首のコリの原因を理解しよう|ヨガ解剖学

 首のコリの原因を理解しよう|ヨガ解剖学
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常に首が凝っていてつらい…ヨガをどう役立てられるだろうか。

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少し時間をかけてダンダーサナ(杖のポーズ)で座ってみよう。まず、床に腰を下ろし、両脚を前に伸ばす。椅子に座って腰の上に背骨を積み重ね、膝を曲げ、足を床に平らに置いてもよい。ここで、両手を腰の横に置き、手のひらで床または椅子を押し下げながら、深く息を吸う。どんな気分がするか観察してみよう。次に肩を前方に丸めて頭を突き出し、胸部を崩してみよう。今度はどんな感じがするだろうか。
この単純な動きをするよう患者たちに指示したところ、上体を直立させて座っているときと前かがみになっているときでは、気分がまったく違うとの報告を受けた。前者では「キビキビした」、「幸せな」、「明るい」、後者では「悲しい」、「疲れた」、「否定的」などの形容詞が使われていた。このような前かがみの姿勢が気力に影響を及ぼすのは明らかだが、生体力学的な問題も引き起こす可能性があり、それが痛みの引き金となる。最も危惧されるのは、ほとんどの人が机の前にへばりついていたり、電子機器を手放せないでいるために、一日中このように肩を丸めて首を突き出した姿勢を取りがちだということだ。
まず、このような姿勢によって筋肉にバランスの悪さが生じる。この姿勢では、肩の周辺にあって上腕を内旋させる筋肉(肩甲下筋、大円筋、前部三角筋)が縮んで、こわばりを感じるようになる。さらに、(腕と肩を前に出したりするときに働く)大胸筋と小胸筋のほか、肩甲挙筋、斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部(首の背面と側面にあって前に突き出た首を支える筋肉)が酷使されて、やはりこわばりが生じる。その一方で、「スイッチが入らず」弱まる筋肉もある。上腕を外旋させる筋肉(棘下筋、小円筋、後部三角筋)と、肩甲骨を安定させて押し下げる筋肉(前鋸筋、菱形筋、僧帽筋中部、僧帽筋下部)と、深頸部の屈筋(頭長筋、頸長筋)である。

首のコリや痛みの原因を理解しよう|ヨガ解剖学
背面の筋肉(Illustration by  MICHELE GRAHAM)

このように酷使される筋群と使われない筋群が同時に存在するために、筋肉のバランスが悪くなり、肩帯(上肢帯)に影響が出てくる。慢性的な猫背によって、徐々に肩の回旋腱板に回旋腱板症候群(肩の筋肉と腱が縮んで炎症し、痛みが引き起こされる)のような問題が起きてくる。慢性的な炎症のために腱板断裂がみられることもある。このほか、首の痛みも慢性的な猫背によってよく引き起こされる症状である。頭を突き出して画面を凝視しているとき、首の筋肉(具体的には肩甲挙筋と僧帽筋上部)は頭を支えるために収縮しなければならない。その結果、首の下の屈筋は疲労して弱くなり、ここでもまた痛みを誘発するアンバランスが引き起こされる。
前かがみの姿勢の原因が何であれ、ヨガを行えば、胸部と背中上部と首の筋肉のバランスが整えられて、痛みや気分の落ち込みが緩和される。次ページのポーズは、手始めに行うのに絶好のポーズだ。また、私はダンダーサナ(杖のポーズ)を長時間保つのも大好きである。上体を直立させて座り、腰の横に置いた手のひらを床に押し下げる。肩を正中線のほうに引き寄せてから後方にやや下げ、手のひらを床にしっかり押しつけながら、アイソメトリックトレーニングの要領で左右の手のひらを引き離そうとしてみよう。そうすると、弱くなっている僧帽筋中部と僧帽筋下部と菱形筋を働かせることができると同時に、こわばった胸筋をストレッチできる。
首と胸部のこわばりをリラックスさせるシンプルな運動をもう一つ紹介しよう。両手を組み、手のひらを下に向けて頭頂部の中央にあてたら、頭と手のひらをそっと押し合ってみよう。2、3秒間圧力をかけたら、パッと手を離して2、3秒間解放し、もう一度繰り返す。背筋がまっすぐ伸びて軽くなり、思わず笑みがこぼれるかもしれない。
生きていくうえで避けがたい筋肉のアンバランスを解消するには、こうした筋肉のアンバランスの生体力学的特徴を理解することであると私は経験から悟った。私たちは体を使って、筋肉のアンバランスによるエネルギーの変化を研究することによって、そうした特徴を理解するよう努めている。その結果、矯正目的の最適なポーズをもっと容易に予測に基づいて行えるようになる。私はそれこそがヨガが本当に役立つ領域でははないかと考えている。
 

