自殺願望を持つ私を変えてくれたヨガ

 自殺願望を持つ私を変えてくれたヨガ
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アメリカに住む若きラテン系女性たちは急増する自殺願望のリスクに直面しています。今回は一人の女性、アレジャンドラ・スアレスさんがどんな風にヨガによって死の淵から救われ、ヨガを指導する側となったのかを紹介しましょう。

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私は21歳、ベッドに横たわり、壁に掛けたコルクボードをじっと見つめています。大学生の女の子なら誰もが部屋に掛けているボードを。ボードに付いているのは授業のスケジュール表、ウェイトレスのバイトのシフト表、自分の写真、そして友達や家族の写真。写真をじっと見つめてみると、大抵は笑顔です。写真の中に自分は確かに存在するけれど、自分を本当の意味で認識することができません。ポーズを取るとき、目を閉じるとき、頑張るとき、笑顔ってどんな風だったかをうまく思い出すことができません。そして幸せってどんな風だったか全く思い出すことができません。

その日、自分と愛する人たちの写真を見つめ(その後も何度も何度も)、やがて自分がこの世からいなくなったら、どんな風だろうかと考え始めました。自殺することには自信がありませんでした。簡単に消えてしまえばいいのにと思いました。とにかく消えてしまいたかったのです。「the Hispanic Journal of Behavioral Sciences(ヒスパニックの行動科学に関するジャーナル)」の研究によると、思春期のラテン系女性はラテン系ではない人種に比べ、かなりの割合でうつや自殺願望を経験しています。

米国疾病予防予防センターは、米国在住の10〜24歳の思春期のラテン系女性の10.5%が過去1年間に自殺未遂を試みているのに対し、思春期の白人女性は7.3%であったことを明らかにしました。

その当時、私はメキシコシティから移り住んだばかりで新しいシステムに馴染むのに必死だったし、迷走していて、全くそんな事実は知りませんでした。学校に通うためにフルタイムの仕事をしていました。授業も精一杯受講しました。長い交際相手とは不健康な関係でした。友人ができてもすぐに、競争・不安・イジメといった有害な関係へと変化してしまいました。そして私はある時、食べることをやめました。

当時は、不安に打ちのめされて、私の人生で最も困難な時でした。私はまるで麻痺しているような感覚と巨大な悲しみを感じていました。その深い悲しみのようなものが私を無感覚にさせていたのでしょう。どん底の時代を経て、自分を地に足つけてくれる何かが必要だと感じ始めました。唯一思いついたのがヨガだったのです。

コーナーを曲がる

数年前、コミュニティカレッジで行われているヨガクラスに参加しました。授業はカーペットの敷かれたクラスルームで行われ、部屋がかなり狭かったので椅子を端に寄せてから、自分たちのヨガマットを敷きました。最初の瞬間から、ヨガの虜になりました。ヨガの穏やかにしてくれる効果がとても気に入りました。ヨガをすると心に静けさが訪れ、今という時を意識できるようになるのが好きでした。また身体的に頑張る必要があるという点も気に入りました。しかし、スケジュール的に厳しくなり、プラクティスを辞めることになりました。

忙しい日々の中、友人のラミロにビクラムヨガを紹介されると、私はすぐに夢中になりました。身体的にかなりハードなヨガであったため、プラクティス中、なんらかの不安を思い描く暇もありませんでした。クラスに続けて通うように頑張りました。どんなに疲れていたり、悲しかったり、動けなかったりしていても通い続けることが私の目標でした。

また同じ時期にいくつかのことが起こりました。通っていた大学の無料のセラピーサービスに通い始めたのです。それは一生涯、感謝するような出来事でした。そして、ある友人と3人の叔母(メキシコにまだ住んでいる2人の叔母を含む)と頻繁に交流を持つようになりました。セラピーが始まってから段々と、自分が本来治療を受けるべき深刻なうつを患っていたことを理解し始めたのです。それは決して簡単ではなく、困難な道のりでした。眠るのが困難でしたし、時には眠りすぎてしまうこともありました。勉強するのも一苦労でした。そして特に理由もないのに涙が止まりませんでした。叔母が電話の向こうですすり泣く私の声を聞き続けてくれたことが幾晩も幾晩もありました。友人は私がベッドから起きて、ヨガや仕事に行くのも一苦労だと知っていて、電話や励ましをくれました。昔のように食事することは困難でした。軽いスナックやスープではなく、決まった時間に食事を取り、しっかりとした量を食べることは特に苦労を要しました。そして卒業の直前になってようやく自分を取り戻し始めたのです。

強く居続ける

ヨガを続けてもう10年になります。人生という旅路を開始して以来、時には路から外れて、数日間、時には数ヶ月間動けなくなってしまったりもしたけれど、そういった経験を通じて、自分にとっての引き金に気づくことがとても上手くなりました。自分の体は自然とヨガを通じて、ストレスや外的プレッシャー、不安と上手く付き合えるようになっていったのです。物事が難しくなった時は、かつての目標に立ち返ります。子供のポーズ(Child's Pose)をするだけの場合もありますし、三角のポーズ(Triangle Pose)になって目を閉じて息を整える場合もあるし、クラスの中心でシャヴァーサナのポーズを取り、自分自身をグラウンディングする場合もあります。最終的に私の体と心は、動作と呼吸法を覚えているのです。数年間、定期的にプラクティスし、ずっと健康に感じられるようになった後、段々と自分がヨガを教えることはできるのだろうか、と考え始めました。数年間この小さな想いを持ち続け、昨年ついにその夢を実現したのです。自分のプラクティスを極めるのにこれ以上良い方法はないというくらいに素晴らしいヨガティーチャーのトレーニングに参加しました。しかしながら、トレーニング中、自分の目的はそれ以上であることを実感し始めました。

ラテン系女性の自殺問題は大変深刻で全米に広がっています。今アメリカで(あるいはどこでも)若いラテン系女性が生きていくのは非常に困難です。私の場合、新しい国、新しく学校のシステムについていくことができませんでしたし、自分の文化圏では話すことがタブーである「うつ」の症状について詳しく知ることができませんでした。また、学校を卒業する、キャリアを積む、完璧な娘である、結婚する、子供を持つ、といった上手く説明できない社会的な圧力を感じていました。そういった社会からの期待が果たして自分が必要としているものかどうかを考えることなく、私は自分自身にかなりのプレッシャーを与えてしまっていたのです。周りの期待など気にせず、自分の意見を持つことが怖かったのです。

同じような人生の旅路を生き抜く若いラテン系女性たちが気軽にヨガをできるような手助けはできないだろうか?学校、会社、様々な機関を通じ、少女や若い女性たちに届けられないだろうか? どんな難しい感情も乗り切る助けとなるヨガを皆に届けられないだろうか?私が側にいることでインスピレーションを得たり、心地良さや地に足がついた気持ちになれたり、一人でも良いから救うことはできないだろうか? ほんの一瞬でも彼女たちが私を見て、自分を重ねる瞬間はないだろうか?と考えたのです。

過去の自分の痛みが無駄ではなかった、と感じられる日がくるように思っています。

教えてくれたのは…アレジャンドラ・スアレスさん
アレジャンドラ・スアレスさんは、つい最近ヨガティーチャーになったばかりでダラスを拠点に活躍している。さらに彼女について知りたい方は、インスタグラム@alejandrasyを要チェック。

ヨガジャーナルアメリカ版/「Yoga Transformed Me After Suicidal Thoughts

 

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Translated by Hanae Yamaguchi