみを丁寧に処理できるような気がしたのです。南西部の一部のネイティブアメリカンの部族において、亀というのは、私たちの暮らしや創造性、守護、長寿を意味する母なる地球の古代シンボルです。南西部のネイティブアメリカンの人々(ナバホ、ズニ、ホープ、サントドミンゴ、プエブロなど)にとって、亀は水を表します。また、ネイティブアメリカンの伝統における役割に加えて、亀はほとんどのヒンドゥー教寺院の扉にも描かれています。ヒンドゥー教では、亀は世界を背負っており、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神10の化身の1つです。亀は女性を表し、外界と内界の架け橋として機能し、外に向いた意識を自分の内側に向けるヒントを与えます。これはプラティヤハラと呼ばれるプラクティスとして知られています。

リトリートが進むにつれ、亀が私を導き、本当の癒しが起こりました。そして私の心に存在する最も深くて暗い場所へ、かつては足を踏み入れていたかもしれませんが、結局その領域に一人で踏み込むことはありませんでした。私には亀のメディスン・カード、自分に寄り添う天使たち(リトリートに参加した仲間たち)、進むべき道を知る賢い女性(スターさん)がついているのです。私は、深い悲しみの重荷と心の鎧を外すことができました。そして、自分の喪失感から逃げることはしませんでした、むしろそんな状況の中で自分を真に敬ったのです。

2.  悲しみを書き綴り、痛みを受け入れる

「Wild Mercy」の中でスターさんはこう語っています。「悲しみを乗り越えるには、私たちの中の隠れた全貌と真っ正面から向き合うことです。もちろんそれは全てをさらけ出します」。このプロセスは、痛みを認めることから始まるのです。悲しみは私たちの痛みの奥底にあり、癒すべき場所はそこです。まずはサポート体制、そしてコミュニティを準備します。それから書き綴ります。毎朝の瞑想や読書の後、私たちはライティングのテーマを与えられ、4人のグループに分かれ、それぞれ書いたものをシェアしました。次に、私たちは順番に自らの文章を読み、注意深く耳を傾けます。私たちは何かを提案しあったり、賞賛しあったりすることはありませんでした。むしろ、沈黙を保って座り、悲しみの感情を鎮めたのです。

「私たちの誰一人、機能していない人などいません。また、私たちはセラピストではありません」とスターさんは言いました。ですから、私たちはティッシュ(涙を押さえるため)を渡されたり、お互いを正したり、慰めたりすることはしませんでした。

参加者は皆、今自分たちがいる場所に存在することを認められました;痛みの根底に触れること、痛みについて書き綴ること、そしてそれをシェアすることは危険なことではありませんでした。私たちが今置かれている状況に導いた喪失感を拭い去り、それらの感情を糧にするため、私たちは真実を語るという辛く危険な行為に向き合う機会を与えられました。スターさんはこうアドバイスしました。「文章を書いている間に沸き起こる痛みの中には、まるでゴールドのように素晴らしいものを得ることがあるでしょう」。5日目の終わり、そしてその直後には、自分の痛みが和らいでいることに気がつきました。そういったアドバイスを得て、日常的な心の痛みよりもむしろ、気分転換する心の余裕が生まれ、前進する勇気が湧きました。

3.  時間をかけよう

喪失の経験は精神的に変化するきっかけになります。悲しみという不思議な感情には、人を癒したり、目覚めさせたりする力があり、特別な時間を与えます。リトリートのある日、私たちはチムニー・ロックまでハイキングし、ピエドラ・ルンブレ盆地の壮観な景色へと案内されました。私はついて行くのに一苦労でたじろぎました。リトリート参加者の何人かはもっと早く登れるはずなのに、私より後方を歩きました。私は恥ずかしくて彼らに対し、暑さのせいで早く歩けないから先に行ってくれるように伝えました。小さな茂みの木陰で休憩していると、仲間たちがもっとゆっくり歩くようにと私を励ましました。「暑さのせいではなくて、早く歩きすぎなのよ」と。しかし、私はうまくその言葉が理解できず、休憩の度に必死で歩きました。

そしてついに、仲間のうちの一人が私に向かってこう言いました。「ケリー、あなたが引いたメディスン・カードって亀ではなかったの?」その言葉は私の心に響きました。

亀のメッセージは、もっとゆっくりでもいいんだよ、自分の時間を大切にするんだよ、そして亀を包み込む甲羅のようにコミュニティにサポートを受けていいんだよ、というものでした。思わず涙がこぼれました。なぜって、私は頑張って危機を乗り越え、踏ん張り、何が起きても前進し続けたサバイバーであり、逆境の多い人生を乗り越えてきたのですから。

その登山中に私は、心の重荷を下ろし、心を開き、コミュニティや仲間と触れ合い、耳を傾け、はっきりしないことも良しとする、ということを学びました。つまり、喪失感の深さや逆境の多い人生がどんなに辛くとも、私は支えられ、守られる存在なのです。ついに私は亀の背中で休み、苦労を解き放つ時が来ました。もう私はこれ以上自分に負荷をかける必要はありませんでした。私は亀のように、首を出して危険を冒すことがあるかもしれませんが、それでも尚、甲羅の中で安全に守られています。

教えてくれたのは…ケリー・トンプソンさん
ケリー・トンプソンさんはコロラド州デンバーを拠点に活躍するスピリチュアル・ライター。Instagram:@kellyblog Twitter:@stareenite

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Translated by Hanae Yamaguchi



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