うまくバランスをとって首の痛みを和らげよう

使われずに弱っている筋肉を鍛え、酷使されてこわばった筋肉をストレッチすることで、筋肉のバランスを整えよう。首の痛みの緩和にもつながる。

ヴィーラバッドラーサナⅡ  (戦士のポーズⅡ、ウォーリアーⅡ)

首のコリの原因を理解しよう|ヨガ解剖学
(Photo by RICK CUMMINGS)

足を90〜120cm離して立ち、後ろの足を45〜90度外に向け、前の足のかかとと後ろの足の土踏まずを同一線上に並べる。両腕を頭上に上げながら、前の脚の膝を直角に曲げる。後ろの脚の臀筋を働かせて骨盤の前面を開く。このとき、腰がやや斜めになる。両腕を体から遠ざけるように下ろしてきて肩の高さに保つ。肩甲骨が正中線のほうに寄って、背中を下りていくのを感じよう。この動きによって、菱形筋、僧帽筋中部、僧帽筋下部が強化されるほか、胸部が前方に広がり、大胸筋と小胸筋がストレッチされる。人差し指の付け根を、何か動かないものに押しあてているとイメージしながら、肩を外旋させる。8〜10回呼吸する間この姿勢を保ち、反対側も行う。

プールヴォッターナーサナ(上向きの板のポーズ)

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(Photo by RICK CUMMINGS)

このポーズはこわばった胸部の筋肉をストレッチし、弱くなった筋肉を活性化させて肩甲骨を安定させる。背筋を伸ばし、脚を前に伸ばしてダンダーサナ(杖のポーズ)で座る。手のひらを腰の横に置いて床を押し下げる。肩を外旋させ、肩甲骨を下げる。人差し指の付け根をマットに押しつけて、再び肩を外旋させる。手の位置を変えずに、アイソメトリックトレーニングの要領で手を体から離すように引く。腰を引き上げ、足が膝の真下にくるようにするか、脚をつま先までまっすぐ伸ばしてポーズを完成させる。3〜5回呼吸する間この姿勢を保ったら、ポーズを解く。最大3回繰り返す。

ゴムカーサナ(牛の顔のポーズ、バリエーション)

首のコリの原因を理解しよう|ヨガ解剖学
(Photo by RICK CUMMINGS)

このポーズは上腕を開き、肩の深部にある筋肉をストレッチする。ダンダーサナ(杖のポーズ)から、右腕を耳の横からまっすぐ上に伸ばし、左腕を左体側に下ろす。左腕を背中に回して肘を曲げ、肩甲骨の間に指先を伸ばす。右肘を曲げて、右手の指を左手の指のほうに伸ばす。可能であれば、指をつないでみよう。8〜10回呼吸する間この姿勢を保ったら、反対側も行う。

前腕プランクポーズ

首のコリの原因を理解しよう|ヨガ解剖学
(Photo by RICK CUMMINGS)

このポーズは体幹部と肩を結びつけ、その過程で、肩の回旋腱板がいっそう効果的に肩を安定させるのを助ける。うつ伏せになり、前腕を床につけ、肘を肩の下に揃える。頭からかかとまでが一直線になるように体を引き上げる。アイソメトリックトレーニングの要領で、前腕を足のほうに引き寄せようとし、大臀筋を少し引き締めて、尾骨をかかとの方に動かす。安静時の呼吸を続けながら、この姿勢を10秒間保つ。息を吐きながら体を下げる。2〜3回繰り返す。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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Text by RAY LONG
Model by Caitlin Rose Kenney 
Styling by Jessica Jeanne Eaton 
Hair&make-up by Beth Walker
Translated by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.51掲載



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