火と葛の力を借りて、涼しげな夏野菜を賢く食べる|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん

 火と葛の力を借りて、涼しげな夏野菜を賢く食べる|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん
Megumi Sekine
関根愛 
関根愛
2022-07-09

SNSで見かける、彩り豊かな食事の写真。見るからに栄養がありそうで、こんな食生活を送ってみたいと思う人は多いでしょう。でも「そんなに頑張れない…」という人も少なくないはずです。時間もない、料理が得意じゃない、不器用なあなたに伝えたい「頑張らないごはん」。意識すべきポイントは、とってもシンプルです。今日からできる「簡単な食養生」、教えてくれるのはマクロビオティックマイスターの関根愛さんです。

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みなさん、おはようございます。いつになく短い梅雨が明け、今年は夏空が早くから楽しめていますが、大風や土砂降りも多いかもしれません。七夕がやってきて、二十四節気は小暑を迎えました。だんだんと本格的な暑さが増してくる時、自分自身の体や状況に合わせた養生を心がけていきます。

ところで、筋肉や内臓、骨格など体がそれぞれ違う上、仕事も、汗をかく量も、暮らす地域の気候もさまざま、つくづく万人に共通する養生法はないのだと実感しています。かならず誰もに効く、というものもなければ、誰にとってもかならず悪いものもない。溢れる情報の中から一生懸命すくいあげたものを参考にすることはできますが、鵜呑みにはできません。私たちにできることは、常日頃から自身の内側に広がる宇宙と外側との繋がりを静かに観察しながら、自分なりのやりかたで調和をはかっていく方法を養うことです。これが養生、たったひとつの生を養うということではないでしょうか。その方法はひとりひとり違います。このことを分かっていると、自分自身への信頼にも繋がります。人は人で、自分は自分。これを案外人は忘れています。

今日は夏に涼しげな一品をご紹介しましょう。暑さをやわらげたいと言いつつも、体を冷え冷えの状態にしてしまっては万病を招く元となります。夏のクールダウンこそ慎重に、なんでも冷やせばいいというものではないのです。

夏野菜の代表格、みずみずしいトマトは、その真っ赤な見た目からもエネルギーをもらえます。水洗いしたところを丸のままガブリとかじれば豊かな汁がしたたり、夏の贅沢そのもの。しかしこのトマトは、体を冷やす役割をもつ夏野菜。暑いからといって生のまま食べてばかりでは、体がどんどん陰性(冷えている状態)に傾いていき、陽性と陰性の調和が乱れてしまいます。暑い夏だからといって、陰性の状態でいることが良いわけではないのです。大切なのは調和であり、バランスが保たれていることです。

食事を通して口から入ったものが、体の調和をとったり、また乱したりもします。食養生ではできるだけ体のなかのバランスが保たれることを目指します。そのほうがその人本来の力を発揮し、無理なく生きていくことができるからです。夏野菜の上手な食べ方は、その夏野菜に対して陽性のエネルギーをもつ食材をかけ合わせたり、また陽性へ転じるような調理法を意識するだけでいいのです。昔から生のきゅうりに体を温める陽性の力が強いお味噌をつけてバリバリいただくのは、夏の食事としてとても理にかなっています。

さて今回のトマトですが、露地栽培の旬のものを手に入れてください。この時期のトマトはヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」といわれるほど栄養たっぷりです。生ではなく、簡単に火をいれていただきます。加熱によって甘味と旨味がぐんと上がりますよ。

ざく切りにしたトマトを鍋に入れ、水少々、塩を少しふります。弱火で煮ていくと、ソースのようにとろとろ崩れていきます。そこへ葛粉をといて溶かしてください。葛の分量はお好みでかまいません。さらっとした食感がよければ少なめに、たぷんとしたければ多めに。今回はモロッコいんげんとコリンキーのワタと種を余らせていたのを一緒にしてみましたので、赤黄緑と彩りもよくなりました。熱々のまま食べてもよいのですが、常温に冷めてからいただくのもまた美味しいですよ。ぜひ夏の副菜に作ってみてくださいね。

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関根愛 

関根愛

俳優を始めた十数年前よりアトピーなどさまざまな心身の不調を感じてきたことで、薬に頼るのをやめて自分の体の声を聴きながら養生していくために自然食を始める。「じぶんらしく生きるための食養生」をテーマにInstagramやnote、Youtubeで日々発信をつづける。マクロビオティックマイスター。映画制作者、ライター、翻訳者としても活動。座右の銘は「山動く」。



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